例によって、財務的な視点での話になるんだけど、クライアントの数字を見ている限りは、いくつかはっきりとしたゲーム業界的な兆候というのはあります。
順不同で列挙をすると。
- 国内はガラケー市場の急速なクランチ。各社、スマホ対応を急ぐも、モデルを確立するまでにはまだ時間がかかる。同じくAMも。
- 国内も海外も、PS3やXboxといった据え置き機向けゲームが市場として磨耗し、収益を期待できないビジネスに。
- パブリッシャーとデベロッパーとの関係性が変化。リスクマネーを抱えられないパブリッシャーがどんどん続編志向になり、売上を磨り減らしている。
- 開発費におけるマーケティングコストの増大。ついでにソーシャル化。ゴールデンルールが変わり、テレビCFやファミ通依存では費用対効果が大幅減。
- 同様に、有力IPの払底。出せば売れるシリーズのIPはより高額に。タイアップだけではリクープまでなかなか辿り着けない。
- ユーザーのセグメント化がさらに進む。好きな人、食いつく人のクラスターが小さくなり、その分、お金をより多く払ってくれる仕組みとしての二次利用が進化。
- ゲームはファーストメディアでなくなったが、じゃあウェブならいいのか、というとそうでもない。
- ゲーム好きのコミュニティにウケるコンテンツが売上を保証してくれなくなった。
- ソーシャル市場については、IT業界、web業界の流儀からゲーム業界の独壇場に。ベンチャー的な制作集団の売り上げの伸び悩み。
ごくドメスティックに日本市場だけで言うと、もう開発費30億とか、広告宣伝費含めて70億とかっていう費用は日本人が好むゲームとしてだけリリースするのは困難になってきまして、職人芸的な日本人クリエイターがかなり本格的に海外で評価されなくなってきております。状況的には、テレビ業界のドラマの作り方とゲーム業界が相似形になってきていまして、日本人にウケるドラマはメディアパワーの強いテレビを下地にすれば作れるし、DVDも国内では売れるんだけど、海外に売っていこうとするとこれがまたさっぱりで、結果的にFOXなど海外(というか英語圏)の制作費に比べると文字通り10分の1の予算しかかけられなくなっているわけです。
なので、どうしても実績のある俳優、いま人気の女優を食い潰しながら、シリーズものやリメイクを乱発しないと編成ができないというジレンマに陥って、いつまでも同じような顔ぶれで役や原作だけが変わっているという閉塞感のある制作志向になってしまう。だから、スターを引き上げるのも芸能事務所との力関係で、また、脚本力で勝負するコンテンツは予算がつかないのでいつまで経っても新しい脚本家が大きい仕事を任せてもらえないというジレンマを持ちます。
ゲーム業界も結局リスクを負うだけの調達を進められないパブリッシャーがどんどん内向きになり、国内比重の高いところはむしろ海外の売り上げを捨てて国内で均衡しようとする悪弊に陥っております。
バンナムが海外病になるきっかけとなった一言
http://blog.esuteru.com/archives/1939646.html
この辺の記事を読んでいると、別にBNGIだけの問題ではないんですが、戦略がどうという以前に海外に売れると思って調達したコンテンツがクソであって結果が出なかったのは単純に鵜之澤さんの選球眼の問題だったと外部からは思います。一時期だけとはいえ、助かったの岡本さんだけじゃん。いま何してるんだろ。
じゃあ、海外のパブリッシャーは日本と比べていいのかというと、やっぱり益出しには苦労しており、資本が薄い分だけ日本よりよろしくないことになっております。PS3は堅調に伸びてきたので、まだ救われている部分はあるのだけど、800万本売れるタイトルがあるので大丈夫かというとそれ以外が… とか、シリーズ追うごとにコンセプトの陳腐化に見舞われて販売苦戦という例を考えるに、市場全体の活性度の問題が大きいのだろうと思います。
結局、ゲーム業界は市場を成長しているところへ寄せざるを得ず、ソーシャルとスマホに雪崩れ込んでいくしか方法がないのであります。また、市場の九割が海外であることを考えると、でかいタイトルをどーんと海外スタジオ使って作っていくという方法論ではなく、フレームワークだけまずは作って、ガワやけれん味の部分だけ地域ごとのローカライズして総体の売上を作っていくという方法論にならざるを得ないのでしょう。