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「おれさまの自由のために働き続けろ!」経済的DVの実態 ‐ 海老澤剛

結婚や同棲をしている女性のカウンセリングで、パート先などの人間関係によって心身の不調に至る方がおりますが、その背景には、家が常に安らげる居場所ではなかったり、体調を崩しても働かなければならない状況、経済的DVに相当する問題により、元々抱え続けていた心身の負荷が高い状況にあることがあります。

■経済的DVとは?


旦那さんや同棲している彼氏の収入が厳しい状況ではないにも関わらず、生活費などを入れず、自身はギャンブルや飲酒など、やりたいことにお金をつぎ込み、奥様や彼女に働かせ続けるといった行為です。

家事をこなしながらその生活費などを作るため、限られた時間の中で稼がなければなりません。ある程度給料を貰える仕事で有給休暇など福利厚生が充実した正社員であればまだよいのですが、そうではないパートなどの場合、体調が悪かったり、職場の人間関係などが悪く辛い状況にあっても、頑張って働き続けなければなりません。

■改善できない?・・・言いたいことは言えない、言わせない


女性側は、心配をかけたくない、嫌われたくない、負い目を感じていることがあって話すことに不安があったり、これくらい我慢するものだといった意識を持っていたりすることで、生活費の負担などの不平・不満、本音を言えません。

男性側は、疲労感を口に出したり、愚痴をこぼしたり、ちょっとした事でキレたりと、女性側が悩みを相談しづらい環境を作り出します。

■別れればよい?・・・別れられない、別れられる訳が無い


人が何かに嵌る心理に間歇強化(かんけつきょうか)というものがあります。これは、確実に得られる成功の報酬より、貰える頻度が少ないほど、貰えたときの嬉しさが強く、嵌ってしまうものです。ギャンブルに嵌る人をイメージして頂ければわかりやすいかと思います。人の記憶は、一般的に辛かったこと、怖かったことなどよくないことの方が記憶に残りやすいものですが、経済的DVのような抑圧された環境にある人は、仮に99%冷たくされても、1%優しくされたことが強い印象、記憶を持ち、相手に対する肯定感に変わり、どんなに辛くても頑張れる源になります。

それだけではなく、男女不平等の始まりでありマインドコントロールのキーの一つでもある“こんな私”のことを必要としてくれているという意識があったり、私がいないとこの人はダメになってしまうという心配、嫌われるのが怖い、家を出たら行く場所が無い、田舎の実家に帰っても仕事が無いなどの環境的な要素もあります。そして、尽くし続けた日々の積み重ねが、別れたくない想いをさらに強くし、他人の“別れた方がいい”といった声は受け付けなくなります。

このような女性の心理を全て見通しているのが夫・彼氏の特徴でもあり、相手の気持ちを逆手に取って、自分にとって面倒なことは、全て押し付けたり無視します。
当然、「子どもが生まれたら働けなくなるけど、どうするの?」といった自分に責任や負荷がかかる相談や質問からは、とことん逃げます。

■経済的DV、無理をさせ続けてしまったことに気づくのは?


ある60代後半のお孫さんもいる男性(Aさん)、決してお金に余裕が無かった訳ではなく、多くのお金を自分の趣味・遊びに費やし、亡くなった奥様が、パートで食費や光熱費、子育ての費用の全てを賄っていました。子どもが生まれたてのときはパートに出れず、薄給の内職をしながら子守をする奥様、夜泣きをする赤ん坊を前に、我慢出来ずに「出て行け!」と実家に帰らせたこともあったそうです。そして、奥様が60歳を越えたある日、体調を崩しながらも掃除のパートに行き、帰宅後、寝込んでその後入院するも帰らぬ人となってしまいました。
そんな父親に息子も近寄らず孤独な状況、奥様に対する責任と反省、そして何も出来ないAさんは前を向けずに、私に助けを求めてきました。

