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米海軍が注目した自衛隊無人潜水艦の正体

どうも最近、人気の出る記事は政治系が多く、技術系の記事は人気がないのですが、私的には趣味なので、今回は技術系記事です。

防衛省が開発中の無人潜水艦ですが、米海軍が目を付けて、一枚噛ませろと言ってきたようです。
無人潜水艦、日米で研究へ…30日間自律航行」(読売新聞140808)

 防衛省と米軍は、1か月間連続して海中で警戒監視を行うことができる「無人潜水艦」の開発に向けた共同研究を進める方針を固めた。

中略

防衛省によると、当初は日本単独で開発を行うことを予定していたが、米海軍が高い関心を示したことから、共同研究に向けた協議を始めたという。

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上記、記事より

日本主導の研究に、アメリカ側から参加させて欲しいと言ってくるなんて、非常に珍しいケースでしょう。
日本の研究開発は、とかくオリジナリティが少なく(あれば良いってもんでもないですが)、あっても国産化の言い訳のための妙な仕様のモノが多いので、アメリカが興味を持つようなものは少ないのですが、コレはレアケースです。
この研究自体は、記事にもあるとおり、今年から予算が付けられており、防衛省としての研究がスタートしています。
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26年度防衛省予算資料より

予算資料では、長期間としか記載が無かったのですが、読売の記事によると、30日間にも及ぶ連続哨戒が可能な能力を目指しているようです。

無人潜水艦は、全長10メートル程度で、航行する場所をあらかじめ決めておき、約30日間自律して行動した後、帰還することが想定されている。海中では水中音波探知機(ソナー)による警戒監視や情報収集を乗組員なしで行う。魚雷などによる攻撃能力は持たせない予定だ。

この性能が実現できれば、確かに米軍が高い関心を示すだけの価値があります。

1ヶ月の連続哨戒は、普通の潜水艦でも可能ですが、何せコストが違います。
艦の取得費用ももちろんですが、人が乗り込む艦と無人艦では、運用コストが桁違いだからです。
そして、コストが安いということは、大量に投入できる可能性につながります。

潜水艦が行うべき情報収集は多岐に渡りますが、やはり最も重要なのは、パッシブソナーによる水中音響の収集でしょう。
音響測定艦による遠方からの情報収集でも、相当の情報が収集できるようですが、電波と同様に遠方まで到達しやすい音は、回折などもし易く、音源の位置や移動については把握が困難です。

ですが、多数の無人潜水艦が、複数の位置で同時にデータ収集を行えば、目標とする音源の情報は、位置や移動能力についても詳細に把握できます。

潜水艦の有用性は、何よりもその隠密性によって成り立っています。
もちろん、現代の潜水艦は、魚雷だけでなく、ミサイルも搭載したり、特殊部隊の投入も行なうなど、多彩で強力な攻撃力を持つに至っていますが、「どこに居るか分からない。いつ攻撃を受けるか分からない」という恐怖を敵に与え、対潜戦を行わない限り、戦力の展開を行う事さえ困難にする所にこそ、最大の価値があります。

フォークランド紛争中、アルゼンチンの巡洋艦「ヘネラル・ベルグラーノ」は、イギリスの原潜「コンカラー」に魚雷で撃沈されました。
その後のアルゼンチン海軍主力は、原潜の活動が困難な浅海域に留まったため、大きな被害を受けることはありませんでしたが、原潜の存在を恐れ、活動自体ができなくなったため、その存在自体が無力化されてしまいました。

このように、潜水艦は、ある意味で地雷のようなモノですが、動き回ることが可能なため、より厄介な存在です。

しかし、潜水艦は、それぞれの固有音響を収集され、行動データの蓄積から機動能力等を把握されてしまえば、隠密性を発揮することはできなくなり、水上艦に比べれば機動能力も攻撃力も劣る潜水艦は、ただの的でしかなくなってしまいます。

現状でも、日中間の戦力に、大きな差があるのがこの点ですが、この無人潜水艦が多数配備されれば、中国の潜水艦は、ほとんど無力と化すかもしれません。

特に、騒音の激しい原潜と比べ、対処に困難が予想される一部のキロ級などの通常型潜水艦の動向把握に効果を発揮するでしょうから、その価値は非常に大きなものになると思われます。

