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- 2011年06月29日 21:38
メディアが取り上げない、被災地の感染症対策
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ワクチンには、必ず副反応がともなう。稀ではあるが、重篤な副反応により、命を失うこともある。しかし、その危険性を差し引いても、国民あるいは世界全体というマスと、当該疾患から守るという、利益が上回るときに導入されるものである。これは、正に、公衆衛生(Public Health)の概念そのものである。
日本は、諸外国に比べて、ワクチン対策に置いて大きく後れを取っている。このことは、我が国の公衆衛生行政が立ち遅れていることを、明確に示している。
WHOが勧告しているワクチンの中で、我が国が未だに導入していないものは多い。その中には、接種しないことによって、子供の命が失われる危険性があるものが多い。例えば、細菌性髄膜炎(Hib)、B型肝炎、肺炎球菌、ロタウイルス性下痢症、である。また、接種によって、実際の病気が引き起こされることが明らかになって、他国が取りやめている、ポリオ経口生ワクチン(OPV)を、未だに使い続けている、珍しい国でもある。
また、導入しているワクチンも、「任意接種」という、「打っても打たなくても良い」といった印象を与えかねない、名のもとに、接種率が上がっていない、重要なワクチンもある。Hibや、小児用肺炎球菌ワクチンが、この代表格であろう。
このように、平時においてもいい加減なワクチン政策が、震災によって、より、悲惨な状況になっている。それは、必要なワクチンスケジュールを管理する、行政窓口が立ち行かなくなったり、被災により、ワクチンを打つ医師がいなくなったり、あるいは、ワクチンそのものが無くなってしまった、などの理由からである。
平時と違う状況としては、建物の倒壊や、瓦礫などによってけがをし、汚れた傷から、破傷風が生じる、という例があげられる。幼少時にワクチン(DPT)を打っていれば、免疫が数年持続する、と言われているが、震災によってこれが接種できない場合、あるいは、決められた回数打てない、といった場合には、感染する危険性が高まる可能性がある。また、けがによって感染する疾患として、B型肝炎があげられる。B型肝炎は血液を介してうつり、諸外国では、出生とほぼ同時に打つことが、ルチンになっている。しかし、我が国では、公費化されておらず(ワクチン行政の一部に組み込まれていない)、今後、将来にわたって、どの程度B型肝炎が発症するかは、未だ不明である。調査が行われる、という話もきかない。
このような、「けが」などの震災前期に多く起こる病態に加え、これから、長期的に考えてゆかなければならない疾患がある。それらは、麻疹(はしか)、細菌性髄膜炎、肺炎球菌と言った、重篤な疾患である。
いずれも、小児において、重要な病気である。それは、罹った場合、命をおとしたり、重篤な後遺症を残すことがあるからだ。被災により、体力が低下した子供たちに、今後広がる可能性が指摘されている病気である。
幸いにも、効果的なワクチンがあり、VPD(Vaccine Preventable Diseases:ワクチンで予防可能な疾患)の代表であるが、「幸い」という文言が、日本にはあてはまらない、のは、前述したとおりである。
また、もうひとつの懸念は、「日本脳炎」の流行である。日本脳炎は、豚から、コガタアカイエカという蚊を媒介して、人間に感染する。日本脳炎ウイルスは、ほとんどの場合、人間に感染しても、無症状ですむが、約1/100 から1/1000の確率で、脳炎を発症する。その場合の致死率は20から40%と高率である。
これまでは、コガタアカイエカが生息する、南や西日本地帯が危険だとされてきたが、病気を媒介する、コガタアカイエカの分布が、北上している傾向があり、今後被災地でも、起こる可能性はある。http://idsc.nih.go.jp/disease/JEncephalitis/QAJE02/fig02.gif
日本脳炎は、ワクチン接種で予防できる感染症の一つである。しかし、2005年5月30日の、厚生労働省による、日本脳炎ワクチン積極的勧奨の差し控え以降、3〜6歳での日本脳炎ワクチンの接種率が減っている。現在では、徐々に回復していると推測されるが、未だ100%接種をのぞむのは無理だろう。http://idsc.nih.go.jp/disease/JEncephalitis/QAJE02/fig04.gif 繰り返すが、我が国の公衆衛生のインフラ整備は立ち遅れている。それが、ワクチン政策に如実に表れている。
現在、被災地には、UNICEFが入って、活動をしている。半世紀ぶりの日本への支援である。その活動は、以下のサイトに紹介されている。http://www.unicef.or.jp/osirase/back2011/1103_09.htm
「被災地の復興は、ボランティアの活動なしにはあり得ない」というのは、誰もが実感するところであろうが、日本は、GO(ボランティアとはよばないかもしれないが)、NGO問わず、外部からの支援を効率的に活用することが、あまり上手くないのではなかろうか。
特に、海外のNPO受け入れについては、もう少し、効率的に行ってもよいのではないか、というのが個人的な感想である。言葉の障壁は、我が国にとって大きな問題であるが、それ以前の問題として、政府や地方自治体が、こうした「助けの手」を、なかなか受け入れられない、「文化」のようなもの、が存在しているのではないか、と感じている。
