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バケツ・チャレンジのゆくえ〜サクッと終わりますのでご心配なく

facebookのCEO、M.ザッカーバーグが、氷水の入ったバケツを被るビデオを公開したことでアッと言う間にブレイクし、日本にまで波及している寄付チャリティーALC Ice Bucket Challengeだが、これに危惧を覚える御仁が結構おられる。しかしこれ、な~んにも心配することはありません。今回はこのチャレンジに危惧を覚える方々を安心させるために、この運動の盛り上がりと終焉のプロセスについてのシナリオを考えてみましょう。ちなみに始めに答えを言っておけば、サクッと始まり、サクッと終わります。

断れない?

その危惧のポイントは二つ。一つは「断れないのでは?」という懸念。

このチャリティーイベントは100ドルを寄付するか、10ドル+氷水を被るかの選択があるのだが、これに加えて、次にこのイベントに参加する人間3名を指名するというルールがある(強制力は無い)。で、セレブがセレブを紹介するというかたちで展開しているが、ビデオを通じて参加者を指名すれば、その映像自体が広く一般に認知されるので、指名を受けた側は断れなくなる可能性がある。社会学的には「沈黙の螺旋」という無言の圧力に従わされるGがかかることになる恐れがあるのだ。だって、断ったら「あいつ、ケチな野郎だ」ってなことになりかねないからだ。でも、これはヤバいんじゃないか(まあ、これを平気で断る人間がいるとするなら故S.ジョブズくらいだろう。ジョブズは一切チャリティーに協力しなかったことで有名だ)。

しかし、これは杞憂に過ぎないだろう。というか、こういうセレブ間での指名なんてのは、まず事前に打診があって、それでオッケーが出て初めて指名が行われるという「大人の事情」を読んだ展開があるに決まっているからだ。ベタに断ったときのインパクトを考えずに指名するなんてのは、全くもって業界のマナーを理解していないとんでもないヤツになるということになるわけで(ビジネスだったら、その関係さえ断たれかねない)。つまり「お約束に基づいた祭り」。だから、セレブ間でやられている限りには、この圧力自体が発生する可能性はほとんどないと見た方が妥当だろう。問題は、これが一般市民層にまで浸透した時どうなるかなのだが、実はこれも後述するが、結果としては、おおむね問題はない。大丈夫なのだ(流行りすぎて死亡事故まで発生しているが、これは「必要経費」の部類だろう)。

「不幸の手紙」と同じ?

二つ目はこれが「チェーンメール、いわゆるマルチ商法のメカニズムとまったく同じでアブナイのでは?」という懸念だ。問題とされるのは「3名指名」というルールで、これだとねずみ算式にやらなければならない人がどんどん増えていく。単純に考えれば、17回指名すれば日本人の人口に達してしまうという計算だ。いわゆる「不幸の手紙」で、これまたヤバいんじゃないのか?というわけだ。

しかしながら、これまた決してそういうことにはならない。なぜって?この増殖は別の要因によって終息してしまうからだ。で、この終息原因を一言でまとめてしまえば「費用対効果」の消滅ということになる。具体的にはその要因は二つ。

波紋は広がるにつれ、どんどん小さくなる

バケツチャレンジ。セレブ間でやっているうちは順調に三倍で増加していくが、そう遠くないうちにこの増殖は止まる。今はザッカーバーグ、ビルゲイツ、スピルバーグ、山中伸弥、孫正義、堀江貴文なんて超ビッグなセレブが氷水を被っているが、この人間たちが指名する人間はだんだんと小物になっていく。そしてその小物は最終的には一般人を指名するようになる。そうすると、これは単なる「身内ネタ」のレベルにまで下がってくる。こうなるとやってもあまり面白くないし、メディア的露出もどんどん無くなってしまう。そうともなれば、今度は指名されても容易に断ることが出来るようになる(まあ、しばしば一般人の場合、セレブのそれとは異なり「大人の事情」が読めない人間が登場するので、揉めごとになったりするのだが)。で、結局、誰もやらなくなる。そう、波紋のように広がるにつれ、その波の勢いはどんどん小さくなっていき、最終的にその力は拡散して吸収されてしまうのだ。

メディアは儲からなくなれば持ち上げることをやめる

もう一つは、これがビデオを介してブームになっていることによる。YouTubeなどで一般人が見たい氷水かぶりはセレブに限られる。で、その時点ではマスメディアはネタになるので一生懸命取り上げるだろう。だが、小物になってしまったらもはや見向きもしないだろう。だから、やればやるほどメディアによるこのチャレンジについての露出は減っていき(一部の素人がセレブを真似てYouTubeにアップするなんてことが起こるだろうが、よっぽど面白い物でも作らない限り、おそらくほとんどの人間に無視されるだろう)、やがてこのイベント事態が収束していくのだ。まあ、ネタとしてもすぐに飽きられる運命なのだけれど。ちなみに、これはネット経由なので揮発性がきわめて高い。つまりアッという間に流行し、アッと言う間に終わる。9月末には、おそらく、もう誰も話題にしていないだろう。寒いしね!(笑)

そして、みんな幸せになりましたとさ?

で、これでいいのだと思う。こうやって一巡することでALS支援団体?は所期の目的、つまり寄付金集めを達成することが出来るし、セレブもまたイメージアップを図ることが出来る。またザッカーバーグや孫正義のような企業人ならば自らが指揮を執るカンパニーのイメージアップと営業利益にも繋げることができるわけで、めでたし、めでたしなのだ(もっともこのチャレンジばかりがもてはやされて「結局、ALSっていったい?」、つまり最終的にALSがなんだかわからないというオチがつくが……。とはいうものの、認知されるためには先ず名前が知られることが重要なので、そういった意味では十分に恩恵がある)。

そうやって、グルっと一巡していくことで、参加した人間たちは一様に利益を獲得することになる。ちなみに、いちばん獲得が少ないのは、実は素人だろう。彼らがこのチャリティーから得られるのは、要するに「ネタ」、つまり仲間内のコミュニケーションだけなのだから。場合によっては前述したように、人間関係に亀裂を来す要因となってしまう恐れすらある。

このイベントを危惧するみなさん。懸念されることなど全くないのですよ!少なくとも、みなさんが心配される部分に関しては(ちなみに、他の部分については、ここでは言及しておりません。念のため!)。費用対効果的には、きわめて多くの人たちがトクをするお祭りになっているのですから。

オマケ:ネイマールがワールドカップで自分にケガを負わせたスニガを指名したのはヒットでした。これで彼に対するバッシングが大幅に減るだろうし、ネイマールも周囲から「いいやつじゃん!」てなことになる。こういう使い方が正しいんじゃないんだろうか。

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