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安倍政権の暴走を止めよう 集団的自衛権の閣議決定の問題点について

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 ――「警察権の行使」では少し頼りない気もします。ミサイルなど強力な兵器による攻撃から、防護できるのでしょうか?

北澤 警察権の行使に当たっては、比例原則といって「事態に応じ合理的に必要とされる限度で」武器を使用することになります。この原則に基づけば、刀やピストルで襲われた場合に、例えば護衛艦の主砲で反撃することは、「事態に応じ合理的」な限度を超えるでしょう。しかし、ミサイルのような強力な兵器による攻撃に対しては、イージス艦による迎撃システム等で防御しても構いません。すなわち、攻撃される態様に応じて必要な兵器で防護することができるのです。

 ――では、政府が示した事例のうち、「強制的な停船検査」についてはどうですか? わが国の近隣で戦争が発生し、米軍も攻撃を受けているなかで、戦争当事国に向けて武器を積んだ船舶が日本周辺を航行している。この船舶に対して、国際的には武力行使に当たるとされている臨検を行うには、集団的自衛権の行使が必要ではないか、という事例です。

 北澤 結論から言えば、現行の憲法解釈に基づく個別的自衛権で対応できると考えています。

 少し難しい話になりますが、従来からの自衛権発動の3要件の一つである「わが国に対する急迫不正の侵害がある」というのは、「相手が武力攻撃に着手したとき」と解されてきました。では、何をもって「着手」と見なすのか? これは、必ずしも実際に日本が攻撃を受けた後とは限りません。わが国に対する武力攻撃の「端緒」が見られる場合には、「着手」があったと判断できるケースもあるのです。

 ここで現実のケースを考えてみましょう。日本周辺で米軍と自衛隊は、平素から緊密な協力関係にあります。例えば朝鮮半島で有事が発生すれば、在日米軍基地から米軍が戦闘作戦行動として出撃することは、誰の目にも明らかです。

 一方で、北朝鮮は、日本本土を射程に収めるノドンなどのミサイルを多数配備しています。つまり、米朝有事が起きれば、わが国領土への攻撃がいつ発生してもおかしくない状態となる可能性が非常に高いのです。

相手方に武力攻撃の着手があれば、自衛権は発動できる

 ミサイルなど大量破壊兵器の技術が進歩し、日本周辺の安全保障環境が変化した結果、従来は法律上「平時」と位置付けられてきた周辺事態でも、実は有事であると認定できる事態が生じているのが現実です。

 もちろん、いわゆる「予防攻撃」は駄目です。しかし、例えば、北朝鮮における軍隊の動員状況や国際社会に対する挑発的な言動などから総合的に判断できれば、日本に対する武力攻撃が発生する前であっても、相手方の行動を武力攻撃の「端緒」と見なすことは、国際的にも正当性があります。

 ――なるほど。わが国に対する武力攻撃の端緒、すなわち「着手」があれば、個別的自衛権の発動として強制的な停船検査を実施できるということですね。

北澤 その通りです。その場合は既に存在する「海上輸送規制法」を適用し、強制的な停船検査を実施することができます。

 ――では、「米国に向けてわが国上空を横切る弾道ミサイル迎撃」の事例についてはどうでしょうか。これは、米国に対する武力攻撃が発生し、さらに攻撃国から日本の上空を飛び越えてハワイやグアムなどの米国領土に向け弾道ミサイルの発射が想定されている。その場合に集団的自衛権を行使しなければ、日本上空を飛び越える弾道ミサイルを迎撃することができないのではないか、という事例です。

北澤 ご指摘のような事例には、技術的な観点から見てリアリティがありません。

 というのも、日本を標的とするミサイルとは異なり、ハワイやグアムなどに向けて発射される長距離弾道ミサイルが日本上空を飛び越える際、そのミサイルは大気圏外という、ほとんど宇宙空間に近いような高高度を、猛烈なスピードで飛んでいる状態です。そのようなミサイルを撃ち落とすことは、現時点では技術的に不可能と言ってよい。少なくとも、軍事的に信頼性のある実用的な迎撃システムの開発・配備には相当な時間がかかることは間違いありません。

 グアムが攻撃されるのに在日米軍基地が攻撃されない、という想定も非現実的です。よくこんな事例を作ったものです。

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