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新宿焼身自殺事件の続報が出た

この6月29日に新宿駅南口の横断歩道橋上で、一人の男性が集団的自衛権容認に反対のスピーチをしてからガソリンをかぶり、焼身自殺をはかった事件があった。抗議の自殺と思われたが、日本のマスコミはその後関連の続報を全くしないのが異様だった。背景を調べようとする記者が一人もいない筈がないと思っていたが、きょうの朝日新聞社会面に、かなりくわしい記事が出ていた。

 それによると、この男性は元タクシーの運転手だったが、白内障で働けなくなり、路上生活を経て生活保護を受ける身の上だった。さいたま市のワンルームマンションに一人で住み、家族からは縁を切られていたという。警察が自宅を調べても、記者が周辺の人たちの話を聞いても、政治的な主張をしていた様子はうかがえなかったということだ。背広にネクタイという事件時の姿も、本人の最近の日常からは考えにくいものだったようだ。

 そして現状なのだが、今も都内の病院の集中治療室にいて面会謝絶だという。記者は当然本人の話を聞こうとしただろうが、それは不可能だったということだ。2ヶ月以上も集中治療室に入ったままというのは、やはり気になる話ではある。

 新聞からわかったことはそれだけである。朝日だからこれだけでも記事にしてくれたと思うが、あとは想像で補うしかない。最後は路上生活と生活保護だったにしても、一人前の仕事をしていた時もあった人なら、自分の人生にどう始末をつけるかを考えることはあったろう。最後のスピーチで与謝野晶子の「君死に給うことなかれ」を唱えたというから、文学少年・青年であったかもしれない。最後に「死に花」を咲かせたいと思ったとしても不思議ではない。

 死にたいのが先にあって、現政権への批判をそれに利用したとも考えられる。生活保護の申請を断られた経験もしているから、反骨精神の底流はあっただろう。かつて「自死という生き方」という本を読んだときの記憶だが、人生に見切りをつけている人は、自死を実行するきっかけは、ささいなことでもいいのだ。そこに社会的な意味づけが加わったら、なお都合がいい。

 辺野古の海で海上保安庁の規制を受けた活動家は、「自分がここで死んだら、この海を守れるかもしれない」と、ふと口走ったということだ。その記事を読んだとき、私もそこにいたら、たぶんそう思うだろうと思った。巨大な権力に向かって本当に怒ったとき、人はそんなことを考える。

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