繰り返すが、被災地における「感染症対策」は、十分ではない。しかし、それが表立ってこないのは、被災地の状況があまりに酷過ぎて、隠れてしまっているからである。感染症対策の中で、最も重要なのは、衛生状態悪化による感染症の流行と、ワクチン政策不備による、子供たちの重篤な感染症罹患である。特に後者は、「次世代を担う世代を守る」、という国の根本的責任そのものだ。被災地の感染症対策を、みて見ぬふりをせず、国の最重要課題として取り組むよう、希望する。
日本は、諸外国に比べて、ワクチン対策に置いて大きく後れを取っている。このことは、我が国の公衆衛生行政が立ち遅れていることを、明確に示している。
WHOが勧告しているワクチンの中で、我が国が未だに導入していないものは多い。その中には、接種しないことによって、子供の命が失われる危険性があるものが多い。例えば、細菌性髄膜炎(Hib)、B型肝炎、肺炎球菌、ロタウイルス性下痢症、である。また、接種によって、実際の病気が引き起こされることが明らかになって、他国が取りやめている、ポリオ経口生ワクチン(OPV)を、未だに使い続けている、珍しい国でもある。
また、導入しているワクチンも、「任意接種」という、「打っても打たなくても良い」といった印象を与えかねない、名のもとに、接種率が上がっていない、重要なワクチンもある。Hibや、小児用肺炎球菌ワクチンが、この代表格であろう。
このように、平時においてもいい加減なワクチン政策が、震災によって、より、悲惨な状況になっている。それは、必要なワクチンスケジュールを管理する、行政窓口が立ち行かなくなったり、被災により、ワクチンを打つ医師がいなくなったり、あるいは、ワクチンそのものが無くなってしまった、などの理由からである。
平時と違う状況としては、建物の倒壊や、瓦礫などによってけがをし、汚れた傷から、破傷風が生じる、という例があげられる。幼少時にワクチン(DPT)を打っていれば、免疫が数年持続する、と言われているが、震災によってこれが接種できない場合、あるいは、決められた回数打てない、といった場合には、感染する危険性が高まる可能性がある。また、けがによって感染する疾患として、B型肝炎があげられる。B型肝炎は血液を介してうつり、諸外国では、出生とほぼ同時に打つことが、ルチンになっている。しかし、我が国では、公費化されておらず(ワクチン行政の一部に組み込まれていない)、今後、将来にわたって、どの程度B型肝炎が発症するかは、未だ不明である。調査が行われる、という話もきかない。
このような、「けが」などの震災前期に多く起こる病態に加え、これから、長期的に考えてゆかなければならない疾患がある。それらは、麻疹(はしか)、細菌性髄膜炎、肺炎球菌と言った、重篤な疾患である。
いずれも、小児において、重要な病気である。それは、罹った場合、命をおとしたり、重篤な後遺症を残すことがあるからだ。被災により、体力が低下した子供たちに、今後広がる可能性が指摘されている病気である。
幸いにも、効果的なワクチンがあり、VPD(Vaccine Preventable Diseases:ワクチンで予防可能な疾患)の代表であるが、「幸い」という文言が、日本にはあてはまらない、のは、前述したとおりである。
また、もうひとつの懸念は、「日本脳炎」の流行である。日本脳炎は、豚から、コガタアカイエカという蚊を媒介して、人間に感染する。日本脳炎ウイルスは、ほとんどの場合、人間に感染しても、無症状ですむが、約1/100 から1/1000の確率で、脳炎を発症する。その場合の致死率は20から40%と高率である。
これまでは、コガタアカイエカが生息する、南や西日本地帯が危険だとされてきたが、病気を媒介する、コガタアカイエカの分布が、北上している傾向があり、今後被災地でも、起こる可能性はある。http://idsc.nih.go.jp/disease/JEncephalitis/QAJE02/fig02.gif
日本脳炎は、ワクチン接種で予防できる感染症の一つである。しかし、2005年5月30日の、厚生労働省による、日本脳炎ワクチン積極的勧奨の差し控え以降、3〜6歳での日本脳炎ワクチンの接種率が減っている。現在では、徐々に回復していると推測されるが、未だ100%接種をのぞむのは無理だろう。http://idsc.nih.go.jp/disease/JEncephalitis/QAJE02/fig04.gif 繰り返すが、我が国の公衆衛生のインフラ整備は立ち遅れている。それが、ワクチン政策に如実に表れている。
現在、被災地には、UNICEFが入って、活動をしている。半世紀ぶりの日本への支援である。その活動は、以下のサイトに紹介されている。http://www.unicef.or.jp/osirase/back2011/1103_09.htm
「被災地の復興は、ボランティアの活動なしにはあり得ない」というのは、誰もが実感するところであろうが、日本は、GO(ボランティアとはよばないかもしれないが)、NGO問わず、外部からの支援を効率的に活用することが、あまり上手くないのではなかろうか。
特に、海外のNPO受け入れについては、もう少し、効率的に行ってもよいのではないか、というのが個人的な感想である。言葉の障壁は、我が国にとって大きな問題であるが、それ以前の問題として、政府や地方自治体が、こうした「助けの手」を、なかなか受け入れられない、「文化」のようなもの、が存在しているのではないか、と感じている。
繰り返すが、被災地における「感染症対策」は、十分ではない。しかし、それが表立ってこないのは、被災地の状況があまりに酷過ぎて、隠れてしまっているからである。感染症対策の中で、最も重要なのは、衛生状態悪化による感染症の流行と、ワクチン政策不備による、子供たちの重篤な感染症罹患である。特に後者は、「次世代を担う世代を守る」、という国の根本的責任そのものだ。被災地の感染症対策を、みて見ぬふりをせず、国の最重要課題として取り組むよう、希望する。



