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認定医療法人制度の創設 ‐ 上田峰久

「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」が6月18日の参議院本会議で可決、成立した。

当該改正法の中で「持分なし医療法人への移行を促進する措置(認定制度)」が規定された。今回は当該認定制度について整理する。

1.納税猶予制度の適用要件

(1)相続税の納税猶予制度
「持分あり医療法人」の出資持分を相続又は遺贈により取得した相続人について、(1)相続税の申告期限までに認定医療法人に該当し、(2)納税猶予額相当の担保を提供した場合には、その出資持分に係る相続税の納税が猶予される制度が創設された。

(2)贈与税の納税猶予制度
認定医療法人の「出資者」が持分放棄をしたことにより価値移転を受けた「他の出資者」について、(1)持分放棄時に医療法人が認定医療法人に該当し、(2)納税猶予額相当の担保を提供した場合には、その価値移転に係る贈与税の納税が猶予される制度が創設された。

上述のとおり、相続税及び贈与税の納税猶予制度の適用を受ける場合には、いずれも認定医療法人であることが前提となっている。

2.認定制度の概要

(1)認定制度
認定制度とは、「持分なし医療法人」への移行を意思決定した「持分あり医療法人」が、移行に向けた取組等を記載した移行計画を厚生労働大臣に提出し、当該移行計画につき、厚生労働大臣から認定を受ける制度をいう。この移行計画について認定を受けた「持分あり医療法人」を、「認定医療法人」という。

(2)申請
移行計画の認定を受けようとする「持分あり医療法人」は、(1)移行法人類型見込(社会医療法人、特定医療法人、基金拠出型医療法人、左記以外の医療法人)、(2)移行に向けた取組内容、(3)移行に向けた検討体制、(4)移行の期限(認定日から3年以内)、等の事項を記載した移行計画書を作成し、一定の書類を添付して厚生労働大臣に提出する必要がある。

(3)認定
厚生労働大臣は、移行計画書の提出があった場合において、当該移行計画が、(1)社員総会において議決されたものであること、(2)持分なし医療法人への移行をするために有効かつ適切なものであること、(3)移行計画に記載された移行期限が認定日から起算して3年以内であること、等の要件に適合するものであると認めるときは、その移行計画を認定する。

なお、認定期間は平成26年10月1日から平成29年9月30日までとなる。

(4)認定取消
認定医療法人が、(1)認定移行計画に従って持分なし医療法人への移行に向けた取組を行っていない場合、(2)認定移行計画に記載された移行期限までに持分なし医療法人へ移行しなかった場合、等の事由に該当する場合には、その認定は取り消される。

3.納税猶予制度の課題

(1)経営者の意向に対する課題
今回の納税猶予制度は、「持分あり」から「持分なし」への移行が前提となる。

一方、平成23年4月に日本医師会及び四病院団体協議会が実施した「医療法人の現状と課題に関するアンケート調査」によれば、「持分なし医療法人」への移行の意思がある法人は、病院を経営している医療法人で33.8%、診療所を経営している医療法人で5.1%となっている。

移行しない理由では、「出資持分はオーナーシップの源泉であり、放棄できない」「同族経営を維持したい」「相続税を支払っても医療法人を子孫に承継させたい」等をその理由に挙げている。

つまり、当該納税猶予制度は医療法人の経営者の意向に沿った制度になっていないといえる。

(2)税務上の課題
定款変更により「持分あり医療法人」から「持分なし医療法人」に移行した場合、一定の要件(特定医療法人若しくは社会医療法人と同程度の要件)を満たさない場合には、医療法人を個人とみなして、持分放棄に伴う価値移転部分に対して医療法人に贈与税が課されることも、スムーズな移行のハードルとなっている。

(3)検討事項
今回の納税猶予制度は、医療法人の円滑な事業承継を目的として創設されたが、活用するにあたって課題も多いのが実情である。10月1日から認定制度がスタートするが、認定申請する医療法人がどのくらい出てくるのか注視が必要である。

仮に、認定申請数が少ない(納税猶予制度の活用意思が低い)ようであれば、改めて「持分あり」を維持したままの納税猶予制度の創設も検討する必要があると考えられる。

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上田峰久(税理士)

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