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コミュニティサイトのあるべき姿 粉川一郎氏インタビュー 1

 粉川先生とは、文部科学省の熟議運営委員としてご一緒させていただいています。まだお若いのに、NIFTYのフォーラムの時代を経験されており、運営委員長として的確なアドバイスをされています。初めにお会いしたときからいつか必ずじっくりとお話をお聞きしたいと考えていました。今回もネットの世界そしてコミュニティ運営をよく熟知した観点からお話くださり、大変参考になりました。ぜひ皆様お読みください。

profile------------------------------------------
武蔵大学社会学部メディア社会学科 准教授 粉川 一郎
1971年(昭和46年)生まれ
1997年  筑波大学大学院修士課程環境科学研究科修了
1997年〜2009年 藤沢市市民電子会議室実験世話人
1999年〜2003年 三重県生活部NPO室市民プロデューサー
2000年〜2007年 (特活)コミュニティ・シンクタンク「評価みえ」代表理事
 著書(すべて共著)に『協働と市民活動の実務』ぎょうせい、『NPOと行政協働の再構築』第一書林、『多様化するメディア環境と人権』御茶の水書房『現代地域メディア論』日本評論社等がある。
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■ネットを子どもから守る

−粉川先生のご専門はどの分野となりますか?

 ネットコミュニティやネットコミュニケーションのあり方が現実社会のコミュニティ構造やコミュニケーションとどう同一性があるのか、あるいは違うのかということが関心領域になるんですけど、学者としてはその分野ではなくてNPO論の学者としての専門となっています。そういう意味ではネットについては学者というより現場の人という位置づけが正しいかもしれませんね。ですから、今日はそういう立場でお話しさせていただきます。

 私はNIFTYの時代からネットコミュニティに携わっていまして、NIFTYフォーラムの自動車フォーラムでサブシスオペ(注1)をやっていたんですね。95年にNIFTYが主体になって金子郁容先生や松岡正剛さん等の協力を仰いでつくっていたネットワークコミュニティ研究会に参加しました。当時は大学院生だったと思いますが、ネットフォーラムについて考えようというネットコミュニティフォーラムのシスオペもやっていたんですよ。その後、藤沢市市民電子会議室に携わってきまして。どっちかというと現場を歩いてきた。だからネットコミュニティ論を専門と言っていますけど、純粋な学識研究というよりは現場を歩いてきたという感じですかね。

注1:サブシスオペ・シスオペ:(サブ)システムオペレーターの略。インターネットのBBS(電子掲示板)やオンラインデータベースなどのホストシステムを管理している人。システム加入者の質問・要求に応えたり、全体にインフォメーションを提供したりする。

−文科省の熟議カケアイの委員であり、運営のコーディネーターもされていらっしゃいますね。

熟議での最初の議論は、実際にどういうシステムで運営体制を作れば良いのかというものだったので、金子先生にその辺りを手伝ってもらえないかということでお声がけいただきました。だから私の立ち位置的にはネットコミュニティを運営する側になると思います。

―青少年が牽引するネットサービスの利用について、大人側からは石川県の条例、東京都条例案等、規制するべきだという方向が示されていますが、どのようにお考えですか?

 例えば、石川県条例では、携帯電話を持たせないという話が出てくるじゃないですか。これに私は、6対4で賛成なんですよ。ただ賛成の理由で一般的な考え方と違うのは、守るのはネットであって、「ネット」を「子ども」から守らなければならないと考えているんです。私が非常に危惧していることは、ここ15年でネットワーク上のコンテンツの質が非常に下がってきている事なんですね。特にコミュニティサイトだけではないですけれど、ユーザー側から発信される情報の質が下がっている。あるいは、どの程度明確な根拠に基づいて書かれているかの信頼性が非常に下がってきてもいる。調べたい時にヒットする情報が有益なものである確率が下がっているんですね。日記サイト、ブログが増えてきた時代、最近ではTwitterの書き込みが増えてきた時代と、どんどん情報の質が落ちてきている。

 日本では無視できない存在である「2ちゃんねる」でも書き込みの内容は、以前は、ある一定基準での暗黙の了解があったように思いますが、今はそうしたものもなく、発言が暴走している感があります。

 原因は、いくつか考えられると思いますが、一つには、インターネットユーザー数の爆発的増大があげられます。その責任の一端が子どもたちにもあるんです。もちろんお年寄りもいけないですよ。あまりリテラシーの持っていないおじちゃんおばちゃんがネットを始めてというのもこうした混乱の原因になっていると思いますが、本人が被害を受けるかどうかはとりあえず置いといて、ネットワークというものを知らないままこういう場に入ってきて書き込みをしているわけです。子どもの素直な意見なら良いですけれども、そこでネットという、本来は知性の集約であるべき場に単なる思い、的なものが出てくることがネットの質を下げていっているように感じます。私は、純粋に、ネットというものはバックグラウンドである人間性、年齢、男女、社会的地位あるいは学識など、一切関係なくコミュニケーションをとれる場だと理解しているので、ある程度、ネット上でのリテラシーが成熟している、いわば「ネット上の大人」になっている人だけが使うべきだと考えているんです。子どもたちがそうした場に無邪気に入ってきて、だけど表面上、それが子どもなのかどうかが分からない人が混ざってくることで、混乱というか、全体としての議論のレベルが下がってしまう。そういう意味では子どもがネットに参加しないように携帯電話を持たせるなという意見に100%反対とは言えないなと。ネットを守るっていうのはそうした意味で言ってるんですよね。

