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メディアが取り上げない、被災地の感染症対策

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2011年3月11日に発生した、巨大大地震は、3カ月が経過した今でも、大きな後遺症を残している。仮設住宅2万8千戸が完成したものの、避難者数は、9万人、不明者約8千人、といった状況である。

このような状況が続く中で、感染症対策は大きく立ち遅れている分野の一つである。

何故、感染症対策が問題になるかと言えば、大きく分けて2つある。一つには、衛生状態が決して良いとはいえない、避難所生活を続けることにより、肺炎や、下痢性疾患などが流行することである。

もう一つは、予防接種の不徹底により、ワクチン予防可能疾患(Vaccine Preventable Diseases)の蔓延が起こり、子供たちが、当該疾患で死亡したり、重篤な後遺症に、生涯苦しめられ、可能性が生じる。

まず、避難生活を営む人たちの中で、今後注意をすべきであろう感染症について、論じてみる。

まず、重要なのは、急性胃腸炎である。急性胃腸炎の原因としては、種種のウイルスや細菌がある。まず、流行が懸念されているのが、ウイルス性の腸炎であり、代表的なものは、ノロウイルスやロタウイルスによるものだ。これらのウイルスは、感染力が強く、少量のウイルスで感染すると考えられている。感染経路は、主に不適切なし尿による、糞口感染である。予防のためには、し尿や、吐物の適切な処理、手洗い、汚染された衣類を捨てる、などがある。

ノロウイルスやロタウイルス性腸炎は、震災初期の、衛生状態が悪い中で、もっとも流行が懸念されたものであるが、震災から3カ月が経過した現在でも、流行が報告されている。http://www.kaiteki-kadenlife.com/virus/virus_002/205450.html

実際、被災地といっても、既に仮設住宅が整っている場所もあれば、未だに、上下水道の整備されていない、避難所が乱立する地域もあり、その差による、感染症発生率の違いが、今後、もっと顕著になってゆくであろう。

ウイルス性腸炎に加えて、梅雨を迎えたこれから、病原性大腸菌やサルモネラ菌による食中毒も多くなってくる。特に、衛生状態の悪い避難所生活を続けている人たちの間での流行は、もっとも懸念されるところである。

感染症の問題は、人間間だけにとどまらない。家畜や、ペットなどの死骸が放置されている地区では、ハエや蚊が多量発生している。本来動物に寄生する病原体が、ハエや蚊、場合によってはゴキブリ、ネズミ等を介して、人にうつることがある。

こうした病気を、「動物由来感染症」と呼ぶが、コレラ、チフスなど、かつて日本で流行を起こした感染症が、猛威を振るわないとは限らない。

また、昆虫を媒介とした、「ツツガムシ病」も流行のおそれがある。ツツガムシ病は、リケッチアであるツツガムシに刺されて感染する。熱が出て死亡する例もある。3月に、福島でツツガムシ病が報告されており、これから夏に向かう季節には、増えることが予想される。

今まで述べた感染症は、被災地のどこで、どの程度の規模で起こっているのか、正確に把握できていないのが、実情である。その、大きな理由としては、被災地の他の問題が多すぎて、こうした、感染症にだけ、注意をむけられない、という被災地の現状があるからだ。

被災地の医療活動は、感染症も含めて、DMAT、FETPや医療ボランティアの活動に支えられてきた。災害が起こった1,2カ月は、ボランティアも多く入り、物資も届く。メディアも関心を持って、取り上げ、被災者も、周りの助力に関して、感謝の念を抱く。所謂、「ハネムーン期」と呼ばれる時期である。

しかし、3カ月が過ぎた今、メディアの関心も薄くなり、ボランティアも自分たちの本来の仕事に帰ってゆくようになった。インフラが速やかに回復した地域と、そうでないところの格差感が広がっている。

整備が立ち遅れたところからは、以上述べたような感染症のリスクが高い。こうした地域への、専門家派遣などの重要性は、多くの人が指摘するところである。それはもちろん大切であるが、我が国に多くの人材がいるか、といわれれば、そうではない。

被災地の行政は、疲弊している。それは、彼らたち自身も、被災者であるからだ。震災後に、避難所のトイレが、し尿であふれ返っている状況を見かねた医療者が、地方自治体に改善を求めたところ、「し尿の衛生管理は保健所(厚生労働省)だが、処理施設自体は、国土交通省の管轄であり、環境省にも連絡しなければ、動けない」趣旨の事をいわれ、大変困ったという、話を聞いた。

縦割り行政の弊害、といってしまえばそれまでであるが、し尿であふれ返ったトイレを放置すれば、感染症が広がることは明らかである。そして、それを処理するための枠組みがややこしすぎるために、現場も、地方行政も、要らぬ労力を使うはめになる。

国が、平常時のような、法の枠組みを順守することに固執せず、地方行政と、被災地の現場が、動きやすくするための、「規制緩和」を速やかに、実行することが、最も求められることである。これは、震災に限らず、どんな危機においても、当てはまる。

次に、第二の問題である、「ワクチン」である。私は、この問題を、最も重要視し、かつ、国として早急にとりくまなければならない、と思っている。

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