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企業が働かせたがっている人

「本分」と思われているかどうか、というのは割と重要なのだと思います。それが「本分」だと考えられていれば「やって当たり前(できて当たり前)」のこととして扱われる一方で、逆に「本分」ではないと思われていると「わざわざ手助けしてくれるなんて感謝しなきゃ」みたいに受け止められるものなのではないでしょうか。典型的な例は「普通の」公務員と自衛隊の場合ですかね。例えば災害対応など、公務員が住民のために働いても当たり前のこととして扱われるのに対し、自衛隊はどこでも感謝感激雨あられです。

参考、ハラヘリヘリハラ

 この辺、少し前に取り上げた「家事ハラ」云々も似たようなところがあって、家事が「本分」であると周りからも思われている側の人は、いかに家事をこなそうと感謝されることなどないわけです。一方で、家事が「本分ではない」と考えている/考えられている側には、自衛隊よろしく「手を貸しているのだからもっと感謝されるべき」みたいな認識があるのではないでしょうか。ここで「働きぶり」にダメ出しされようものなら、即座にそれが不当な非難であるかのように受け止められると言えます。

 家事に関しては概ね男性側に「手伝ってやっている」的な感覚が根強い反面、「稼ぎ」という面ではどうでしょう。あくまで補助的なレベルの家事参加で「やったつもり」になってしまう男性も多い一方、同様に補助的な働き方に満足している女性も多いように思われます。なんだかんだ言って非正規雇用であることを自ら望む人も頭数としては少なくなくて、経済系の論者ほどその手の声を大きく取り上げたがったりもするものですが、夫の稼ぎの「補助」的な収入で満足する人の声を強調するのは賢明と言えるのかどうか……

「本当は働きたい」願望に火をつける(東洋経済)

「ハローワークに求人を出したが、さっぱり音さたがない」「前任者が辞めて以来、1年以上空席のままだ」……。多くの企業が人手不足に頭を悩ます中、中小・ベンチャー企業の人材採用は特に深刻な状況である。そこで今、新しい労働力として注目を集めているのが、眠れる優秀人材、”主婦”だ。

(中略)

一般常識もビジネスマナーも心得た優秀な人材を低コストで雇用できることを掲げ、ビースタイルは企業の主婦向け業務を開拓してきた。

(中略)

フルタイム派遣2人を入れていたころより、コストは15~20%減。

(中略)

12年からは、よりハイスキルの主婦向けの派遣事業「しゅふJOBエグゼクティブ」を開始。年収500万~1000万円以上クラスの管理職、専門職の実績がある主婦を、パートタイムで派遣するものだ。現在、米国公認会計士の資格を持つ経理スペシャリストや、経営企画部門でIPO(新規株式公開)をリードした経験のある女性、海外MBA(経営学修士)を持ち営業企画のキャリアを積んできた女性など、幅広い職種のプロフェッショナルが、約500人登録されている。日数や時間にもよるが、企業はこうした即戦力となる人材を、月額20万円前後で活用することができる。

 他のニュース記事を見ても「主婦」を労働力として活用しようと、そういう取り組みを進めている企業は非常に多いことが分かります。内閣も「女性の活用」云々を掲げてはいるところですが、その辺とのシナジーはどうなのでしょうか。真ん中の部分は色々と略しましたが、この東洋経済が持ち上げている類の主婦の活用は「低コスト」であることがポイントのようです。「しゅふJOBエグゼクティブ」なんて恥ずかしい名前の事業もあるようで、随分と輝かしいキャリアを持った人が派遣登録されているとのことですけれど、結局は「月額20万円前後で活用することができる」と。企業側の費用負担が月20万なら働く人の取り分は額面でも14万が相場です、これじゃ暮らせませんよね、旦那の稼ぎがなくちゃ。

 少しだけ景気が上向いて、非正規雇用に限れば今までのような超・買い手市場ではなくなってきている、どんな薄給でも重労働を強いられる環境ではなくなりつつあります。そうは言っても、人件費を抑制することで利益を確保して内部留保を積み上げるのが日本的経営です。何とかして「安い労働力」を調達したいというニーズは根強い、そこで政財界が考え出した結論の一つが「外国人労働者の受け入れ」と言えます。そしてもう一つの鉱脈として目を付けられているのが、この女性の活用に名を借りた主婦の――家計補助的な働き方に満足する主婦の――活用なのではないでしょうか。

参考、生活のために働く人のために

 女性でも、自分の生活のために働く人と、あくまで稼ぎのメインは夫で自分は補助的な働き方に甘んじる人がいるわけです。企業はとにかく、安い労働力が欲しい。しかし自分の生活のために働く人は、当然ながら給与の高低を見てくるものです。一方で夫に一定の収入がある主婦の場合、その辺の敷居が低いと言いますか、単独では暮らしていけないレベルの給与、旦那がその程度であったら結婚などしなかったであろうレベルの給与でも、取り立てて不満を持たずに働く人が多いのではないでしょうか。だから今、目を付けられているのかも知れません。

 女性の活躍云々と看板には掲げつつ、その実は主婦を薄給で働かせているだけ、こうした傾向が強まるのなら、むしろ将来的には男女間の格差は広がりこそすれ縮小されることはない、国際的に見ても日本は今以上に男女格差の多きな国として不名誉な方向で目立つことにもなりそうに思えてきます。働く女性が増えると言っても、それは必ずしも男女の平等を意味するものではありません。家計補助的な働き方に満足する主婦を安価な労働力として活用する、そういうのが主流になってしまえば、人件費を抑えて利益を確保する日本のデフレ志向経営も変わらない、経済発展にも繋がらないとすら言えます。

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