「96%」
なんの数字だかお分かりだろうか?
日本における「殺人事件の検挙率」だ。
日本では、殺人などの重大な罪を犯せば、ほとんどが警察に捕まるわけだ。ちなみに、諸外国での殺人事件検挙率は、アメリカで62%、中国で77%、イタリアで69%などであり、日本の検挙率の高さがわかる。
日本における犯罪の総数も、10年前、戦後最多の約285万件を記録したが、その後の警察の努力で減少し、直近では10年前の半分以下の131万4140件まで減少している。日本の警察は優秀で、日本は安全な国だということを示す数字だ。
しかし、我々国民の感覚は少し違うかもしれない。普通に生活していて安全で安心だと感じる人々は少なくなってきているようだ。
たとえば、
「約489億5000万円」
この数字は、昨年、過去最高となった、「オレオレ詐欺」による被害額だ。殺人などの重要犯罪は高い率で検挙される一方で、オレオレ詐欺や危険ドラッグ、ストーカー被害やDVなど、身近なところで起こる犯罪は増加しているのだ。
実際、戦後、昭和50年代までは、犯罪全体の検挙率はなんと60%~70%台で推移していたのだが、その後かなり低下し、最近は30%程度になってしまっている。
これは、高齢化、単身世帯の増加、地域社会の希薄化などの社会変化と、ITなどを駆使した複雑で高度化した犯罪の増加の影響といえよう。
「安全」は生活の根幹でもあり、日本という国家の価値でもある。警察力の強化は、「安全」という日本の価値を高めることにもなる。一方、取り締まりを強化すると、生活が窮屈になる。従い、国民の権利を担保しながらも、テクノロジーを使って安全を維持する、と言う警察の賢い能力強化が必要となってきた。
今回の「行動」からは、司法・警察を含む法務に関わる提言に入ることとなる。
IT化、社会構造の変化に対応する「ハイテクKOBAN」を!
明治維新の直後、維新政府は全国に「交番」を設置した。日本の交番(英語でもKOBAN)は、日本の治安維持に大きな役割を果たしてきた、まさに日本独特のモデルだ。交番の機能は、地域社会、住民の中に「とけ込み」、犯罪を「察知し」「抑止する」機能であると言える。
しかし、IT化の進展、携帯電話の普及やネット社会の発展は、リアルな交番では「とけ込む」ことができない領域を拡大させた。また、地域社会の希薄化は交番の本来の機能を低下させている。 昔の日本の地域社会におけるつながりは、警察捜査にとって欠く事のできない存在であった。しかし、近年は、地域や企業における人間関係の希薄化が進み、聞き込み捜査による目撃情報の入手等の「人からの捜査」は非常に困難になってきている。
また、携帯電話やインターネットなど、ITの発達は、犯罪の痕跡を残さないための手段として悪用され、サイバー犯罪、サイバー攻撃など新たな脅威も多発している。不確実性の高い厳しい業務を遂行する警察にとって、社会の変化、技術の進歩といった情勢変化から受ける影響は極めて大きい。
そこで、IT化の進展という社会構造の変化に対応するため、「ハイテクKOBAN」という考え方を提言したい。
リアルな交番と同じように、ITの領域にも、希薄化された地域社会にも「溶け込み」、犯罪を「察知し」「抑止する」ための方法論だ。3つある。
(1)サイバースペース
現代人にとって、サイバースペースはリアルな生活領域と同等かそれ以上の役割を担ってきた。多くの日本人がインターネットを活用し、スマホを持ち、SNSやLINEのアカウントを持っている。