―今、携帯とPCの境目がなくなっていますよね。携帯の方は年齢制限があったりデフォルトでフィルタリングを入れられたりするんですけれども、インターネット自体ももうすぐ携帯と近いレベルで制限がはいる可能性も出てきますよね。より、規制が拡大するというか…。

 そういう意味では、携帯とPCの世界が違うという今はいびつな状態だと思います。実際問題としていろんなサイトが両方からアクセスでき、融合は進んでいて、携帯独自の場というのはなくなり、境目は消えていく。そうなっていった時に子どもたちに携帯電話を持たせる持たせないのレベルの話ではなくなり、ネットを子どもたちにどう使わせるかという、5、10年経てばそういう議論になるでしょうね。

 そうなってきた時に子どもに自由にネットを使わせるのかというと、私はあまり賛成できない。ただ、それが12歳なら良い、15歳なら良いのかとかではなく、それは30歳でも40歳でも一緒で、ネット上に自分のアカウント、ブログ、Twitterのアカウントを持って情報を発信し、そこに誕生しているネット上の人格が成熟しているかどうかが問題だと思うんですね。それは、本当は実際の年齢とは全く関係ない。ネット上の人格が成熟している人であれば、現実社会では10歳でも問題はない。でもそれができない現実社会の40歳はご退場頂いた方が良いということです。

 そうなると、私達はネットコミュニケーションの歴史の中で、ネットの中で発言する、あるいはコミュニケーションをとる人物をどう育ててきたのかという話になりますよね。どうしても温故知新になってしまうんですけれども、NIFTYの時代の話とか、インターネットの初期、「ニューズグループ」の時代というのは、既存のユーザー側が新参者のユーザーにコミュニケーションの取り方をナビゲーションしていました。

 例えばNIFTYであれば、どこのフォーラムにも必ずフォーラムに初めて来た人用の部屋があって、そこであいさつをさせて、その人がどういう関心を持っているかメッセージを出させ、それを既存ユーザーや、シスオペや、会議室の議長などがフォローし、ここの会議室にいけば面白いよ、といったナビゲーションを非常に丁寧にやっていたんです。少なくとも私がいた自動車フォーラムでは、新規参加者の歓迎のための専門スタッフを置いていました。そういう中で右も左も分からないユーザー達が短期間である程度のコミュニケーションのやり方を身につけるというプロセスをとっていたんです。「ニューズグル―プ」の場合はちょっと手荒かったように記憶しています。変な所があると、古参ユーザー達がよってたかって怒り出し、ネチケットを読んでこい、など厳しい感じでした。それでもそうした行為がユーザーを育てて、強くしていった。

 現状ではユーザー数の違いがあるので、そういう場を単に準備するだけではすまないでしょう。むしろ、単なる場の整備より、初めてのユーザーにある程度、自分の時間を割き、コミュニケーションしながら学ばせる、ナビゲーションする人達が必要になってきます。そういう人達がいれば、変な話5、6歳からインターネットを使っても構わないと思います。

 リアルな社会での年齢とかバックグラウンドと関係なく、現実とネット上での私というものには線を引くべきだということなんです。私は、ネットは一つのまったく新しい社会だと思っていますから、既存の現実社会の人々が、ああすべき、こうすべきと干渉するのではなく、ユーザーの中からインターネットに貢献していけるような人材を作りだすにはどうすべきかということを考え、独自のシステムを作るべきだと考えています。昔の社会で言えば、小さい頃は子ども組に入り、青年組に入ってお祭りの準備をして、壮年組に入るわけです。年齢階梯集団(注2)のような仕組みで成長していく。ある程度コミュニティの成員たらしめるステップを社会システム的に構築していったんですよね。インターネットの中にもそういうシステムを置くべきだと思うのです。私はネットの中で、独自の教育システムと人々を受け入れるためのトレーニングというかコミュニケーションの機会の場が提案されていくべきだと考えています。本来はそうしたことが、コミュニケーションサイトに求められる視点じゃないかと思っています。

注2:年齢階梯制(ねんれいかいていせい)村落や部族などで、全成員を年齢によっていくつかの階級に分け、それぞれに特定の役割・機能を分担させ、全体としてその集団の統合を図る社会制度

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