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- 2014年09月05日 18:04
「ネット上や路上のヘイトスピーチに歯止めをかけ、議論が深まることを願う」―ヘイトスピーチに損害賠償請求訴訟を起こした李信恵氏が会見
2/2質疑応答
―ネットが登場したことで明らかに状況が変わり、表現する場がなかったひとたちが突然多くの人たちに読んでもらえるようになった。一部の人達が、その手段を身につけたから騒ぎ始めたのか。それとも日本社会全体に、憎悪や差別の感情を持つ人が増えていると思うか。また、そうした活動を制限する法律が可決されますと、濫用されるかもしれないという懸念を示す人がいます。例えば政治家を批判するなどの、あるべき批評までが封じ込められるのではないかということです
李氏:日本社会の中に、外国人を蔑視する背景があると思います。日本社会がそれを下支えしてきた、過去の戦争における歴史を振り返ったり、人権教育がちゃんとできていなかったことが背景にあると思います。また、免許を取っていない人がサーキットに出るようなもので、まだインターネットのリテラシーが育っていない現状もあるかと思います。
また、そういう人達は一定数は必ず存在していたと思いますし、安易なデマに踊らされ、また煽ることを娯楽にする人も多いと思います。
上瀧弁護士:法制度を濫用するおそれは、可能性としてはあると考えています。これは私個人の考えです。しかしそれはとりわけ刑罰について、一体どのように要件化していくのか、あるいは訴追をする時のどのような手続きをとっていくのかで工夫すべきで、濫用の可能性があるからといって、被害を受けている人たちを放置していいことにはならないと思う。
―ネット上のヘイトスピーチを支える経済的基盤として、IT系大企業の責任についてお伺いしたいと思います。訴えられた「保守速報」など、まとめサイトには、Googleなどの大企業が広告を出しています。「保守速報」については、今年の3月まで、Amazonが広告を出していましたし、李さんの名前を検索すると、2番目と10番目にヘイトスピーチのサイトが出てきました。前者はLINE社が運営する「NAVERまとめ」というサイトでした。ここにはYahoo!Japanが広告を出しています。10番目のサイトにはAmazonが広告を出していました。AmazonやGoogleは 明確に人種差別を禁止していますし、他のサイトも公序良俗に反するものを禁じる規約を設けています。
しかし多くのネットユーザーが知っていることですが、こうしたサイトのことは、IT企業に連絡しても広告が引き上げられることはありません。これらについてどうお考えでしょうか。抗議をしてこられましたでしょうか。
上瀧弁護士:広告を出しているサイトについては抗議等はしていません。民事の訴訟の範囲内でいいますと、どのように故意ないし過失を証明していくかが大きな課題です。そのような大きい会社が、ひとつひとつのブログ等についてどのように認識していくのかというのは、民事訴訟法上は困難なものがあります。そのような技術的限界があって、抗議もしてないし、相手方にもしていないということになっています。
李氏:個人的にはTwitter社には通報は100回以上していますし、YouTubeも通報していますし、NAVERもアメブロも、代表的なブログサイトには通報していますが、なかなか取り組んでもらえなかったり、削除してもらえなかったりしています。
でもカウンターと呼ばれる反差別ムードが高まる中、Twitter社が解除したり、企業の中でも議論したり、反差別の取り組みが少しは進んでいくかと思いますので、提訴をきっかけに企業もこれから取り組んでいただければと思います。
―提訴のあとに二次被害もあったというが、どのような被害があったか。被害以外に、応援するようなメッセージはあったのか。
また、ようやく安倍総理も、このヘイトスピーチについてはしっかりと対処しなければならないと、都知事との会談で行っていました。やるべきことも多いと思いますが、どういうことをやってもらいたいか。
李氏:被害については、提訴後すぐにニュースで各種報道されたあと、大分県の高校教師がFacebook上で「極左と極右の桜井は殺し合え、日本からゴミがなくなると美しくなる」というような書き込みをしました。なりすましという可能性もあるので学校に連絡させていただいて、教頭先生と話し合いをしました。処分は教育委員会に一任しております。個人的な誹謗中傷は、Twitterで福岡の市会議員がブログで誹謗中傷を繰り広げらてれいます。
逆に、すぐに友達が支援のメーリングリストを作ってカンパを募集していただいたり、色んな声を届けていただいたりしています。
法規制は凄く時間がかかると思うんです。行政の取り組みも時間がかかると思うんですが、大阪市長などの地域行政の長が「差別を許さない」という声をまず上げていただくことによって、抑止力になると思っています。まずいろいろな、小さなところから代表の方に声をあげていただければと思っています。
―安倍さんがもっと早く発言すべきだったという声もありますが、どう思いますか。
李氏:遅かったとは思うんですけど、今からでも遅くないので声を上げて取り組んでいただけるのであれば、一日でも早くと思っています。
―家族や周りの方が、差別的な発言や街宣についてどのように思っていらっしゃったのか。提訴したことでどのような反応をされているか。
李氏:夫は私がこういう取材をすることは、自分で決めた仕事なので思うように仕事をしろと。私は日本人の夫との国際結婚ですので、差別問題に取り組むことは重要なことだと、夫も認識しています。息子も、最初は大きなことになることを嫌がるかと思ったんですが、「裁判する」と言った時に、ネット上では路上での差別がなくなるなら頑張れと声をかけてくれました。
ーどのくらいの時間で結論が出ると思うか。
上瀧弁護士:「保守速報」の方は早いかもしれませんが、桜井誠さんと在特会は反訴の予定もあるとお聞きしているので、2年くらいはかかるかもしれません。
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会見の最後には、関東でヘイトスピーチに関する訴訟を起こしている伊藤大介氏が「昨年、デモで"殺せ!殺せ!李信恵"というコールがかかったことがありましたが、警察官はそのコールを聞いても、彼らを制止すること無く、止めようとした我々を制止してしまうというのが現状です。このような状況で東京オリンピックができるんでしょうか、各国の皆さんに報じていただきたいと思います」とコメントした。




