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<テレビが「やってはいけないこと」をやったら…>8月16日放送「めちゃ×2イケてるッ!」は一線を踏み越えた? ‐ 高橋秀樹

高橋秀樹[放送作家]

筆者は放送作家でありコント作家であるが、フジテレビの『めちゃ×2イケてるッ!』(土曜夜8時)のファンである。TBSの『あらびき団』が終わってからもっとも熱心に見ている笑いの番組である。

『めちゃイケ』のファンというと大雑把すぎるかもしれない。筆者は稀代のコメディアン、岡村隆史が好きなのである。動けて、喋れて、あとは女の子にモてれば、一頭抜けた時代を代表するコメディアンになれるところである。

岡村隆史は芸の幅が広い・・・というと誤解されるかもしれない。岡村隆史は芸のレベルが広い・・・これでは意味がわからないか。要するにすごく優れた芸を持っている人にも対応できるし、大した芸を持っていない人にも対応できる芸人なのである。素人を扱えるという意味とは違う。どんなセコ芸人とも対応できるという意味である。

だから今、『めちゃイケ』で、一番面白いのは「岡村のサル」と「よゐこの浜口優のウサギ」がイラストで喋るコーナーである。岡村は見事に明らかに芸で劣るヤンキーの浜口のしゃべりのレベルまで、トーク力を落としてこれに対応している。見事なものだ。

そういう『めちゃイケ』が、やってはいけないことをやった。8月16日の「めちゃギントン総集編」の中でのことである。総集編とあって、その日はレギュラー番組で見せられなかった“おもしろいもの”を見せようという趣向である。

僕が気にしたのは次のシーンだ。

ゲストは俳優の大泉洋。レギュラーメンバーはなんとか大泉に失敗を導き、罰ゲームの「肥満サラリーマンですし詰めの電車」に乗せようとする。しかし、その前段階でジャルジャルの後藤淳平が凡ミスを繰り返し、大泉を罰ゲームに追い込めない。

すると、サブのディレクターから指示があったのだろう。収録は停止され、本来は罰ゲームを受けるべき後藤を省略して、大泉に順番が回るように仕組んだのである。人物の背景が手慣れた感じで、もとの状態に変わったのは、普段からこれをやっているからだろう。大泉は半分マジ(?)で、この措置に抗議する。そういったシーンだ。

なぜこのシーンを放送してはいけないのか。これが「やらせ」だからか? それは違う。

『めちゃイケ』は、

「1時間の番組全体は笑いをとるためのドキュメンタリーとして貫かれている。だから、中に挿入されるコーナー企画は面白くするためのヤラセすれすれの演出があっても構わない」

という思想に貫かれている。

番組作りのプロで、その点に気づいている人も、一般の人で気づいていない視聴者も、どちらの立場にある人も、上記の『めちゃイケ』の世界観を前者は許容して、後者は気づかないから感心して、番組を見ている。その後者、つまり一般視聴者の気持ちよさをこの裏側公開は、粉々に打ち砕いたのである。

このシーンを使わねばならないほど素材に困っていたとはどうしても思えない。プロデューサーはこの放送を許可したことで一線を踏み越えた。

さらに、このシーンは本来なら、基本は止めずに回すことだ。失敗した後藤を岡村が説諭する「後藤わかっとるよな」「そういうことははっきり言いたくないがわかってるよな」「まわそう」、こうやって続けるところにいくつの笑いが転がっていることか。大泉のスケジュールがなかったのなら、それまでの話にすれば良い。

こうやって、仕組んでまで笑いを取り込んでゆく餓鬼道を進んでも、笑いの神様も降りては来ない。そんなに笑いを貯めこまなくてもいいじゃないか、と。

繰り返し言うが、筆者にとって、TBSの『あらびき団』が終わってから、フジテレビの『めちゃ×2イケてるッ!』は、もっとも熱心に見ている笑いの番組なのである。

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