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〈ネットワークづくり編vol.1〉原発事故で目覚めた地元のママたちと共に、「憲法カフェ」でネットワークを拡大。〜神奈川県 太田啓子さん〜

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 グリーン・ウイメンズ・ネットワークとのコラボ企画でお送りする《女性が動けば変わる!》シリーズは、「エネルギー×地域×食と農×女性」をキーワードに、「ジェンダー平等」実現のためのコンテンツをお送りしていきます。具体的には、自然エネルギー、食、農そして子育てなど命の問題に直結する現場などで、女性がリーダーシップをとり、活き活きと取り組んでいる具体的な事例を中心に紹介していく予定です。企画意図についてはこちら。

 若手の弁護士たちが立ち上げたグループ「明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)」による「憲法カフェ」が人気を集めています。ちょっとおしゃれなカフェやワインバー、ときには保育園や公民館で、食事やお茶を楽しみながら、気軽に楽しく憲法を学ぼう、語ろうというこの試み、もともとは「あすわか」メンバーの1人である弁護士・太田啓子さんが、地元の神奈川県湘南エリアで周囲のママ友たちを巻き込みながらスタートさせたものなのだそう。
 「原発事故が起こるまでは、地域とのつながりはほとんどなかったんです」という太田さんですが、自分と同じように小さな子どものいる、放射能の問題に関心を持つ人たちとの出会いをきっかけに、徐々にネットワークが広がっていったといいます。そしてそのネットワークは、放射能の問題にとどまらず、特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認などの問題への関心を広げていく上でも、大きな力になりました。
 「周りのママたちの行動力は、本当にすごいと感じます」と語る太田さんに、詳しくお話を伺いました。

◆原発事故をきっかけに
立ち上がった地域のネットワーク

――「憲法カフェ」が始まったきっかけを教えてください。

 最初のきっかけは、東日本大震災と原発事故の翌年、2012年初めに、地元の放射能汚染に関心のある保護者たちのネットワークの勉強会に行ってみたことなんです。放射能の測定をどうするかとか、西日本産の野菜をどこで売ってるかといった情報交換もしたくって。
 以前は仕事が忙しかったこともあってあまり地域とのつながりはなかったんですが、それを通じて急に地元の友人が増えたんですね。そこで出会った人たちと一緒に、勉強会だけではなくて学校給食に使う食材について市に陳情も出しましたし、その年の12月にあった衆議院選挙のときには、自民党政権になったら間違いなく原発再稼働にまっしぐらだろうということで、放射能のネットワークとは関係なく、脱原発を掲げていた候補者の選挙応援もやったりしました。選挙応援なんてやるのは生まれて初めてという方々ばかりでした、私も含め。でも経験者に教えてもらって、マニュアルも読みこんで、みんな一生懸命やったんです。何かせずにいられなくて。
 結果的には、その候補は選挙区では当選できなかったんですけど…ただ、そうした活動を通じて、それまでは「選挙なんてほとんど行かなかった」という人も多かった周りのママたちが、「これは放射能とか原発のことだけを考えて解決する問題ではない」と、どんどん政治に「目覚めて」いく様子にすごい感銘を受けたんです。それで、私はそのとき、衆院選で自民党が大勝したし、次は絶対に憲法の問題になると思っていたから、選挙お疲れ会兼忘年会の席で「憲法についての勉強会をやらない?」と呼びかけて…それが始まりですね。

――「次は憲法だ」と思われたというのは…。

 2012年の4月に自民党の憲法改正草案が出てきたときから、「なんだこれは」ともやもやした不安を持ってはいたんですね。それが、その12年12月の衆院選で自民党が大勝したことで、「うわ、ほんとに憲法変わる、こういうふうに。とにかくみんなに知らせなきゃ」という気持ちが大きくなった。

――周囲の反応はどうだったのでしょう?

