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コミュニティサイトのあるべき姿 粉川一郎氏インタビュー5

ネットは最後のフロンティア



−それでは最後にコミュニティサイトのあるべき姿、メッセージなどをお聞かせいただければ。

 コミュニティサイトのあるべき姿の一番の基本は、どんなバックグラウンドを持った人も対等にコミュニケーションを取れることで、それがネットの良さが生きるということなんだと思います。繰り返しになりますけど、年齢、性別、収入、職業で切るという議論ではない。おじいちゃんでも子どもでも同じ土俵の上で一緒に仲良くできること、議論もできるというのがインターネット上にある場である以上、必要な要素だと思われるんですね。現実社会で子どもだからといってコミュニティサイトにアクセスしてはいけないという議論ではないんです。

 大切なのは、サイトの持つメリット、リスク、ネットの理想と現実と問題点を正しく知って、一人のネットコミュニティの成員として成熟さえすればいい。

ただ、そうした成熟のための教育は現実社会、学校のような場でやるのではない。リアルな場の学校で、先生方が適切なことを教えられる状況が残念ながらない。それは先生方の教える能力のなさが問題なのではなくて、純粋にネットコミュニケーションがあまりにも急速に変化しているからです。ネットという社会は、最初のビックバンの後、急速な変化を続けている。ネットはそうした変化の中にあって決して安定しているわけではないと理解している人々がそういう教育を担うべきだと思います。安定している状況ではないから危ない、ダメという議論は意味がなくて、安定している状況にないけれど、リアルタイムでそのことをよく分かっている人々が、新しく入ってきた人々をナビゲートしていく、そういう人材をネット側が用意すべきで、それがボランタリーに出来ればベスト。ボランタリーに出来る状態にない場合にはサイト側が保障するべきでしょう。

 サイト側がどういうコミュニケーションを目指しているのかというのを最初に明らかに示して欲しい。NPOがミッションステートメントを出すのと同じようなことをやらなきゃいけない。その前には議論が必要です。そこを明確にできるということが大前提にあれば、その上で管理の厳しさみたいなものは中で分かれていくべきですね。

 黎明期の2ちゃんねるはミッションステートメントが明確にありましたよね。嘘を嘘と見抜けない人は掲示板を使うのは難しい、ってことを出したのは素晴らしかったと思います。要はリスキーな場がリスキーであるときちんと看板をぶら下げることが大切です。それがあれば、安全な場もリスキーな場も重層的に存在して構わないと思います。

 出会い系に特化したサイトがあってもしかるべしなんです。そこをただ、明確にすればいいのです。それさえ出来ていれば、コミュニティサイトというものはこうあるべきと規定する必要がなくて、今はビックバン直後ですから、みなさんがあり方についてどんどん議論すべきだと思ってますね。

 そういう意味では、保護者、学校側にいいたいのは「ネット=危ない世界」と前提に考えないでいただきたいと。新しい国が立ち上がって政情が不安定な国に旅行に行くかどうかと同じ話で、その国が悪いわけではないんですね。ネットは混乱の中にあって、混乱の中にある楽しさ、メリットがある。一方で、そうした混乱の中でどのような自分の身を守るすべがあるのかを考え、自分がそうした混乱の世界に移民をすることでどういうメリットが得られるか、本人自身が自覚できているかどうか、自覚させるためにネットでどのようなコンテンツを読むか、そういうことが必要なのです。そのナビゲーションをすれば先生、保護者の役割を果たすことになるんだということを是非分かって頂きたい。

「ネットは最後のフロンティア」ですから、火星にもしばらく行けないですし、5、10、15年経ったら、ネットでは別の言語でしゃべっているかもしれません。すでにネットにはたくさんの隠語が出てきていますからね。そんな視点をもって議論されるべきじゃないでしょうか。新しい社会作りの一翼を担っているという視点が重要です。研究者も、そういう大風呂敷をきちんと広げてビジョンを示したり、新たなインターネットの安心を形成するための仕組みづくりの提案をしていってほしいですね。対症療法的なものではなく。

−先生のゼミの生徒さんたちの進路はどういった分野ですか?

 うちの学科の学生は情報系に関心ある学生は多いですが、基本的には他の学部と比べて進路に偏りはないですね。

−先生の教えを受けた人がネット企業に勤めてくれるといいですね。

 私がこんな話をしはじめると、みんな昔話始めたよという雰囲気になりますけど…(笑)。

−学生さんたちの印象について伺いたいです。

 ちょっと不安…(笑)。やはりネット環境があることが当たり前なんですよね。当たり前すぎてネットのもたらす影響を想像する機会がないわけです。

 ニコ動でコメント付けてということが、実は恐ろしくすごいことであり、それが短期間にできあがり、普及したことの重大性に気づいていないんです。それに至るまでの急速な進化が今後も続いていって、社会に大きな影響を与えていっているということを想像しきれていない。

 気づいていないということが、かえって私たちと違った新しい発想を生むかもしれないのですが…。ただ、うちの学科にくる学生としてはすこし物足りないなとも感じます。「社会を変える」ということ、10年くらい前のSFCの学生とかはそういう機会を発見したいという野心をもった学生が多かったように思いますが。今は野心を持った学生が少ないです。

 彼らにはネットが当たり前である強みを生かして、ネットに20年、30年使っている私たちのようなネット社会のおじいちゃんおばあちゃんたちが思いつかないようなものを作ってもらいたいと思いますね。

−ありがとうございました。

この号終了

(鎌田真樹子 GrowingTree Evangelist)

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