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理研が「敗戦処理」で必ずやらなければならないこと

笹井氏の自殺を受けて、理研が8/7に公表した声明文の中身は、一言で言えば、「保留」ってことですが、今後どういう方向で終息を図ることが妥当か、検討してみたい。

最後部だけ引用。
「理研はSTAP研究論文にかかる問題の解明と、研究不正再発防止のための提言書等を踏まえた改革のためのアクションプランの策定に真摯に取り組んでおります。理研自らが、社会の要請に応えるべく、一刻も早く研究に専念できる環境を再生することが何よりも重要であると考えております。そのためにも、いましばらくの時間と静寂な環境を与えていただくことを切にお願い申し上げます。」
理研が問題点を明確にし、善処しなければならない点はたくさんあるが、次の2点は最低触れなければならない。

①産学癒着からの脱却
「再生医療」はアベノミクスの目玉政策に数えられるように、カネになる業界として利用されてきた面がある。
ヘリオス、新日本科学、リボミック、オーガンテクノロジーズといったベンチャー企業は実業がないのに巨額の投資マネーを集めている。
これを理研の広報戦略が利用し、利用されてきた経緯は否定できない。

カネ集めの動機が成果のねつ造を誘発した側面は、検討されなければならない。

②政治的圧力からの脱却
2013年1月11日に安倍首相は世耕官房副大臣や赤羽経産副大臣らを引き連れ、理研CDBを見学している。
この時、CDBの具体的な研究事例の紹介は笹井氏が担当し、安倍氏は「強い関心を示した」とされる。(理研広報より)
同年3月10日に小保方氏が論文をNatureに投稿。(翌年1/29に公開)
2014年1月下旬、論文公開の4,5日前、笹井氏と小保方氏が内閣官房を訪問し、研究の概要を説明。
(7/6毎日新聞より)

再生医療の臨床治験は本来は厚労省の管轄であるのに、理研全体が文科省の管轄であるため、科学にドシロートの下村文科大臣がことあるごとに口出ししてくる。

との指摘が理研内部(高橋政代氏)からも出ていることを考え合わせると、政治中枢と研究現場の近さが(政治家及び科学者の)政治的野心を誘発し、研究の客観性を損なった可能性は十分考えられる。

政治家も投資家もマスコミも、研究にインパクトを求める。
それが彼らの利益につながるからだが、こういった期待感が科学的真理の追究よりも優先されるような環境は排除されねばならない。

①と②はひとまとめにして、政・財・学の構造的な問題と捉えることができる。

これはノバルティス・ファーマの降圧剤や東大J-ANDI(認知症研究→エーザイ)の不正論文・不正研究事件と同じ構造であり、ここに手を付けない限り、同様の事件は必ず起こる。

どころか、ノ社のケースでは薬事法の誇大広告でしか罰則規定の範疇に入らなかったことを考慮すれば、このトライアングルはむしろ巧妙に強化される可能性が高い。
(従って、事件化せずに、無駄な予算だけが消化されることになりかねない。)

こういった構造的な問題に対応するためには広島大学の難波紘二氏が指摘するように、日本版ORI(Office of Research Integrity)を創設する必要があるのではないだろうか。

ORIのような独立性の高い機関が国の助成する研究活動を監視し、不正の予防や追跡・調査に関するレギュレーションや手続きを進展させ、レビューやモニタリングに責任をもって取り組む。

ORIに就職口のない優秀な科学者を採用すれば、雇用対策にもなる。

理研の「監査・コンプライアンス室」は、日本の研究機関としては最初に出来た不正防止措置部門だが、これが今回機能しなかったのは、理研本体に従属するこの部門が独立性を発揮できなかったからだろう。

世界3大不正論文にも挙げられるような今回のスキャンダルは、科学立国を自任する日本の信頼に大きな傷をつくったことは間違いない。

今後の対策が示されず、自浄作用をなさないあいまいな幕引きになってしまっては、更に国際的な信頼を失いかねない。

今後発信されるであろう理研の声明には注目したい。
(というか、マスコミの方は注目してください。今のところ一番粘り強く頑張っているのは毎日の科学環境部です。)


蛇足
(STAP細胞の検証実験について)
木星の軌道上をまわっているかもしれないティーポットの存在を証明すること、それが存在しないことを証明すること、両方ともほとんど不可能だし、そもそも時間のムダだってことは、既にアドラーとフロイトの論争の欺瞞性を見きったポパーによって、ほぼ100年前に指摘されているのだが・・・・

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