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わからないことだらけで、ネガティブな思考との闘いだった~大野更紗×麻美ゆま対談・前編~

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「理解しようとしてくれる」「聞いてくれる」気持ちが嬉しかった

永田: 麻美さんの場合はいかがですか。「こういうところが、なかなか理解してもらえない」とか、逆に「こういうちょっとした気づかいが結構嬉しかった」など。

麻美:私の病気は、「卵巣境界悪性腫瘍」ということで、私自身は初めて聞く病名でしたし、良性と悪性の間に「境界」というものが存在することも、実際になってみて初めて知ったことだったんです。この病気は、「卵巣ガン」とひとくくりになったりしますが、あくまでも良性と悪性の間のものなので、周囲にそれを伝える時も、どうしても困惑してしまうというか、「良性と悪性の“間”って何だろう」みたいな。

元々私は、手術前後で受け止め方が違ったんです。卵巣自体、お腹をあけてみるまで、診断がつかないんですね。手術前は「卵巣に腫瘍があります」と言われていて、手術をした結果、「卵巣境界悪性腫瘍」と言われたんです。先生も予想していなかったことのようですが、もしその可能性があるなら、手術前に「こういう可能性もあるかもしれないです」と言ってほしかった、という思いがすごくあったので、そこからまた自分でいろいろ聞いたりしていました。

周囲にも、どういう病気なのかゼロから教えるという感じだったので、理解しようとしてくれる、聞いてくれる気持ちがとても嬉しかったです。正直にわからないことがあると、「そこはどういうこと?」と遠慮せずに聞いてくれることが、私にとってはとても助かるというか、「理解しようとしてくれてるんだな」と嬉しく思いました。

私の場合は、手術後月1回の抗がん剤治療を行っていたのですが、副作用が軽い時期には動ける時間もあったんですね。なので、友達に「この時期だったら動けるから会ったりしよう」という話をしたり、友達の間で「その期間は、ゆまちゃん、動けるなら会おうか」とか「ゆまちゃん、これはできないね」とか、できること・できないことを共有してくれることが私はすごく嬉しかったです。「理解してもらえたんだな」と。可能な範囲の中で楽しい時間を過ごせて、友人のお陰で治療に前向きになれたのかなと思います。

永田:抗がん剤治療と聞くと、「副作用が大きくて…」というイメージがありますが、治療の段階や状況によっては、お友達と会うこともできるんですね。

麻美:もちろん、抗がん剤の種類もたくさんあるし、病気によって副作用も全然違うと思いますが。

実際に会うまでは、友達も「本当に会って大丈夫なの?」と聞いてきたのですが、私が「この期間だったら大丈夫だから話そうか」と言って、会ってみると安心してくれるんですよね。「病院ですごく苦しんでいるんだろうな」とか、「動けないんじゃないか」と思ってる子もいたんですけど、面と向かって、病院や近所で会ったりすると、「大丈夫な時は大丈夫なんだ」と、ダイレクトに伝わるので、会って話すのはやっぱり大事だなと思いました。

あと、私の場合、弱音を友達とかに言えなかったんですよね。ちょっと羨ましく思えてしまう部分があったんです。

病気になると、仕事ができないので生活レベルを変える必要が出てきますよね。ちょうど、マンションの更新月もあって、無収入になる治療中に引っ越しをしなければいけない状態がとても辛かったんです。その時に、友達が引っ越しの荷ほどきとかを手伝ってくれたのですが、「いらないものはどんどん捨てたほうがいいよ」とか、自分のことを思って言ってくれるのですが、それが素直に聞けないんです。そんなことを言っても、みんなは普通に仕事できるし、何も変わらない生活を送っている。私は一生懸命治療と向き合おうとしているのに、この気持ちは誰にもわかってもらえないんだろうな、というような思いがあって。

そこで、「少しでも分かってほしい」と言うことができれば、よかったのですが、「この気持ちは自分にしか分からないし、自分との闘いなんだろうな」と考えてしまった時もありました。それで逃げ出してしまったというか、誰とも話したくないというような状況に陥ってしまったりもしたのですが、その中でも、理解しようとしてくれる周囲の支えがあって、また前向きな気持ちに切り替えることができました。

永田:ご自身の中でもテンションの浮き沈みがあったんですね。

麻美:そんな時、言われて助かった言葉があるんです。どうしても不安だったり、治療のことや、先のことが考えられなかったり、恐怖をあおられた時、知り合いに「そんなことを考えたって、答えは出ないし、なった時にまた考えればいいんだよ」と言われたんですよ。どんなに考えたところで、結局どうなるかわからないし、そうなった時に対処すればいいし、その時に考えればいいんだなと切り替えられたので、すごくその時の私にとっては大事な言葉でした。

後編に続く

プロフィール

大野更紗
1984年生まれ福島県出身。上智大学大学院に在学中に、自己免疫疾患系の難病(皮膚筋炎、筋膜炎脂肪織炎症候群)を発症し休学。その体験を綴った『困ってるひと 』(ポプラ社)がベストセラーになる。都内で闘病・在宅生活をしながら、執筆も続けている。
・Twitter:@wsary

麻美ゆま
1987年生まれ群馬県出身。2005年にAV女優としてデビュー。その後、テレビドラマや映画出演など様々な分野で活躍を見せる。タレントとしての絶頂期に「卵巣境界悪性腫瘍」が見つかり、卵巣・子宮を全摘出。半年間に及ぶ抗がん剤治療を経て、現在は講演、タレント活動を続けている。今年5月、初の自叙伝『Re Start ~どんな時も自分を信じて~ 』(講談社)を発売した。
・Twitter:@asami_yuma



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