 初めはみんな「きょとん」という感じでしたね。関心がないわけじゃないけど、憲法とか言われると話が大きすぎてちょっと…という。結局、2012年の年末から呼びかけを始めたものの、「やりたい」と言ってくれる人がなかなかいなくて、いっこうにお座敷はかからず(笑)、第1回の「憲法カフェ」が実現したのは次の年の春になってからでした。知り合いの市議の方の紹介で、湘南の脱原発ネットワーク関係の方々に招んでもらったんです。
 参加者は全部で10人くらい、赤ちゃん連れの人も何人も交じっているようなアットホームな場でしたけど、そこから口コミでどんどん広がっていった感じですね。7月の参議院選挙までにできる限り数多くやりたいと思っていたので、当時は依頼があれば基本的にはすべて受けるという感じで、参院選前に集中的に、全部で20回くらいはやったと思います。

◆「憲法カフェ」の企画・広報・宣伝は
周囲の「放射能ママ」たち

――じゃあ、最初は太田さんの個人的な活動だったんですね。

 そうです。私は「あすわか」の立ち上げ後にそこのプロジェクトに加わったんですが、メンバーと仲良くなってきてから、「これ(憲法カフェ)、すごくいいからみんなもやろうよ」という話をして、「あすわか」の企画としても位置づけるようになった。私からの持ち込み企画、みたいな感じですね。

――「すごくいい」というのは、一定の手応えを感じたということですか。

 感じますね。来てくれる人は本当に普通の、これまで政治とかに全然関心がなかったという人がほとんど。私が子どもを保育園に預けている時間帯ということで、どうしても平日の昼間の開催になるので、20~40代くらいの、まだ小さい子どものいるお母さんが圧倒的に多いんですが、その人たちがいろんなことに気づいて、「目覚めて」帰っていくという感じなんです。「聞いただけで終わりにできない」「周りの人に聞かせたい」と、自分の子が通っている幼稚園に掛け合って次の「憲法カフェ」を企画してくれるママがいたり…。個人のお宅で、みんなで料理を持ち寄って開いたこともありますよ。
 放射能の勉強会などを一緒にやっていたママ――私は「放射能ママ」って自分たちのことを言ってるんですけど(笑)――たちも、次々カフェを企画してくれたり、開催できそうなお店を開拓してきたりしてくれています。「あの店、原発国民投票のチラシを置いてあったから、絶対いけるよ!」とか(笑)、「脈あり店」にアンテナ張って開拓をしたり、企画・広報・宣伝を全部やってくれてる感じですね。ほんと、すごいエネルギーのいることだと思うんですが、それを乗り越えてやってくれているので、心強くありがたいです。

――何かの会を立ち上げた、というわけではないんですよね。

 そうです。個人どうしがゆるやかに必要に応じてつながってるという感じで、なんとかの会というような組織を立ち上げたというわけではないです。憲法カフェに参加してくれた人たちなどに呼びかけてメーリングリスト(メーリス)を作って、そこに憲法関連の情報やニュースを流したりしていますが、それだけの、フラットでゆるーいネットワーク。私がメーリスの管理人を務めてはいるけれど、あくまで個人としてのゆるいつながりですね。
 もちろん「組織の良さ」というのもあるとは思うんですけど、「組織づくり」にこだわる必要はないな、とも感じていて。場合によっては組織の維持自体が活動の目的になってしまってそれに縛られて逆に本当にやりたいことができなくなることもあるし…。「リアル友にはなかなか話題にできないけど、本当は話したい」という人が多いのか、メーリス上での情報交換もかなり活発なんですよ。「閣議決定後、いてもたってもいられなくて自民党本部に電話してみたらこんな対応されたんです、ショック」「いやいや、私なんかこんなふうにまで言われましたよ」みたいな「経験交流」とか(笑)。
 「憲法カフェ」もいろんなところから依頼が来るので、都内や神奈川だけではなくて秩父とか、かなり遠いところまで行って話をしたこともあります。裁判だとか弁護士の普通の仕事とのバランスもあるし、大変は大変なんですけど、行くといつも「行ってよかったな」と思うんですよね。私自身も心強い気持ちになるし、「広がってるな」って実感できる。
 私自身は本来、「ママ」をあまりに強調するのは好きじゃないんですけど、子どものいるお母さんたちに「自分のためだけならやらないけど、子どものためなら動く」という、すごいパワーがあるのも事実。私自身が参加者と年齢も近い「ママ」なこともあって火をつけやすいし、そこから周囲に広げていく牽引力、火種になってくれたらいいなという期待もあるんです。ママたちの導火線は短く、火がつきやすいという傾向は体感してますので、まずママに火をつけたい。そして火がついたら、そこで終わらず周りに引火させてほしい。

――本当に口コミで広がってきた活動なんですね。そのエネルギーはどこから来るものなんでしょう?

