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- 2014年08月27日 08:30
「赤字って本当にいけないことですか?」東京糸井重里事務所 篠田CFO×サイボウズ 山田副社長対談
2/2税金を払わない会社が良い会社!?
画像を見るそういう意味で、僕の仕事は「指標化」なのかなと思っているんです。会計の数字は1つの指標だけれども、それだけじゃない。サイボウズなりの指標を確立して、私たちはこれにこだわりますと世に打ち出す。それが気に入ったら投資してもらえばいい。画像を見るなるほど。
画像を見る例えば最近、「税金の支払額を小さくするのが良い経営者」みたいな論調もありますよね。タックスヘイブンに会社をつくり、税金を払わなくすることが、株主利益にかない、ひいては経営者としての高い評価にもつながる、みたいな。「おかしいやろ!」と思いますよ。世の中のために税金を払っているのに、なんでそれがバカだと言われるのか。
画像を見るわかります、それ。
画像を見るそういう偏った指標がイヤなんですよ。トータルで税金をいくら払ったのかを国が公表して、「これだけ世の中に貢献してくれています」と表彰するべきなのではと思いますもん。株価だけでなく支払った税額も指標にすれば、「もっと税金を払おう」と頑張る会社も出てくるのではないかと。
画像を見る糸井重里事務所には、「気仙沼ニッティング」という関連会社があります。気仙沼で、世界に通用するハイエンドの手編みニットをつくろうという事業です。それが初年度から黒字になり、法人税を払うことになったんです。それを編み手の方々に報告したら、「これで私たちも肩で風を切って街を歩けます」と喜び、ものすごく誇りを感じてくれました。ああ、これが仕事の原点だなと感激したんです。だから山田さんのおっしゃることには非常に共感します。
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気仙沼ニッティングでの納税報告の様子(Facebookページより)
画像を見る素晴らしい話ですね。もちろん指標として評価してほしいのは納税額だけではありません。雇用している社員の数だって指標になる。必死になって雇用を守ろうとして赤字ギリギリで頑張っている会社が、社員のクビをバンバン切ってリストラをしている会社より低く見られて「何をやってるんだ!」みたいに言われるのは納得いかないですよ。また、もちろんサイボウズには「世の中のチームワークをより良くする」という目標があります。チームワークをどれだけ広げられたか、ということも1つの指標になり得ると思いますね。
画像を見るチームワークを世の中に広げているサイボウズは素晴らしい、だから株を買おう、となるといいですね。バランスシートに載っていない部分も含めて、世の中に対して生み出しているトータルの価値を株主や多くの投資家も評価して、「サイボウズの株式を持っていることがうれしい」となったら、外部株主も含めた全てのステークホルダーの利益がつながるのではないかと思います。
会社にとって「上場」は本当によいこと?
画像を見る実際に今、「サイボウズの想いに賛同して株を買っている」という株主は多いんですか?画像を見る多いと思います。ウチの株主総会では、あまりいろいろと文句をおっしゃる方はおらず。ほとんど「ファンの集い」みたいになっていますから。
株主の方々は当然、株価が上がることを期待していると思いますが、僕らは常々「株価上昇より配当」ということは言っていて。それはそれで株主に対する責任を果たすことになると思っています。「サイボウズの株価が上昇したから10億円儲かったよ、ありがとう」みたいにはならなくてもいいのかなと。
今、サイボウズの時価総額は200億円ほどですが、僕らはそれをより大きくしていかなくてはならないとは考えていないんです。逆に、株価が上がると、買ってくださる方々の期待に応えるためにもっと上げなくてはいけないのかも、という責任が出てきてしまう。そこが怖いんですよね。
画像を見るそうなると、サイボウズさんにとって上場している意味はどこにあるのでしょうか?
画像を見る正直、資金調達という意味ではほとんどないです。ただし、上場してみてからわかったんですが、上場会社が非上場会社に戻るのって難しいんですよ。本気でそうしようと思ったら、200億円調達しないといけませんから。そんなこと、上場する時には誰も教えてくれないんですよね。「上場しましょう。凄いことになりますよ!」と言うばかりで(笑)
逆に糸井重里事務所さんは、上場は考えていないんですか?
画像を見る実は、考えています。5年半前に私が入社する前から、糸井は上場したいと言っていました。私は当初はあまり意味がないんじゃないですか? と言っていたのですが、今はそこに向けて頑張ろうと思っています。
画像を見るそうなんですね。どういう理由からですか?
画像を見るひとつは、糸井にとって「東京糸井重里事務所」や「ほぼ日刊イトイ新聞」の事業は、提供価値、ものの考え方、チームのあり方を含めてひとつの大きなクリエイティブ活動なんですよね。それを世に問いたいという思いがあるからです。
もうひとつは広い意味での事業承継。弊社は、糸井重里というもともとかなり社会的信用がある人がつくった会社で、その信用を前提にして事業を育ててきました。では、糸井がいなくなった後どうなるのだろうか。糸井は、自分がいなくなったらこの事業は終わり、としたくないし、単なる著作権管理会社にもしたくない。糸井がいなくなってもそのときまでに、会社として社会に信用されている状況にしなくては、と思うと、今の私には株式上場という手法しか思いつかないんです。
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画像を見るまあ、今はまだ"上場していること自体凄い"という言葉の信用力がありますからね。ただ、最近はシステムにより、ほぼタダに近いコストでパブリックにアクセスできるので、そうしたものを使ってお金を調達している非上場企業がたくさんあります。
僕は楽天やAmazonで株を売ってもいいと思っているんですよ。それこそ『ほぼ日』のホームページで売ってもいいですし。東証の言うとおりにしてお墨付きをもらうより、自分たちで責任を持って情報を開示し、審査も行い、ホームページで販売するという形にしたほうがわかりやすいかもしれませんよね。
もしくは、株券をとにかく細切れにして、株主をとことん増やしてインフラとしてパブリックな会社になるか。どちらかに覚悟を決めないとやりにくいと思います。
画像を見る面白いですね。私たちが上場で成し遂げたいのは後者の「パブリックになる」ほうに近いと思います。「世の中にあったら面白い会社」として、存在価値を認められ続けたい。今、そこは糸井個人のイメージに負うところが大きいのですが、それがなくなった際に別のシグナルを持たなくてはなりません。パブリックになることで、世間が「ほぼ日」を認知しているという形になればと思います。
画像を見るなるほど。
画像を見るこのところ私の中で、現在当たり前とされている市場の仕組みが、50年前の会社のイメージでできているんじゃないか、新しい会社には合ってないんじゃないか、という思いがありました。今日、山田さんとお話してみて、やはりそうなんだな、と確認できた気持ちです。ありがとうございました。
画像を見るこちらこそ、金融から事業会社という同じような道を歩んできて、長期で経営を考えようとする方とお目にかかる機会があまりなかったので、篠田さんとお話できたのは貴重な機会でした。その中で新たに気づくこともあったし、共感していただけて自信になった部分もありました。またぜひお話しましょう!
画像を見る喜んで。
写真撮影:橋本直己 執筆:荒濱一