しかし、全長10mと、ある程度の大きさを有し、結構な量の燃料電池を搭載できるとしても、また、哨戒中は姿勢制御のために、舵が効く最低限の低速度で良いとしても、30日間も、空気中とは比べものにならない抵抗となる水中で、継続して行動できるのかは疑問です。
抵抗を考えれば、大型トラックを低速で走り続けさせるイメージかと思いますが、燃料電池とは言え、1ヶ月も走り続けられるとは思えません。

それに、防衛省が現在行っている研究は、無人潜水艦用とは言え、現時点では燃料電池の研究です。次世代のあらゆる産業に役立つことが予想される燃料電池の研究は、アメリカも当然ながら行っており、燃料電池の研究だけなら、米海軍が一枚噛ませろと言ってくるとは思えません。

となると、防衛省がこの無人潜水艦を実現する際に、採用するかもしれない開発技術には、燃料電池の他にもう一つあるのではないか思われます。

それが、コレです。
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技本HPより

凧ではありません。

防衛省・技術研究本部が開発中の水中グライダーの実験機です。
水中滑走制御技術の研究(技本HPより)

詳しくは、上記技本のHPを見て頂きたいのですが、無人潜水艦用の技術として、非常に有望そうな技術です。
誰の発案なのか、最初にコレを見た時は、唸らせられました。(ナイスアイデアです)
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上記技本HPより

水中を推進しようとすれば、水の抵抗が大きいため、エネルギーロスはどうしても大きなものになります。
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上記技本HPより

しかし、水の比重に近い重量・容積で作った潜水艦で、注水・排水して浮力を調整するだけなら、大したエネルギーはかかりません。
その上で、沈降・浮上する際に、水中翼によって滑空(滑水と呼ぶべきか?)すれば、効率良く移動が可能になります。(理屈は違いますが、海上をほとんど羽ばたくことなく、長距離を飛行するカモメのようなものです)

この技術、必然的に深度が変わってしまうため、水中音響の収集にはマイナス要素でもあるのですが、この公開されたデータ(最初の試験であるため、決して良いデータではない)に基づくとしても、滑空比(滑水比?)5.75であるため、最大深度200mの東シナ海では、一回の注・排水で、2.3km移動可能です。
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上記技本HPより

無人潜水艦は、急速潜行・浮上をする必要はないでしょうし、人も乗って居ないため重量の変化も少ないので、有人の潜水艦のように高圧空気を使って注・排水しなくても、魚の浮き袋のようなものをアクチュエーターで、圧縮・膨張させれば、浮力調整は十分でしょう。(何より、魚がそれで数百m潜水・浮上できている)

このため、この技術を使えば、極々少ないエネルギーで、水中を長距離・長時間に渡って移動可能です。

恐らく、コレなら30日間の連続哨戒も十分に可能ではないでしょうか。

米海軍が目を付けた技術は、燃料電池よりも、むしろコチラなのではないかという気がします。

それに、この技術には副次的な効果もありそうです。
と言うのも、恐らく音を全くと言って良いレベルしか出さないだろうと言う点です。

通常のスクリュー、あるいは静粛性に優れたポンプジェット推進でも、モーター音などのノイズはどうしても発生します。
しかし、ある意味船体全体がスクリューとして作用する水中グライダーは、魚と同レベルの音しか出さずに航行できそうです。
となると、この水中グライダーを利用した無人潜水艦は、パッシブソナーでの発見は不可能でしょう。

アクティブソナーでも、船体の大きさが小さいので、発見は難しいでしょうし、移動して逃げることも可能です。運悪く接近されれても、人が乗って居ませんから、1ヶ月でも沈底していたって構いません。
ソナーを取付ける位置の問題もあるので、形状が変わるかもしれませんが、この形状もアクティブソナーに対するステルス性を高めていそうです。
後縁の角度など、形状を見てもステルス航空機とそっくりで、音響ステルスを意図した形状と言えるでしょう。

読売の記事は、防衛省の予算資料を元に絵を描いているので、予算資料と同じような船体形状になっていますが、潜水艦でありながら、垂直尾翼のようなモノが描かれているのは、防衛省がこの水中グライダーの翼を書きたくなかったものの、ある程度はイメージできるようにこの垂直尾翼状のものだけ書いたような気がしてなりません。

と、この記事の後半は、ほとんど推測ですが、これが当たっていれば、開発に当たっている技術者は、さぞかし楽しいでしょう。
どんなモノに仕上がるのか、注目です。

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