 特定秘密保護法の成立がきっかけで憲法の問題に関心を持ったという人はやはり多いですね。成立直前には官邸前抗議行動の広がりなどもかなり報道されていたし、「これだけ騒いでる人たちがいるんだからいくらなんでも通るまい」と思っていたのにあっさり通ってしまったことにびっくりした、という。そうやって「何これ!?」という気持ちを巻き起こすという意味でも、デモとか抗議行動って決して無駄じゃないんだと思いますね。
 あと、多分みんな、以前はけっこう素朴に政府を信頼していたんだと思うんです。それなのに原発事故の後、政府は食品の規制値を緩めるわ、十分な放射線量測定もしないわ、十分な科学的根拠も示さず安全安全とか言うわ…なんなのこれ、というので、その信頼感ががらがらと崩れ去って、不信感ばかりが膨らむっていう経験を何度もしてきた。それだけに、「憲法というのは、権力を暴走させないためにあるんだよ」なんていう話をすると、すぐに「あ、そういうことか。『権力』って知ってる、『暴走』ってわかる」とピンと来て、理解できるんじゃないでしょうか。原発事故前ならぽかーんとしていたかもしれないけれど…憲法ってやっぱり根底には、権力に対する健全な懐疑心があると思うから、その点で彼女たちの今の実感にとてもフィットしたんでしょうね。イデオロギーとか「政治に関心を持とう」というお題目ではなくて、「政治に関心を持つのってほんとに必要、だって知っとかないと自分も子どもも守れないじゃん」という、生活に直接根ざした感覚なんだと思います。
 最初こそ「火がつく」のに少々時間は要したけれど、こうして広がってくると、放射能の問題に関心のあるママは、憲法の問題にも自然と興味を持つことが本当に多いと感じますね。

――放射能の問題も、憲法の問題も――特に9条や集団的自衛権の問題は、直接的に「いのちの問題」にかかわることだからかもしれませんね。3・11以降、どの世論調査を見ても女性のほうが男性よりも脱原発を支持し、集団的自衛権についても女性のほうが男性よりも反対している(男性の反対48.4%、女性の反対60.0% :共同通信の全国緊急電話世論調査 7月1日、2日)、という調査結果もあります。

 女性が「非戦的存在」だみたいなことをあまり言いたくない気持ちは私にはありますけどね。基本みんな目の前にいる自分の子どもが大事なわけで、そこからは、子どもを守るための戦争なら肯定みたいな理屈で動く方もいるかもしれないし。でも、それでも、目の前にいる自分の子どもと、よその遠いところにいる子どもをつなげる想像力を持てる方なら、自分にとって大切な存在を守ろうとすることはよその子どもを守ることとイコールだと感じるんじゃないでしょうか。そういう方は決して少なくはないんだという体感はあるので、私は女性に希望を持っています。

――太田さんご自身も、以前からこのような活動をされてきた、というわけではないのですよね?

 ずっと政治に関心はありましたけど、以前はもっと「評論家」然としてたというか「お客さん」のスタンスだったと思います。能動的ではなかった。自民党の憲法改正案は以前から何度も出されていますから、私が働いている弁護士事務所にも「勉強会をやってほしい」という依頼が来て、講師を務めたことは何度かありました。でも、それは「話して終わり」。聞いてくれる人も、もともと憲法や平和の問題に関心のある層ばかりだったし、それに対して「もっと若い人たちを引き込まなきゃ」と自分で動こうとも思わなかった。やっぱり私も「評論家」どまりだったんだと思います。
 その意味では、3・11を経て大きく考え方が変わりましたね。憲法のことを勉強したいと思って弁護士に講師を依頼してくるような方にだけ話していてはダメだ、呼ばれるのを待っていてはダメだ、呼ばれないところにむしろこっちから行かなくちゃと。何かを、誰かを待っていたらダメだ、主体的に能動的に動かないとダメだと突き動かされるようになりました。

◆統一地方選挙に向けて
女性を政治の場に送り込みたい

――今後、やりたい活動などはありますか。

 憲法に関しては、今の路線をもっと強化して、メディアにももっとどんどん取り上げてもらえるようにしたい。例えば読売新聞、産経新聞を購読しているような人たちにも(笑)、「ちょっと一緒に憲法のこと、考えてみませんか? 語りませんか?」って伝えたいですね。考え方が違っても、冷静に、お互いを罵倒するんじゃなくて、意見を尊重しながらお互いに耳を傾け合う、そういう場が足りないと思う。
 あと、今ずっと考えているのは、来年の統一地方選挙に向けて、どうやったらもっと女性議員を議会に送り込めるだろうか、ということですね。

