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ソーラシェアリングと農地転用 〜トリッキーな一時転用〜

メガソーラーとは少し話題を変えますが、引き続き農地転用と太陽光発電がらみの記事です。今回はいつにもましてマニアックです。(そろそろ広く万人受けるネタを書かないとまずい気がする)

最近農地で農作業には支障がない、3メートル以上の高い位置に太陽光発電パネルを設置して、農業と太陽光発電を並行して展開する「ソーラーシェアリング」というものが注目されています。写真で見るとこのような感じですね⬇

リンク先を見る
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1405/23/news027.htmlより)

素人目には「これならば農地転用にあたらず、農地で太陽光発電がドンドン展開できるのではないか!」、と思ってしまうのですが、そうは問屋が卸さず写真で見ると分かるように農地に支柱が差し込まれていることから、これも農地規制の対象となります。。。分かるっちゃ分かるんだけど、いくらなんでも。。。という感情論は官側にも通じるもので、農水省はこうした太陽光発電方式に関して特別な運用方式を取ることを昨年(平成25年)4月に取り決めました。

http://www.maff.go.jp/j/press/nousin/noukei/130401.html

詳細は徐々に解説していきますが、この告示では、ソーラーシェアリングに関して「農地の一時転用」という枠組みを用いて一定の要件を満たせば試験的に認める方針を打ち出しています。ではご説明していきます。

「農地の一時転用」とは?

まず「農地の一時転用」とは何か、という話なのですがこれは農地法上には無い概念で、農地法施行令第10条に初登場する概念です。法律に関する基本的な知識ですが、通常法律は「①法律ー②政令ー③省令ー④告示」というピラミッド式の構造になっておりまして、農地法施行令は農地法に基づいて制定される政令です。

では農地法施行令第10条は何を定めているかというと「(農地法第四条に定める)農地の転用の不許可の例外」を定めています。前に説明しました、農地法では農用地区域内の農地と10ha以上の良好な条件の農地などの転用を禁じていますが、農地法施行令に定められた条件を満たせば例外的に農地転用が認められるというわけです。

法律の例外を定めているのですから、農地法施行令第10条は非常に重要な規定です。(余談ですが経産省時代にこの条項を巡り何度も農水省とバトルを繰り広げたことを思い出します)農地法施行令における「農地の一時転用」に関する文言を引用すると以下のような具合です

========================

(農地の転用の不許可の例外)
第十条  法第四条第二項第一号 に掲げる場合の同項 ただし書の政令で定める相当の事由は、次の各号に掲げる農地の区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる事由とする。

一  法第四条第二項第一号 イに掲げる農地 農地を農地以外のものにする行為が次のすべてに該当すること。

イ 申請に係る農地を仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するために行うものであつて、当該利用の目的を達成する上で当該農地を供することが必要であると認められるものであること。
ロ 農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)第八条第一項又は第九条第一項の規定により定められた農業振興地域整備計画(以下単に「農業振興地域整備計画」という。)の達成に支障を及ぼすおそれがないと認められるものであること。

二  法第四条第二項第一号 ロに掲げる農地 農地を農地以外のものにする行為が前号イ又は次のいずれかに該当すること。
(以下略)

========================

。。。なかなか読んでも分かりにくいと思いますが、この条文をベースに「農地の一時転用」について説明しますと

「『農地の一時転用』とは農地の転用規制の例外的措置として、一時的に認められる農地を農地以外のものにする行為。農地の一時転用が認められるためには、まずもってそれが農地の一時的な利用であること、さらに農業振興地域整備計画の達成に支障がないこと、が求められる」

というところでしょうか。なお「”一時的”とはどれくらいの期間か」という点については農水省が出している告示によって以下のように規定されており、最長でも3年以内とされています

