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難病の人が働きやすい職場は、みんなにとっても働きやすい~大野更紗×麻美ゆま対談・後編

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難病の人が働くのに必要な配慮というのは“ちょっとしたこと”

永田:麻美さんは、闘病の最中にモチベーションになった部分や、復帰された今、活動のモチベーションになっているのは何でしょうか?

麻美:そうですねえ、モチベーション……。闘病中はできなかったこと、いろいろな制限がありましたから、自分が動けるとなった時に、やれることをやりたいなと思っていました。小さな目標なんですが、闘病している時は「ちょっと動けるようになったら料理作ろうかな」とか、本当に些細なこと、小さな目標を作って、それに向かって頑張ってモチベーションを上げていました。

今は、こう過ごしていることが、すごく大事というか、大切だなと思えて。これを自分の体が動けるうちに、パワーに変えたりとか活動したいと思っています。

永田:復帰されてからは、講演活動などもされていますが、そこで同じ境遇の方の声を聞く機会もありますよね。

麻美:そうですね、そういった方たちのお話を聞いて、パワーをいただいたり、力になることがたくさんあるので、自分自身も何か話すことで少しでもお役に立てることがあればと思って、活動していきたいと考えています。

永田:先程、大野さんが今まで病気の人とあまり会う機会がなく過ごしてきたという話をされました。しかし、実際に病気になると、同じ境遇にいる人同士の繋がりが生まれてくる。一方で、そういう人たちがいる事実がありながら、なかなか一般の人とつながっていけない、そういう実態が伝わっていかないという現状があると思います。

そういう中で、大野さんの『困ってるひと』という本は、両者を繋げるきっかけになったのではないかと考えているのですが。

大野:例えば今、日本で医療費助成が出るのは、56疾患しかないんです。通称「特定疾患」と呼ばれますが、その平均発症年齢は、41.0歳なんです。ですから、多くの人たちが、まさしく働き盛りの時に発症するんです。でも、大部分の方が、職場で自分が難病を発症していることを言えないんですよね。もちろん、言いたいけど言えないという人もいるし、自分で“言わない”という人もいます。

言わないでずっと我慢して働き続けて、身も心も最後はボロボロになっていってしまうパターンが多い。現在は、難病の人の就労に対する社会的サポート体制がきわめて貧弱なので、当事者の人が「言わない」という選択をしてしまうんです。

「難病の人が働く」と言うと、企業の人がみんなビックリしちゃうんですね。「大変な病気の人を、会社で働かせなきゃいけないのか」とか、「病人の面倒を見なければいけないのか」と思ってしまう。でも、実は、ある程度病状がコントロールできている難病の人が働くのに必要な配慮というのは、ちょっとしたことだったりするんです。

たとえば、今通っている大学でしていることは、各部門の担当の方と情報交換、その上で合理的配慮の提供をお願いしています。合理的配慮の提供、なんていうと難しそうですけど、要は保健室のベッドに「すみません、ちょっとぐったりしてる時とか、具合が悪い時に、ここで横になっていいですか」とお願いして、保健師さんは「おお、そんなん、全然いいよ!いいよ!」みたいな。「そんなことでいいの?」というようなことだったりするんです。あと先生方には、「薬飲まないといけないので、授業中に、水分とったり薬飲んでいいですか」とか「通院と被らないように、講義時間を調整してほしい」とか。それから、重い文献を大量に使ったりリサーチの行動にサポートが必要なことがあるので、障害のある学生さんを支援するサポートセンターの方々と適宜話し合って調整したりしています。一緒に過ごしたり、暮らすことは、それを経験したことがない人が想像しているよりは、意外と「そんなことでいいの?」っていうことだったりするんですよね。

永田:先程、麻美さんも抗がん剤治療の際に、「この時間はお友達と会えるから…」という話をしていましたが、どうしても構えてしまう部分があると思うんですよね。今の大野さんのお話を聞いても、「本当にそんなので良いの?」と思ってしまうのですが、意外と役に立てる部分のハードルが低いケースもあるのでしょうか。

麻美:私の周囲でも、実際に病院で治療しながら働いている人もいました。人によって、抗がん剤治療も回数や期間が全然違うので、軽い方だとお勤めしながらできたりもするようです。

でも、会社の方が「ガンになったから働けないんじゃないか」という風に、どうしても捉えてしまう傾向があるみたいです。病気にはなってしまったけれども、その人自身の中身、性格などが変わってしまったわけではないのに、別物として扱われるようなことが、すごく寂しい、悲しい現実だなという話を目の当たりにしました。

いろいろな病気がある中で、動ける・動けない、いろんな治療がある、ということをちゃんと理解してもらえたら、その中でお勤めを続けることや、もっとできることがあるんじゃないかなということは感じました。

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