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稲沢市議の覚せい剤事件、中国広東省で公判開始

中国から覚せい剤約3キロを日本に密輸しようとしたとして、広東省の地方空国で逮捕された稲沢市議の公判が、広州市の裁判所で開始されました。8月26日、27日の両日で結審する予定とのことです。

<ニュースから>*****
稲沢市議、「罪を認めません」 中国広州、覚せい剤事件初公判
中国広東省広州市で、麻薬運搬の罪に問われた愛知県稲沢市議の桜木琢磨被告(70)の初公判が26日、広州市の中級人民法院(地裁)で開かれた。桜木被告は罪状認否で「罪を認めません」と無罪を主張した。
公判は27日までの2日間で結審する予定。判決は早ければ3カ月以内に言い渡される。中国の刑法では50グラム以上の覚せい剤運搬の最高刑は死刑で、桜木被告は約3・3キロを運搬したとして起訴されており、検察側は厳しい刑を求める方針(以下省略)。
産経ニュース2014.8.26 15:01
*****

近くて遠い国・・・、私にとって中国の刑事司法制度は、欧米よりはるかに縁遠く感じられます。とりわけ、薬物犯罪に関しては、中国特有の極めて厳しい政策がとられていることから、その特殊性ばかりが気になっていました。
たしかに、薬物を密輸、販売、運搬、製造する罪について最高刑を死刑と定め、かなりの高頻度で死刑判決が言い渡され、執行されている点では、中国の刑事裁判は世界でも特殊なものだということができます。しかも、死刑執行に関する情報を国家機密として一切公表しない姿勢や、犯罪捜査についてまわる秘密主義などもあいまって、中国の刑事司法制度全体がいかにも時代遅れのものに感じられがちです。
でも、改めて考えてみると、中国の刑事司法の全てが特殊というわけでもありません。

中華人民共和国の刑事訴訟法が大幅に改正され、昨年から施行されています。今回の改正の原動力になったのは、人権の尊重を正面に掲げる法学者や弁護士などのグループによる建議案だったと伝えられているように、人権の尊重、手続きの透明性などの点で国際標準に近づいた内容になっています。

この刑事訴訟法を読んでみると、わが国で行われている刑事手続きと、それほど大きな違いを感じません。逮捕・勾留から公訴提起までの期限が長かったり、2審制(死刑判決を言い渡された事件では上級裁判所による執行確認手続きがあるので、実質的に3審制に近い)であるなど、いくつか相違点もありますが、大筋では日本で行われている刑事手続きとほぼ同じような内容です。
また、日本ではまだ実現していないものや、ようやく近年になって導入された制度が、中国の刑訴法ではすでに整備されている事項もあります。
たとえば、日本でいま議論が集中している捜査段階での録音録画に関して、中国の刑訴法はすでに、死刑または無期懲役を科す可能性のある事件では、取り調べの全過程を録音または録画しなければならないと規定しており(121条)、日本の一歩先を行っています。
また、死刑又は無期懲役を科せられる可能性のある事件では、被疑者が弁護人を依頼していないときは、国選弁護人をつけなければならないとされています(34条3項)。日本では、被疑者段階での国選弁護人制度は長年にわたり懸案となっていた末、2006年にようやく一部が実現したものです。

さて、桜木氏の公判は、中級人民法院で、裁判官3人又は裁判官と陪審員の合計3人による合議体で審理され、通訳人もついているはずです。公判は、日本で行われる公判とほぼ同じように、■冒頭手続 →■証拠調べ →■弁論手続 →■最終陳述 →■判決 といった流れで進行することになっています。
おそらく、検察官による犯罪立証の手法も、裁判官による認定の方法も、日本で行われている裁判とそう違わないことでしょう。

しかし、法で規定された制度と、現実の運用には、温度差もあることでしょう。そういえば、広州市中級人民法院は、日本メディア10社以上の傍聴を認めるとしていたが、25日夜、「傍聴席がない」との理由で大半の社の許可を取り消した、と報道されています(毎日jp・毎日新聞 2014年08月26日)。裁判の公開を打ち出しているタテマエの裏側に、やはり秘密主義の本音が潜んでいるのでしょうか。

今回の公判を通じて、改正刑事訴訟法が掲げる、人権を尊重した国際標準手続がどこまで実現しているのか、中国の刑事裁判の現状を垣間見ることができそうです。日本の裁判と比べて、どこまで同じで、どの程度違うのか、しっかり見定めたうえで、薬物事犯に対して死刑判決で臨むという中国の政策について、さらに考えていきたいと思います。

[参照]
中華人民共和国 刑事訴訟法
(法務省による日本語資料)
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20130101_2.pdf

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