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日本が提案しているクロマグロの漁獲規制について解説

クロマグロの漁獲は、次の3つの問題点があることを先の記事で書いた。

① 卵を産む前に95%以上の個体をとってしまう
② 産卵場で待ち伏せして、卵を産みに来た親を一網打尽
③ 非持続的な漁業を規制するルールが存在しない

一昨年までは、「資源に問題はない」といってきたWCPFCは、去年から「資源は危機的状況」と主張を一転させたので、漁獲圧の削減が国際的に議論され始めた。去年は「未成魚の漁獲量を2002-2004年の平均よりも15%削減する」という国際的な合意を得た。実際には、日本国内では漁獲量を削減するための法的な整備は行われていない。沿岸漁業については、ライセンス制度を導入しただけで、漁獲を抑えるための措置はなにもない。にもかかわらず、目標は達成できた。クロマグロの資源量は基準となる2002-2004年の半分ぐらいに減少しているので、漁獲量削減とは名ばかりで、がんばっても達成できないような過剰な漁獲枠設定なのだ。

では、15%削減に意味が無かったかというと、そういうわけではない。とりあえず漁獲量を規制する方向で国際合意を得て、漁獲規制の制度を各国が整えるための猶予期間の意味があったとおもう。たとえば、日本の場合は、漁獲量を把握していなかった沿岸漁業にライセンス制度を導入し、漁獲報告を義務づけることとした。漁獲量を把握するための枠組みを急ピッチで構築している。クロマグロ資源を回復させるには、さらに漁獲量を削減していく必要がある。

9月1日から4日まで、福岡でクロマグロの資源管理について議論をするための国際会議が開かれている(現在、その会議を傍聴しながら、ブログを書いている)。ここで日本代表が提案したクロマグロの規制について検討してみよう。

日本の提案はここにある。
http://www.wcpfc.int/node/19348

日本提案の概要

Management measures
2. CCMs shall take measures necessary to ensure that:
(1) Total fishing effort by their vessel fishing for Pacific bluefin tuna in the area north of the 20 degrees north shall stay below the 2002-2004 annual average levels.

(2) All catches of Pacific bluefin tuna less than 30kg shall be reduced to 50% of the 2002-2004 annual average levels. Any overage of the catch limit shall be deducted from the catch limit for the following year.

3. CCMs shall endeavor to take measures not to increase catches of Pacific bluefin tuna over 30kg from the 2002-2004 annual average levels.

6. The CCMs shall cooperate to establish Catch Documentation Scheme (CDS) to be applied to Pacific bluefin tuna as a matter of priority.

管理措置
2. 各国は以下を実現するために必要な措置を執る

(1) 20度以北でクロマグロを漁獲する船の漁獲努力量を2002-2004年の平均値から下げること。

(2) 30kg未満の太平洋クロマグロの漁獲量を2002-2004年の平均レベルの半分に減らすこと。漁獲枠を超えた漁獲は、翌年の漁獲枠から削減をする。

3. 各国は、30kgを超える太平洋クロマグロの漁獲が2002-2004年の平均レベルから増えないように努力をする。

6. 各国は協力して、漁獲報告システム(CDS)を優先事項として確立する。

日本提案の内容について解説

日本提案の骨子は以下の通り。

2002-2004年を基準年として、
1)基準年よりも漁獲努力量を増やさないようにする
2)30kg未満のクロマグロ(未成魚)の漁獲を基準年の半分に減らす
3)30kg以上の成魚については、基準年の水準を超えないようにする

1)については、努力量が定義されていないので何とも言えない。船の数だとか、出漁日数の規制は、資源の枯渇を食い止める上で、それほど大きな意味が無い。低水準の資源を産卵場で獲っている場合などは、少ない出漁日数でも、魚を取り切れてしまうからだ。現在の漁獲テクノロジーを駆使すれば、低水準の資源でも効率的に創業することが出来るので、資源を確実に守るには、漁獲量に適切な上限を設定する必要がある。努力量の定義が、漁獲死亡率であるなら、漁獲量に上限が設けられることになるので意味がある。

2)未成魚の漁獲圧削減は、クロマグロ資源の回復のために、必要不可欠だ。漁獲の中心は0-2歳の未成魚であり、ここを削らなければ大幅な資源回復があり得ないことは明白だろう。未成魚の漁獲圧を削減しない限り、3歳以上を禁漁にしたとしても、資源の回復は望めない。下の図は、クロマグロの漁獲の年齢組成なのだが、この図の青、赤、緑(未成魚)をそのままにして、紫より上(成魚)を削減しても、大きな効果は期待できない。

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3)成魚の漁獲規制が未成魚よりも緩くする意味がよくわからない。産卵親魚量の減少が問題になっているのだから、未成魚と同様に成魚の漁獲も削減すべきだと思う。とくに産卵場での操業は、少なくなった親魚に致命的なダメージを与える危険性がある。産卵場は日本にしかないのだから、日本のイニシアチブで産卵場の漁獲規制を行うべきである。

総評

クロマグロ漁業の一番の問題は、未成魚への高い漁獲圧である。未成魚の漁獲の大幅な削減を、日本が率先をして提案しているというのは、高く評価できる。日本はこれまで自国の漁獲を減らしたくないから、規制に反対することが多かったのだが、今回は資源の持続的な利用に向けて主体的な役割を果たしている。クロマグロの成魚の漁獲はほとんどが日本のEEZ内で行われているので、未成魚の漁獲圧を下げて、成魚中心の漁獲に切り替えることができれば、日本漁業に大きな利益が期待できる。また、日本政府は、漁獲報告制度(Catch Documentation Scheme)やデータ収集についても、提案している。これらは、不正漁獲を削減し、資源管理措置を実行するために必要な措置と言える。

CDSの説明

日本以外で、クロマグロのみ成魚を漁獲しているのは、韓国とメキシコの2国のみ。他の国には、反対をする理由があまりない。ということで、 韓国・メキシコが合意をするかどうかが、カギになるだろう。今回の会議は西太平洋なので、韓国が含まれる。おそらく今日の午後に、喧々がくがくの議論をすることになるだろう。そして、メキシコについては、10月に予定されているIATTCの臨時総会で議論をすることになる。メキシコは、「漁獲へのインパクトが大きい西太平洋から明確な漁獲削減案を示すべきである」という立場をとっているので、WCPFCでの合意が出来なかった場合は、未成魚の削減に同意しない可能性がある。逆にWCPFCで未成魚の削減の合意が出来た場合に、メキシコも厳しい立場に追い込まれるだろう。

国際交渉は相手があることだから、合意が得られるかどうかは不透明である。もし、韓国やメキシコの合意が得られなかった場合にはどうなるだろうか。俺は、国際的な合意が得られなかったとしても、日本は単独で未成魚の削減をおこなうべきだと思う。韓国、メキシコの漁獲量は日本よりも少ないし、北米に回遊するクロマグロは資源の一部であることを考慮すると、日本単独の漁獲削減でも、大きな効果が期待できるのだ。日本が国内の漁獲規制をしたうえで、引き続き韓国とメキシコに圧力をかけていくべきだ。

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日本政府提案は、方向性としては正しいので、全面的に応援したいと思う。現状では、成魚の漁獲規制の不足しており、問題点②は解決できない。また、国内で未成魚削減のための方策などには様々な問題がある。未成魚の漁獲削減を進めながら、産卵場の漁獲規制と、国内の規制のあり方については、引き続き議論をしていく必要があるだろう。

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