「「一時的な利用」とは、申請に係る目的を達成することができる必要最小限の期間をいい、〜3年以内の期間に限定するものとする」

。。。つまり一時転用によって作られた施設は本来的には3年以内に撤去して原状回復することが求められるという重大な問題が存在するわけです。

ソーラーシェアリングにおける農地法の運用方針

本当に農地法って複雑。。。。ということはさておき、ココで漸く本題に入りまして、それでは農水省が平成25年4月に出した、ソーラーシェアリングに出した指針には何が書かれているか除いてみますと、大きく以下のような方針が打ち出されています。

=====================

(1)ソーラーシェアリングが一時転用の対象となることの明確化

○農地に支柱を立てて営農を継続しながら上部空間に太陽光発電設備等の発電設備を設置する場合には、当該支柱について、農地法第4条1項又は第5条1項の許可が必要

(農地転用が禁止されている)農用地区域内の農地、甲種農地、第一種農地、における太陽光発電設備の設置は一時転用許可の対象とする

なお設備の設置者と営農者が異なる場合には、農地法第3条1項に基づき、権利の設定に関して農業委員会の許可を受けなければならない

(2)転用期間満了ごとに一時転用許可を延長することを認める

○転用期間(3年以内)が満了するたびに、一定の基準(主として下部空間での営農の継続性に関するもの)に則って審査を繰り返し、一時転用を延長することができる

○なお、「①営農が行われない場合、②下部農地における単収(単位当たりの収量)が、同じ年の地域の平均的な単収と比較して概ね2割以上減収している場合、③下部農地において生産された農作物の品質に著しい劣化が生じている場合、④農作業に必要な機械等を効率的に利用することが困難な場合」は営農が適切に行われていないと判断する。(≒許可の継続が見込まれない可能性が濃厚ということ???)

(3)一時転用許可の条件(報告、確認、改善、営農が継続できない場合の原状回復義務など)

○一時転用許可にあたっては、通常付される条件に加えて以下のような条件を付すこととする

・下部農地において生産された農作物に係る状況を毎年報告し、また報告内容について必要な知見を有する者(普及指導員、試験研究機関、設備の製造業者等)の確認を受けること

・下部農地の営農が適切に確保されない場合or確保されないと見込まれる場合には、日照両確保等のために必要な改善措置を迅速に講ずること

下部の営農が行われなくなる場合又は上部の太陽光発電事業が廃止される場合、いずれの場合も支柱を含む設備を速やかに撤去して農地として利用することが出来る状態に回復すること

○なおソーラーシェアリング設備の設置を契機に農業収入が減少するような作物転換をすることは望ましくない(≒やめてね)

=====================

もろもろ踏まえての所感

このようにソーラーシェアリングについて色々見てきたわけですが、率直に言って感想としては「う〜んこれじゃ、ソーラーシェアリングは広がらないよな〜」というところです。とりあえずネックになるのはざっと3点程挙げると以下の通りです

①太陽光発電は20年事業が基本。仮に一時転用を繰り返して事業を継続するとしたら7回も許可を受けなければいけない。

②資本を持っている農家は少なく、実際ソーラーシェアリングをするには営農者と発電事業者は異なることになる。現状の法制度では発電事業者と営農者の責任分担が不明確で、発電事業者の知らない事情で勝手に営農者が生産性を落としたり農業を辞めたりても、それに巻き込まれて発電事業者が太陽光発電設備を撤去しなければならない可能性がある。

③現状のスキームでは発電事業者が営農状況の報告・確認に関する人件費コストを追うことになる可能性が高い。そうすると、タダでさえソーラーシェアリングは高くつくのに採算性が更に悪くなる

このような事業に融資する金融機関も奇特な投資家も存在しません。少なくとも、一時転用期間の延長、営農者と発電事業者の責任分離、報告・確認に関する人件費コストの官側の負担、などが明確にならない限り当面はソーラシェアリングは補助金でお遊びで行われる事業でしかないのでしょう。農水省さんもうちょっと頭ひねれないですかね??

色々調べた結果がこのような結末で寂しいですが、ではでは今回はこの辺で。

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