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長期金利は何故下がっているのか?

 昨日の東京市場で、長期金利(新発10年債の利回り)が0.5%を切り、0.49%まで低下してしまいました。ご存知でしょうか?

 預金金利が極めて低い水準にあることについては、私たちが身をもって体験しているところですが、10年物という期間の長い国債の利回りでさえ0.5%を切るという事態になっているのです。

 どう思いますか? 何故それほどまでに長期金利が低下するのでしょうか?

 いろいろな解釈が成り立ち得る訳ですが、先ずマスコミがどのように報じているかを少しみてみましょう。

 NHK: 長期金利 0.49%まで低下
 「長期金利が低下したのは、ヨーロッパ中央銀行が追加の金融緩和策として各国の国債を買うのではないかという観測などから今週に入って、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアなどヨーロッパ各国の国債が買われて金利が軒並み過去最低の水準まで低下し、日本の国債を買う動きも強まっているためです」
 毎日: 長期金利:0.490%に低下 1年4カ月ぶり
 「日銀が大規模金融緩和で大量の国債を購入し続けているほか、米欧の中央銀行も景気刺激のため、金融緩和を続けていることが背景」
 日経: 長期金利、0.490%に 13年4月以来の低水準
 「日銀の大量の国債買い入れで市場に流通する国債が減ったためだ。9月には国債の大量償還を控えていることなどから国内金融機関の売りは細っており、金利低下につながっている」
 NHKと毎日の説明はほぼ同じように見受けられますが、毎日の説明は少し問題があるようにも思えるのです。というのも、欧州中央銀行が最近になって緩和の姿勢を強めるのではないかとの見方が出てきているのは事実ですが、米国のFRBに関しては、むしろいつ金利引き上げに転じるかが市場の関心事項になっているからです。

 一方、日経は違う説明をしています。長期金利が低下しているのは、異次元の緩和策により市場に出回る国債の量が減っている上に、9月には大量の国債の償還が控えているかだら、と。

 国債が償還されるということは、出回っている国債がキャッシュと引き換えに市場から吸い上げられるということですから、さらに市場に出回る国債が減ってしまうのです。

 つまり、需要に対して供給が限られているので、国債の価格が上がる、イコール国債の利回り(長期金利)が下がるということなのです。

 でも、私がこのようなことを言うと、怪訝な顔をする人がいると思うのです。

 国債の供給が限られているなんて本当なのか、と。何故ならば、政府は毎年度大量の国債の発行を余儀なくされているではないか、と。一体国債の供給が限られているなんてどこの国の話なのか、と。

 全くそのとおり!

 でも、幾ら大量の国債を政府が発行しているとしても、日銀は年間で50兆円(ネットベース)も国債を買い上げているのですから、市場に出回る国債の量が減るのは当然の話なのです。

 では、日銀が幾らでも国債を買い上げるならば、長期金利をコントロールすることが可能なのか?

 恐らくそのような質問をされると、伝統的思考をする日銀のエリートたちは困惑してしまうでしょう。

 というのも、中央銀行というものは、短期金利をコントロールすることはできても、長期金利についてはコントロールすることが不可能であるし、またコントロールしようと思ってはいけないと教わってきたからです。

 つまり、長期金利は実体経済が反映される世界であり、そこに中央銀行が介入することはご法度である、と。

 しかし…

 もうお気づきになっているでしょうが、このルールは内外で破られているのです。つまり、FRBや日銀が長期国債を大量に買い入れる政策を採用したことによって、中央銀行が長期金利をコントロールしようとしたからなのです。

 で、その結果、どうなったのか?

 米国については本日触れませんが、少なくても日本に関しては、日銀が長期金利をコントールすることに成功しているかの如く見えるのです。

 グラフをご覧ください。

 画像を見る

 最近3か月間の長期金利の推移ですが、少しずつ下がり続けているのです。

 ところで、 麻生副総理がこのような現象に関して、今月の15日の閣議後の会見で次のように述べたのをご存知でしょうか。

 「国債がこれだけ大量に発行されれば長期金利は上がると習ったろ? おかしいと思わんか?」

 全くそのとおり。麻生副総理は、鋭い指摘をしているのです。

 では、これから先も長期金利がいつまでもコントロール可能であると言えるのでしょうか?

 その保証は全くありません。それどころか、ある時を境に長期金利が全くコントロール不可能になることも考えられるのです。

 では、何故今長期金利はコントロールされているように見えるのか?

 それは、内外の投資家の日本国債に対する信用が保たれているからなのです。

 いろいろと評判の悪い消費税増税。今年4月に消費税を引き上げた結果、こんなに経済成長率が落ち込んではないか、と。それにも拘わらず、また消費税を引き上げるとはどういうことか、と。

 いいでしょうか?

 確かに、消費税を引き上げれば、その分実質GDPを押し下げられてしまうでしょう。

 しかし、同時に投資家からすれば、日本がそこまで真剣に財政再建を考えているということを知ることができるので、その結果、国債に対する信頼度が増し、価格が上がっている(イコール利回りの低下)のです。

 逆に言えば、仮に消費税の引き上げを渋るような態度を政府が取っていれば、確かにGDPの伸びに悪影響を与えることはなかったし、今後もないとは言えるでしょうが、その分、政府の財政再建に対するいい加減な態度が敬遠され、国債の暴落につながった可能性があるのです。

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