- 2014年09月03日 15:37
安倍政権の暴走を止めよう 集団的自衛権の閣議決定の問題点について
1/3安倍内閣は集団的自衛権行使を容認するため、憲法解釈の変更を内容とする閣議決定を7月1日に行った。専守防衛を旨とするわが国の防衛体制の在り方を根本から変える今回の決定に、国民は大きな不安を抱いている。今回の閣議決定の問題点について、民主党政権時に防衛大臣を務め、現在は党安全保障総合調査会長の北澤俊美参院議員に話を聞いた。
安全保障総合調査会長 北澤 俊美(きたざわ・としみ) 参院議員
――閣議決定の内容についてどう評価しますか?
北澤 今回の閣議決定には、集団的自衛権行使を容認する「新たな3要件」が盛り込まれています。しかし、新3要件には二重に緩みがあり、専守防衛の則(のり)を超えていると言わざるを得ません。
一つは、「密接な関係にある他国」が、どこまでを指すのかが明らかになっていないこと。米国のみならず、世界中に対象が広がるおそれがあります。
もう一つは、「わが国の存立」「国民の生命、自由、幸福追求の権利」という抽象的な概念を持ち込んだこと。「幸福追求の権利」とは崇高な理念ですが、その意味するところは曖昧模糊(あいまいもこ)としています。いかなる時に日本が武力行使できるのか、その範囲が時の政府の判断によって、いわば伸縮自在に変わるのが新3要件の正体です。
「歯止め」なき新3要件は専守防衛を逸脱している
――確かに抽象的な表現で、どのような場合に集団的自衛権行使が容認されるのか、よく分かりません。
北澤 基準が曖昧ということは、政府が拡大解釈できるということです。つまり、新3要件は「歯止め」になりません。
3要件の比較
安倍総理は記者会見で、「自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争のような戦闘に参加することはこれからも決してない」と繰り返し述べていますが、新3要件からそのような「縛り」を読み取ることはできません。
また、安倍総理は7月14日の衆院予算委員会での質疑で、「経済的な事由、例えば産油国からの石油供給が滞り、原油価格が高騰するような事例についても、新3要件を満たし得る」と答弁しました。この考え方でいくと、日本から遠く離れた中東地域で起きた戦争についても、「わが国の存立が脅かされる」などと認定されれば、集団的自衛権の名のもとに武力行使できることになってしまいます。石油だけではありません。食糧や重要資源を理由にして集団的自衛権を行使することも可能になります。
他にも、「日米同盟が傷つくような事態では要件を満たす可能性が高い」という意味の答弁もありました。いずれも従来の「日本防衛」を大きく超えた武力行使となり、専守防衛を大きく逸脱してしまいます。
――政府は、集団的自衛権が必要であることを示す目的で、具体的な「事例集」を提示していましたね。
北澤 政府が提示した15事例のうち、3事例は離島防衛などいわゆるグレーゾーン事態に関するもので、4事例はPKOにおける武器使用など国際協力に関するものです。そして、残りの8事例が集団的自衛権に関するものと言われています。
しかし、この8事例については、事例の設定が非現実的であるほか、従来から認めてきた「個別的自衛権」や「警察権」を応用すれば対応可能と思われるものばかりです。私が見る限り、集団的自衛権の行使がどうしても必要と思われるものはありません。
そもそも、与党協議で「事例集」がどのように検討されたのか、はっきりしません。にもかかわらず、今回の閣議決定によって、これら8事例についても、政府が新3要件を満たしていると判断すれば集団的自衛権の行使が可能であると整理されてしまいました。政府・与党の態度は無責任極まりないと言わざるを得ません。
政府の事例は、集団的自衛権の行使でなくても可能
――具体的にお尋ねします。政府が示した事例のなかで、例えば「邦人輸送中の米輸送艦の防護」、つまり朝鮮半島のようなわが国の近隣で戦争が発生し、米軍も攻撃を受けているなかで、邦人を乗せた米輸送艦を海上自衛隊の護衛艦が防護するためには、集団的自衛権が必要ではないかという事例がありましたね。
北澤 まず、このような状況で戦争当事国である米艦船に邦人輸送を委ねれば、国際法上の保護が得られなくなり、相手国からの攻撃対象にもなり得るため、かえって危険です。現実的にも、戦争発生前、情勢が緊迫した時に、既に相当数の邦人は日本に帰国しています。それでも残る残留者については、自衛隊や民間船舶・航空機により日本政府の責任で輸送するのが最もあり得るシナリオです。それでもなお外国船舶による邦人輸送の事例を想定する必要があるとすれば、例えば広義の警察権行使として、自衛隊にこれらの船舶を防護させることも考えられます。
従来の憲法解釈と安倍内閣による解釈変更
自衛隊が行う警察活動にはさまざまなものがありますが、例えば自衛隊法で定められた「海上警備行動」や、「弾道ミサイル等に対する破壊措置」も、これに当たるとされています。また、国内で行う活動に限定されているわけでもありません。例えば自衛隊法で定められた「海賊対処行動」は、わが国の警察権を公海上の外国艦船に及ぼして行使するものとされています。
これらの例と同様に、邦人救出のための艦船防護の法律を別途整備すれば、自衛隊が行う警察権の行使として、邦人を輸送する艦船について、わが国のものであるか外国のものであるかを問わず、防護できるようになると考えています。



