- 2014年08月26日 15:16
忍者が配達するクリーニングサービス「Washio」
仕事から疲れて帰ったとき、かご一杯に入っている汚れた洗濯物は厄介なものである。一人暮らしをやっていて、これほどテンションが下がるものはない。これを全て洗濯するのも大変だし、かといってクリーニングに出すのも意外と手間が掛かる。
人間が生活している以上、汚れた衣服を清潔にする作業から逃れることはできない。洗濯物の悩みから解放されたいと思う気持ちを抱いたことのある人は多いだろう。
小さなアパートでも洗濯機置き場がある日本と違い、米国ではランドリーの利用が一般的で、市場規模もとても大きい。米国のドライクリーニングマーケットは150億ドル(約1兆5000億円)市場といわれる。
そこで今回は、煩雑だったクリーニングの申し込みをアプリで簡単に受け付けてくれる「Washio」をご紹介しよう。その手軽さとNinjaと呼ばれるデリバリースタッフの対応の良さで、評判を得ているサービスだ。
2013年にロサンゼルスでロンチすると、同年280万ドル(約2億8000万円)の資金調達に成功し、翌2014年にはサンフランシスコとワシントンD.C.にもサービスを展開。現在ビジネスはロンチ当初の50倍にも成長している。
引き取りと受け取りの日時を指定するだけでクリーニングを行ってくれるサービス
Washioは洗濯やクリーニングを行って欲しい時に、スマートフォン上で引き取り日時と配達日時を入力するだけで、クリーニングに関する全ての作業を行ってくれるサービスだ。
現在はiOSとAndroidにて利用可能。利用者はそれぞれの対応アプリを入手後、氏名や住所、クレジットカード情報などを入力しておく。
洗濯物がたまったら、受け取りに来て欲しい日時と、クリーニングした品の配達日時を指定する。操作はコレで終わりだ。流石、ランドリーに行くのすら面倒くさい顧客に向けたサービスだけあってシンプルだ。
時間指定の他に補足用のメモ欄も用意されているので、水洗いをしてほしいなど特別な注文がある際は、そこで伝えるとよい。
指定された時間になったらNinjaと呼ばれるスタッフが家を訪問し、洗濯物を預かってくれる。何度も使える黒いプラスチック製の大きなバッグを携帯しているため、入れ物は不要だ。
洗濯物の進行度や予定の受け取り日時は、常時アプリ上で確認することができる。クリーニングが終了して受け取り可能になるのは最短で24時間後と、進行がスピーディーなことも売りのひとつだ。
配達が終わった後、料金がクレジットカードに自動的に請求される。クリーニング料金の確認はアプリ上でも可能だ。なお、現在のところ支払い方法はクレジットカードしか選べないようだ。
ちなみに同サービスの価格は、ランドリー1パウンド(約453グラム)で、1ドル60セント(約160円)。ワイシャツの洗濯、アイロンが1枚2ドル75セント(275円)。有機溶剤で洗うドライクリーニングはブラウス1枚6ドル(約600円)。セーター1枚8ドル(約800円)と、一般的なクリーニングサービスとそう変わらない。
オーダーが可能なのは20ドルからで、35ドル以上だとデリバリーが無料。それ以下の注文には3ドル99セント(約400円)のデリバリー料が必要だ。ちなみに注文の際にはクッキーのプレゼントもあるという。
また、クローゼットの中に埋もれているもう着ない服は、そのまま寄付をすることができる。Washioでは、洗濯物と一緒に預かって、洗濯してから寄付するサービスも行っている。クリーニングを依頼するときについでに頼めば料金は無料となる。
Washioのサービスでは、洗濯物の受け取りと引き渡しを行うNinjaスタッフが重要な役目を全部果たしている。彼らは時給20ドルで働くパートタイマーで、学生、ヨガ教師、ミュージシャン、俳優、TVプロデューサー、作家、スノーボーダー、ゴルフプレーヤーなど、職を持つ若者たちが副業として行っているという。