前に進むために過去を正そう、反省の気持ちをきちんと言葉と行動にしよう、そう一緒に考えて決めました。Aさんは、亡くなった奥様へと、同じようにお嫁さんに働かざるを得ない環境を作っていた息子さん夫婦への手紙を書き、奥様にはお墓の前で、息子さん夫婦にはその住まいで手紙を読み、息子さん家族のしあわせの味方になること、自分一人で生活が出来るようになるまで協力して欲しいことを伝え、受け止めてもらいました。

それでも、奥様が病床で初めて語った辛かった沢山の出来事、苦労の言葉「ずっと辛かった」は、きっと息子さんのお嫁さんが本当のしあわせを感じられるようになるまで消えることはないかもしれません。

■男女平等が生んだ不平等?


経済的DVを行う男性には、自己愛の強さ(努力や苦労をしようとしないなど自分を甘やかせたり、責任を負いたくない気持ちが強いなど)もありますが、働きながら愚痴もこぼさず、何でもしてくれた母親の姿、自身の仕事場では笑顔で働く女性の姿、女性の辛い姿や言葉を受け止める機会が無かったケースもあります。

男女平等でクローズアップされたのは雇用の機会ですが、男性は仕事、女性は家事という時代からすると、電化製品の進歩などで家事は楽になった面もあります。しかしながら、元々生理など身体の負担がある上に、男性の愚痴を聞く機会が増えたり、近所付き合いや職場、女性同士の人間関係が難しくなったり、ファッションなど意識しなければならない部分、気を配らなければならない部分も増えている状況に仕事が加わり、心身の負荷は基本的に増えたと思われます。それでも苦しみを見せなかった母親の姿などを見てきて、家事=楽という誤解を持つ人も増えたのではないかと考えます。

うつ病の発症者数は女性が男性の2倍近く、そこには、経済的DVのように自分の弱さを相手を抑圧することで隠そうとする男性を、強く見せ続けてあげる女性の負担によるものも少なくないのでは?と思いました。

■しあわせのカタチ


人それぞれ、しあわせのカタチは違います。自分の自由を犠牲にして大切な人のために全てを捧げる、それも素敵な話です。

けれど、明日、明後日、未来の自分、生まれてくる子どもやいまいる子どもは、しあわせに包まれているのでしょうか?たくさんの偶然が重なって出会えた二人、支え合い正しい平等のもと心身健康でしあわせであって欲しいと思います。

本当のしあわせって何なのでしょう?

経済的DVを受ける方にただ一つ言えることは、いまを嫌われないようにしのぐのではなく、自分と相手の未来から目を背けずに真剣に考え、あるべきしあわせのカタチに気づければ、旦那さんや彼氏の考え方・行動を変え、こころに優しい時間を増やすことは出来ます。

【参考記事】
■終わらないメンタルヘルス対策に終止符を!ストレスチェック義務化の次なる一手は「QCD」 (海老澤剛 メンタルヘルスコンサルタント)
http://sharescafe.net/40608531-20140831.html
■別れたい彼氏をストーカー行為に至らせないための6つのキーワード「S・A・F・E・T・Y」 (海老澤剛 メンタルヘルスコンサルタント)
http://sharescafe.net/40438168-20140820.html
■理化学研究所 笹井氏自殺の直接原因を心の病の面から考えると・・・ (海老澤剛 メンタルヘルスコンサルタント)
http://sharescafe.net/40285428-20140810.html
■うつ病を再発させないためのポイントは「症状だけでなく、真の原因に手を打つこと」 (海老澤剛 メンタルヘルスコンサルタント)
http://sharescafe.net/39769732-20140709.html
■都議会でのヤジ問題・・・大人は子どものお手本じゃない? (海老澤剛 メンタルヘルスコンサルタント)
http://sharescafe.net/39606788-20140629.html

海老澤剛 メンタルヘルスコンサルタント PMP Human Future Consulting代表

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