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今回の北大西洋条約機構首脳会議の含蓄

いまイギリスのウェールズ地方で北大西洋条約機構(NATO)の首脳会談が開かれています。

北大西洋条約機構は第二次世界大戦の教訓から、ヨーロッパで再び戦争が起きないようにするために考案された機構です。

具体的には西欧各国の軍隊をひとつの指揮下に置き、各国が勝手に軍隊を動かせないようにすることが決められました。これは主にドイツが再び軍事大国になることをけん制するための措置です。もうひとつのNATOの狙いは団結することによってソ連の脅威に対抗するということでした。

ソ連の崩壊後、旧東欧諸国の一部がNATOに参加したため、メンバー国の数は今も増え続けています。

2007~08年にわたって開催された前回のNATOサミットでは、ウクライナのNATOへの参加が議題に上がりましたが、これはドイツならびにフランスが拒否し、実現しませんでした。これはドイツが余りロシアを刺激したくないと考えたことが原因です。

今回のサミットでは再びウクライナをどうするか? が焦点になっています。しかしドイツは前回同様、わざとNATOの足並みが乱れるように動き回っています。具体的にはウクライナのNATOへの参加は拒否する、そしてロシアがウクライナの一部を彼らの連邦とすることに目をつぶる、さらにバルト海三国へのNATO軍の常駐は許さないという事です。

ドイツが恐れていることは、NATOが一丸となってロシアと対峙すれば、ロシアはそれを脅威に感じ、それに対する反発から、好戦的ムードを煽ってしまうということです。

或る意味、NATOで起こっている足並みの乱れは、欧州連合における「何も決まらない」状態と酷似していると言えます。そしてロシアはNATO内部でそのような不協和音が出るように、ドイツに対してソフトタッチの外交をしてきました。

つまりNATOの現状は、ロシアの思う壺というわけです。

一方、アメリカはバルト海三国におけるパトロールの強化、ならびに演習の実施などを通じて、NATOのプレゼンスを高め、ロシアに対して戦々恐々としているこれらの国々を支援しようとしています。

つまり「NATOで何も決まらないのであれは、アメリカは単独でこれらの辺境国の防波堤になる」という考えです。もともとNATOはアメリカが言いだしっぺになって組織されたものであり、費用分担の面でもアメリカはダントツです。その意味では、NATOに気兼ねせず、勝手な事を出来る、唯一のメンバーと言えるのです。

プーチン大統領は「NATOは牙の無いフニャフニャした軍隊だ」ということを熟知しているので、実は余りNATOを問題にしていません。むしろアメリカがNATOそっちのけでポーランドやバルト三国と各個に親密な関係を築き、これらの国々にアメリカ軍の装備を持ち込むことを恐れています。

アメリカはリーマンショックから立ち直り、新しいバイタリティが漲り始めています。おまけにシェールガス開発でエネルギーの海外依存度は下がっているし、国内産業は低廉なエネルギー・コストを背景に国際競争力を取り戻しつつあります。ドルも高くなっているし、テクノロジー、航空宇宙、ヘルスケアなどの先端分野ではどの国も寄せ付けません。

これに比べるとロシアは天然ガスや石油の輸出に依存度が高く、最大のお得意さんである西欧諸国を敵に回せない事情があります。ルーブルのひ弱さは、軍事大国としてのロシアと経済小国としてのロシアのギャップを痛感させます。

従ってウクライナにおけるロシアの目的は、てきとうなところでウクライナと和解して、東ウクライナをロシアの連邦の一部にするということになります。つまり現状維持です。

なぜならキエフにまで兵を向けるとアメリカが出てくるし、ウクライナはNATO陣営に飛び込んでしまうだろうし、西欧という大事な天然ガスの顧客を失ってしまうからです。

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