採用の条件は自分の車を持っていることで、洗濯物の受け取りや引き渡しにはそれぞれの自家用車を用いている。仕事内容はかなりハードだが、調べた限りでは皆熱心で評判が良いらしい。
その背景には、時給20ドル(約2000円)という好待遇がある。これは最低賃金の約2倍で、米国でもかなり良い部類だという。
Washioのビジネスモデルは薄利多売で、スタッフの給料も高め。同サイトがそのようなシステムでもやっていけるのは、デリバリー業務をスタッフの車でまかなっている他、洗濯や乾燥は自分たちで行わず、専門業者にアウトソーシングしているためだ。
コストカットを徹底することで、スタッフの給料を維持するとともに価格に反映し、低価格をブランドイメージとして定着させることに成功している。
スマートフォンのボタンを押すだけで従業員が駆けつけるUberに刺激を受けた
Washioの創設者兼CEOは、ロス生まれのロス育ちである、Jordan Metzner(以下メツナー)氏。同氏は自分で洗濯をするのも、クリーニング店を使うのも大嫌いだったという。そうしたものぐさな性分がサービスのヒントになった。
洗濯はどんなに貧しかろうが、どんなにお金持ちだろうが、家政婦でもいない限り生きていれば避けることのできない作業だ。しかし、そうした需要の多いビジネスであるにも関わらず、ランドリーを扱う会社は古いやり方を通しているところが多い。そこでメツナーは、スマートフォンで予約できるサービスを行ってはと考えたのだ。
"UberやTaskRabbitのような会社が成功するのを見て、このやり方ならランドリーにもチャンスはあるんじゃないかと思った。スマートフォンのボタンを押すだけで車に乗った従業員が駆けつけるUberに、大いに刺激を受けたんだよ"
- メツナー氏
メツナー氏はこのアイディアをもとにビジネスをロンチし、エンジニアをシリコンバレーから募った。
俳優のアシュトン・カッチャーやジャスティン・ビーバーのマネージャーのScooter Braun氏ら強力な投資家らにも支えられ、1年後にはサンフランシスコとワシントンD.C.にもビジネスを拡大。サービスが好評であることから、2015年までに10の主要都市に事業を展開していく予定だ。
なお、メツナー氏は地元のクリーニング店を競合とは見なしておらず、もっぱらクリーニングに手軽さを求めている「新しい顧客」をターゲットとしている。
地元のクリーニング店を利用する人たちは、顧客と店との信頼関係で成り立っており、「お気に入りのクリーニング店」を持っている人も数多い。そうした人たちが敢えて利便性が売りの同アプリを使おうとはしない、というのが同氏の考えだ。
タクシー業界との軋轢も囁かれるUberとちがい、新しい利用者層を発掘することで地元クリーニング店と共存できる点も、同サービスの魅力のひとつかも知れない。
現場に学ぶ。
Washioは150億ドル市場といわれるドライクリーニング市場に目をつけ、コストカットを徹底することで低価格を実現した。そのサイトのしくみを見てみると、堅実で良心的な商売をつづけているという印象だ。
また、ハリウッドセレブが利用して話題を呼んでいるロサンゼルスという土地柄も、このビジネスを成長させている要因のひとつとなっている。
しかし、それだけではWashioが成功の途を歩んでいる理由としては不十分だろう。
ロンチ当初は、メツナー氏自らNinjaの仕事もこなしていたという。薄利にもかかわらずNinjaに時給20ドルを支払い続けるのも、彼らのハードワークを身をもって心得ているメツナー氏のバックグラウンドによるものだろう。僕はこれが大きな成功の要因ではないかと思っている。
現場に身をおいて、現場の気持ちを知ることで、あるべき待遇や最適な人材像を描いたメツナー氏。現場と同じ環境でハードに働いた経験は、これからの成功のヒントとなることは間違いないだろう。



