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田村憲久大臣と長妻昭さんが「危険ドラッグは法規制か、省令対応か」で問答 衆・厚労委閉会中審査

【2014年8月4日(月) 衆議院厚生労働委員会閉会中審査】

 厚生労働省令で禁止する前に売り買いされた「危険ドラッグ(旧・脱法ドラッグ、脱法ハーブ)」の服用によって、重大な交通事故などが起きている「いたちごっこ」を与野党が問題視して、閉会中審査が行われました。

 さて、6月末ぐらいから、各自治体で「臨時福祉給付金」1万円~1・5万円の支給が始まっていますが、これは、もともと第180通常国会の社会保障と税の一体改革3党合意に盛り込まれた「消費税増税の下支えのための簡素な給付措置」が政策化したものです。法律化することになっていましたが、予算措置のみですが、平成25年度第1次補正予算で実現しました。この協議を進めたのは、当時は与党・民主党の長妻昭さんら、野党・自民党からは田村憲久さんらが実務者協議をしました。その後、田村さんは政権交代して、長妻さんの3代後の厚生労働大臣になりました。

 長妻さんは危険ドラッグの現状について、警察庁の交通局長に質問。その答弁によると、ことし平成26年上半期だけで、薬物使用による交通事故のうち、19事件中14事件が、「未規制」すなわち「危険ドラッグ」だったと答弁。さらに死亡事故に限ると、3事件中3事件がすべて「未規制」だと答弁しました。長妻さんはこれを受けて「驚くべきことに、薬物使用者による交通事故の7割以上がその時点では合法(=未規制)の危険ドラッグだった」としました。

 長妻さんは「危険ドラッグは現行法に問題があるので、現行法を改正すべきだ。法律を改正するかどうかを、(厚労省)事務方に答弁を求めると、『必要ない』と答えるだろう。田村大臣、なぜ法律改正しなくていいと言えるのか」と問いました。これに対して、田村現大臣は「私も(野党時に)議員立法をしたことがあるが、(危険ドラッグの)物質を特定しないで大くくりにして規制することはできない。当時野党で、部会で厚労省を呼んで、『なんでできないんだ、なんでできないんだ』とさんざん聞いたが、罪刑法定主義により、(危険ドラッグ内に含まれている)物質を特定する前に禁止することはできない。それは世界中そうだ」と語りました。これを聞いていると、自民党の第2次野党期(2009年~2012年)では、官僚に法案をつくることを任せていた与党期からの脱却がなかなかできていなかったようすをうかがい知ることができました。その後、衆参ねじれになってからは、3党協議という格好で、閣法を修正していくという作戦をできる議員からやっていって、そこで大震災が起きて、一気に3党協議路線が加速したのだろう、と自民党の事情を感じ取ることができました。

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[画像]民主党の長妻昭さん、2014年8月4日、衆議院厚生労働委員会閉会中審査、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

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[画像]自民党の田村憲久厚生労働大臣、2014年8月4日、衆議院厚生労働委員会閉会中審査、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

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[画像]民主党の山井和則さん、2014年8月4日、衆議院厚生労働委員会閉会中審査、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

 長妻さんの後に質問に立った、山井和則さん(元厚生労働大臣政務官)は、「民主党政権時代から問題になっており、民主党政権時代に十分な取り締まりができなかった反省を踏まえて質問したい」と語りました。山井さんは法改正をせずに、運用でやっていくと、「(1か月後と予想されている)内閣改造の谷間になって、対策が後手後手になるかもしれない。田村大臣が続投するかどうかは私は知らないが」と質問。田村大臣は後段にはまったく反応せずに「国の唯一の立法機関である国会議員である山井さんのお知恵をぜひいただきたい」としました。

 田村大臣は、法改正をせずに運用上対応できる根拠として、「薬事法76条の6を使っていきたい」としました。

 この条文は次の通り。

 薬事法76条の6「厚生労働大臣又は都道府県知事は、指定薬物である疑いがある物品を発見した場合において、当該物品が第76条の4の規定に違反して貯蔵され、若しくは陳列されている疑い又は同条の規定に違反して製造され、輸入され、販売され、若しくは授与された疑いがあり、保健衛生上の危害の発生を防止するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該物品を貯蔵し、若しくは陳列している者又は製造し、輸入し、販売し、若しくは授与した者に対して、当該物品が指定薬物であるかどうかについて、厚生労働大臣若しくは都道府県知事又は厚生労働大臣若しくは都道府県知事の指定する者の検査を受けるべきことを命ずることができる。

2 前項の場合において、厚生労働大臣又は都道府県知事は、厚生労働省令で定めるところにより、同項の検査を受けるべきことを命ぜられた者に対し、同項の検査を受け、その結果についての通知を受けるまでの間は、当該物品及びこれと同一の物品を製造し、輸入し、販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で陳列してはならない旨を併せて命ずることができる」

 ということで、省令で「陳列してはならない」と命じることができるようです。

 こういったところで、3党協議以来続いてきた、田村さん、長妻さんらの国会議員の力で法律をつくりたい、という気持ちが垣間見えるところもありました。

 共産党の高橋千鶴子さんの質問に対して、田村大臣が「全然進んでいないという指摘は心外だ」と答弁すると、高橋さんが「私は『全然進んでいない』なんて言っていないじゃないですか。みんなががんばっていることはわかっていますよ。そのうえで何とかしようといているんじゃないですか」と反論しました。

 委員会で1週間ほど、ヨーロッパで危険ドラッグも含めた視察をしていたということで、与野党、国会議員で何とかしようという意識が感じられました。衆・厚労委は、第186通常国会で法案の参院送付が遅れ、参・厚労委で閣法の「知識的専門職の有期雇用の特別措置法案」と議員立法の「特定社労士法改正案」が継続審査になっています。これは秋の臨時国会で参院で可決しても、もう一度衆院での採決が必要になります。「公認心理師法案」は、すべて文部科学・厚生労働両省の共管になっていますが、衆院文部科学委員会で継続審査になっていて、これも連合審査会が必要になると考えられ、「夏休みの宿題」がイチバンたまっている委員会です。

 非常に苦労が多い厚生労働委ですが、自民党、公明党、民主党、共産党のほか各党が一致団結して、「国会と厚労省」という枠組みで危機感を持っているようで頼もしく感じます。健康保険料も年金保険料も金額が法律事項だった時代があり、右肩上がりの時代に参議院社会党がもてあそんで「保険料値上げ法案廃案」を勝ち取ってしたり顔だった時代があります。これによって、厚生省関連の多くの法律事項は、政令事項、省令事項、通達事項になったいったようです。たとえば、生活保護費の3年ごとの生活扶助費の基準額も、省から自治体への「通達」で決められている現状があります。政党に関係なく、国会の敗北が、今の社会保障制度の現状を招いたと言えるでしょう。こういった問題意識が、徐々に国会のあり方を変えています。

 だからといって、農林水産委員会のように、与野党関係なく族議員が集まるとされる「談合委員会」になっては困ります。ただ、秋の審議に向けた地ならしができたように感じられます。

 少なくとも自民党は秋の臨時国会で厚生労働委員の配置替えがある見通しです。

 ◇

 審議に先立ち、後藤茂之委員長は「7月24日の衆議院議院運営委員会の会派における理事配分の決定」によるとして、次世代の党の上野宏史さんの理事辞任を認めたうえで、統一会派「日本維新の会・結いの党」の井坂信彦さんを新しい理事に指名しました。

 ◇

 8月7日(木)午前9時からは、衆議院原子力問題に関する特別委員会でも、閉会中審査(原子力問題に関する件)が行われる予定です。

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