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アイス・バケット・チャレンジの前から佐賀県がやってきたこと

ALS患者支援のための「アイス・バケット・チャレンジ」が広がりを見せている。
ALSとは筋萎縮性側索硬化症という難病。この難病についての理解を広げ、寄付を集めようと始まったのがアイス・バケット・チャレンジ。

先にチャレンジした人から指名を受けたら、24時間以内に、100ドルALS協会に寄付をするか、氷水を頭からかぶるか、あるいはその両方を行わなければならない。そして次にこれを行う人を2人から3人指名するというものだ。もちろん、これは強制ではなく、どちらも行わないという選択肢もある。
Facebookや新聞などでも取り上げられている。
我が国ではトヨタ自動車の豊田社長やソフトバンクの孫社長、海外ではイタリアの首相なども参加、もちろん寄付もされたのだろうが、氷水をかぶっておられた。

ALSは、わが国のには約9,000人、佐賀県内には約60人の患者さんがおられる。
僕がこの病気のことを知ったのは2009年のことだ。佐賀県内にお住まいの一人のALS患者さん(Aさん)からの一通のメールが僕のところに届いた。
それまでは重症ALS患者が、家族の負担を軽くするための短期入院をした場合、その世話をしてもらうために介護保険のヘルパーを派遣してほしいと思っても、それはできない、というのが厚生労働省の方針だった。要するに短期であっても介護と医療は別物、介護保険は病院の敷居をまたがない、という考え方からだった。

重症のALS患者さんであるAさんは日ごろは家族やヘルパーさんに介護をお願いされているのだが、深夜、たんの吸引のため介護している人が3~4回起きなければいけない。そこでAさんは介護家族を支えるために病院への短期入院、いわゆる「レスパイトケア」を利用した。ところが介護保険は病院の敷居をまたがず、というルールがある。病院の中だとすべて医療の世界でやらなければならない。介護保険の適用がないのだ。なのでAさんのことをよく知っておられるヘルパーさんには来てもらえない。ところが病院のスタッフはAさんに慣れていない。病院の食事も口からでは無理と判断されてしまった。結局Aさんは病院にいる一週間、栄養は点滴で取らざるをえなかった。

「短期入院中もヘルパーの利用を認めてほしい」。そのときの経験からAさんが僕あてにメールを書かれたのももっともだろう。しかも、Aさんは手でメールは書けない。わずかに動く足の指を使って書いたメールが僕のところに届いたのだった。

これはおかしい、なんとかしよう。そう思って厚生労働省に掛け合うがいい返事はいただけない。
そこで最後の手に出た。「全国的な制度、ということになればいろんな検討が必要でしょうが、佐賀県だけ認めていただけないか。構造改革特区として。」と提案してみたのだ。
結果はうまく行った。数か月後、厚生労働省からこういう回答が来た。「この件については、佐賀県だけ、の対応ではなく、提案の趣旨を全国的に制度化します」。

いまもレスパイトを使っておられる人たちは多い。そしてそのときにほとんどの患者さんが日ごろお世話になっているヘルパーさんに病院内であっても口から食事を摂ったり、たんの吸引をしていただいたりしている。
佐賀県からの提案が少しでもALS患者さんたちのために役に立ったと思うととてもうれしい。

大事なことは2009年にこのメールが来たとき、それをそのままにせずこれは問題だと解決に向けて佐賀県として取り組んだ、ということだと思う。僕らはこれからもこうしたことをやっていきたいと思う。
ただ今回のアイス・バケット・チャレンジについては(僕にはまだオファーが来ていないが)、仮に話があれば以下の二つの理由でお断りしたいと思う。

1つ目は公職選挙法上の理由だ。佐賀県内には今回の寄付の受け入れ先である日本ALS協会の佐賀県支部がある。
もし僕が日本ALS協会に寄付をしたら、それは佐賀県内の人に政治家個人として寄付をしたということで公職選挙法199条の2に定める違法な寄付ということになってしまう。さらに言えば、政治家に寄付を求めることも違法だ。なのでまず、寄付はできないのだ。
なぜこんな決まりがあるのかといえば、政治にお金がかからないようにするために、政治家が選挙区内の人、これには個人も法人も含まれるのだが、に寄付することができないことになっているのだ。

2つ目は、寄付ができないのだとしたら、氷水をかぶることの意味は、ALSについての理解促進ということなのだろうが、これについてはもうすでに今回の目的は達成したと言えるのではないか、という理由だ。これだけ話題になっているのだから。

佐賀県には佐賀県難病相談・支援センターがある。そこで対応していただいている難病はこのALSを含め数百疾患(原因不明、病名不明のものも多い)あるが、そのうち、国や県が支援の対象としているものはわずか130にすぎない。
しかも県や市町村が行っている難病対策に対する国の予算措置が十分でなく、例えば、本来であれば5割補助でなければならない医療費助成が実際には3割程度に止まっている。
国でもこのことを問題として、先の国会で「難病の患者に対する医療等に関する法律」を制定して新たな難病支援の枠組を整えたもののまだまだ十分ではない。
また、難病になった方々の生活支援だけでなく、就労の支援というのも大きな課題だ。難病患者はただ難病というだけでは障害者手帳がもらえない。なので企業としても障害者雇用率にカウントができないので、採用や雇用の継続に二の足を踏んでいるところが少なくないのだ。

難病については、こうしたさまざまな問題が存在していることをこれを機会に多くの皆様方に知っていただければと思う。

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