――地方議会における女性議員の割合は、いまだに1割程度ですからね。本来、人口バランスからいえば半数が女性でもいいはずなんですが…。

 そうなんです。だから例えば周囲の「放射能ママ」たちが、どんどん選挙にも出ればいいのになと素朴に思っていて。彼女たち、すごく政治感覚がいいですから。
 ただ、そういう視点で考えてみると、小さい子どもがいるとか、介護を担っているとか、家庭内での責任がある程度重いような人が立候補するのって、現実的にはかなり難しいんですよね。政治家って、他人が働いていないとき――夜とか週末にこそ地元で講演したり有権者に挨拶に回ったりと、動き回らなくちゃいけないから。私自身も冗談混じりかもしれませんが「出たら?」と誘われることはあるし、面白そうだなと思うこともあるんですが、子どもがまだ小さい今の状況ではやっぱり難しい。子どもが保育園に行っている時間帯できっちり仕事が終わるならいいけれど…。知り合いの女性議員も、全面的に自分の母親に手助けしてもらっていると言ってましたね。

――逆に言えば、それができる人でないと、議員として活動するのが難しい。

 もちろん、子育てと両立している議員もいるので、そういう人たちに「どうしてるの?」と聞いてみたいな、と思っているところなんですけど。多分おばあちゃん頼みとか、お金に余裕があってベビーシッターを張りつけられるとか、そういう状況がないと厳しいんじゃないかな。そもそも、議会には一般企業と違って産休や育休もないのが普通だし、先日の都議の「セクハラ野次」事件が問題になったように、すごく「オヤジ」的な価値観が横行している場なんだと思います。結果として、女性議員は子育てが一段落してから、40代50代くらいで立候補する人が多いから、政治家として活動できる期間もすごく短くなっちゃうんですよね。
 男性だって、今の雇用状況の中で会社をやめて立候補するっていうのはすごい勇気がいるでしょうから、ほんとは地方議会レベルは他の仕事と兼職できるような制度をつくらないと、なかなか多様な人が政治に関与できるようにはならないと思うんです。男女比のことも含めて、今の政治の場はあまりに多様性がなさすぎますよね。

――ただ、今の議員は当然、今の制度の中で議員になっているわけだから、なかなか制度を変えるのは難しいかもしれません。

 そうなんですよね。それでも、なんとか少しずつでもとは思いますし、女性候補をどんどん送り出す仕組みを考えたい、と思っています。
 あと、自分が立候補はしなくても、議員に対するロビイングの方法とかを勉強する場がもっとあればいいなあ、と。あるいは、選挙で「いいな」と思う候補を応援するための「はじめてのせんきょ」みたいなセミナーとかもいいですよね。
 私が住んでいる市以外のところで活動している隣接エリアのママたちとも情報交換をよくするんだけど、みんな陳情のやり方についてとか、すごく一生懸命勉強して、自分たちで陳情書を書き上げていましたし、市議さんとどういうふうに話をすればいいかとか真剣に考えてアプローチしています。そういう姿を見ていて、今は子育てなどで家庭にいる女性の中にも、ほんとにすごく社会的な能力の高い人がたくさんいると実感しているんです。そういう女性が責任を持って政治にかかわるだけでも、社会は大きく変わるんじゃないでしょうか。
 周りを見回しても、原発のこと、集団的自衛権のことなど、いろんなことに対して「怒って」いる女性たちは本当に多いです。そんな女性たちが集まって、自由に話し合える「怒れる大女子会」を開きたいね、と知人たちと言っているところなんですよ(笑)。草の根が基本で大事だけど、たまにどかんと花火を打ち上げて大きな牽引力を生みたいな、とか。何人かの女性論客でトークセッションみたいにして、参加者ともなるべく双方向にして…とか。場を与えられたら、しゃべりたくて仕方ない「女子たち」ってきっといっぱいいると思うんです。こんな場が欲しいな、というようなご意見があったらぜひ参考にしたいので聞かせてほしいですね!

太田啓子(おおた・けいこ)弁護士。2002年に弁護士登録(横浜弁護士会)。解釈改憲による集団的自衛権行使容認に強い危機感を持ち、カジュアルな雰囲気で憲法を学べる学習会「憲法カフェ」を、地元の仲間とともに企画・開催してきた。「明日の自由を守る若手弁護士の会」のメンバーでもある。二児の母親。

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