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功労者である騎士団長の解任と、王国側の事情

 一般論ではあるが、実績もあり能力的にも評価が高い騎士団長の待遇を巡って、お家騒動が勃発するというのは良くあることで、とはいえ、当事者になってしまうと本当に明日の光を探して彷徨い歩くことになるわけです。

 平たく言うならば、だいたい次のような感じ。

● 古き良き成長産業と、市場の成長に合わせて大きくなる会社

 ブームを捉えて、ヒット作品を出し、成長する産業の中で一定のパイを持っている会社。業界固有のゴールデンルールを遵守し、シェアを失わなければ、市場の成長と共に会社は大きくなり、利益も出る。

 高度成長時代、それほど経営手腕が優れなくても経済が成長していれば企業は大きくできる。むしろ必要なことは起業を行いリスクを取ることであって、そこの賭けに当たりさえすれば、一部上場にまで持ち上げることができる。

● 成長の行き詰まりと経営者の高齢化、幹部の茶坊主化

 どんな成長市場でも、やがて停滞し、伸びは鈍化する。かつて通用していたゲームルールは利益をもたらさなくなり、会社は体制の変遷を求められる。

 経営者は、事業の成功に酔い痴れ、それが己の経営手腕によるものだという錯覚を持ち、場合によってはワンマンとなって幹部が茶坊主化して状況の変化に対応する能力も意欲も失われていく。

 往々にして、経営者は高齢化しており、新しい事業への理解も取り組む意欲もないので、社内から適切な提案が上がってきても、モノの良し悪しを判断できない。まだ売り上げの立っていない事業は「いま」儲かっているわけではないという理由で、実施を見送ってしまう。

● 環境の大幅な変化と、資本の集積

 経済全体が成熟化してくると、大資本による効率や、より革新的な技法を実現するための費用がかさんでくる。必然的に、大規模大集積大広告宣伝大開発費大作を実現しなければならない大資本をハンドリングする事業化と、国内定着ニッチ短期間低技術多品種量産お手軽を実現する機動力ある事業化の二つの道に分かれる。

 すでに経営環境が大幅に変化し、事態が悪化しているにもかかわらず、戦場の状態を理解できていない大本営は、本当の戦地の情報を経営者に上げない。誰よりも苦戦を知り対策を講じる知恵を持ち局面を打開できる前線の騎士団長がいるにも関らず、宮廷では年老いた国王と取り巻きが「人事ごっこ」をしており、また人事の要諦は過去の経緯で熟達しているため本社が完全に伏魔殿となる。

● 騎士団副長の切り崩しと、騎士団長の孤立化

 王国は長く経てば経つほど、しきたりができる。騎士団長は往々にして王国に領土を求め、王朝と対立する。宮廷には必ずそういう叛乱に陥りそうな事態を収拾することだけに熟達したCFOが銀行などを経てやってくる。彼らは、叛乱する者そのものを懐柔するのではなく、必ず対抗する者に支援する部下や取引先やマスコミを取り込んで孤立させる。

 孤立は判断を狂わせる。正しい情報が入らなくなるからだ。思惑から出た情報しか伝わらなくなり、誰を信じたらいいのか分からなくなる。空虚な自信の殻を被ることもあれば、自問自答を繰り返して内向きに陥ることもある。しかし、戦場での優秀さは誰もが知るところであり、王国以外の世評は決して低くはならない。

● 叛乱の失敗と放逐

 前線を支えていた人が独立するには、前線に領地を必要とする。戦場しか、彼らの能力を発揮する場所がないからだ。

 しかし、戦場は単体で存在しているわけではない。戦いにいくら強くても、補給を司る官僚機能がない限り、資金的な面からも技術的な面からも戦線そのものを維持することはできない。戦いに強く、勝ち続けているから自分に自信を持ったとしても、その自信の根拠を支えているのは王国の組織なのだ。

 王国に暮らす人が、騎士団長の叛乱に最後までついていかない理由は、生活があるからである。どんなカリスマであり、素晴らしい実績を持っている上司でも、そこにカネが付かないのでは生きていけない。同様に、騎士団長を支えた副官はプラスとプラスのジレンマを持つ。騎士団長についていって成功する確率と、騎士団長が去って次に自分がその位置に就き権勢を揮える確率とを天秤にかける。

 結果として、優秀で野心を抱える副官ほど、騎士団長には独立を促し、一方で、CFOと自分の地位についての交渉を行う。

 副官は、必ずこう言う。「騎士団長がいなくなっても、戦線は維持できると思います」

● 王国の衰亡と新勢力の台頭

 会社は、優秀なマネージャーの叛乱鎮圧にあたって政治で勝つことはあっても、利益を得られるとは限らない。

 優秀なマネージャーが会社に条件を突きつけるのは、それなり以上の合理的な理由があるからなのだ。

 そして、騎士団長の放逐というのは定期的に繰り返される。環境が変化するごとに大本営の無理解や宮廷政治ぶりに苛立ち、必ず抗議をエスカレートさせることが企業文化となる。騎士団長を追い出した副官は、その数年後に、自分もまた追い出される立場となることに対して正常な想像力を働かせることができない。

 幹部が国王の劣化コピーばかりになるのと同様、前線を預かるべき歴代騎士団長も、だんだん粒が小さくなる。そうこうしている間に、市場全体の環境変化に鋭く適応した新勢力が、いろんな方向から王国に立ち向かい、利益を削ぎ落としていく。

● 放逐されたから騎士団長が終わるとは限らない

 そもそも、騎士団長になるのは優秀だからである。実績を挙げられるのは、優れた将軍だからである。逆に言えば、兵のいない将軍は凡人であるし、兵を維持できる仕組みさえ提供できれば、地位を失った騎士団長であっても領土を確保できるようになるだろう。

 騎士団長が新しい王になるとき、それこそ、老いた国王にとっては最悪の悪夢となる。

 ゲーム業界においては激震となるとは思うけれども、一歩でも二歩でも先を見て、より良い作品や世界に評価されるコンテンツが提供できるならば、むしろいまある混乱というのはプラスに働くのではないだろうか。

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