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ローマ法王は失言がお好き?

フランシスコ ・ローマ法王はアルゼンチンのご出身で、旧弊のバチカンを改革すべく、さまざまなご努力をされているようだ。

しかし残念なことに、その中で再三再四、ハンセン病を例えにされている。

ハンセン病の制圧と患者・回復者とその家族へのスティブマ(汚名)や差別と戦っている私にとっては看過できないことで、恐れ多いことではあるが、そのたびに書簡を差し上げているが、法王様が最も嫌っておられる法王庁の官僚主義に阻まれ、実際には私の書簡は読まれておられないのではと思われる。

なぜなら、今回で3回目の失言をなさっておられるからである。

キリスト教徒にもハンセン病に対する差別で苦しんでおられる方が今も多く存在する。それらの方々のためにも、例え法王様であっても、申し上げなければならないことは訂正されるまで申し上げなければならないと、活動を続けているところである。

ここに法王様への3回にわたる失言に対する訂正のお願いの手紙と、法王庁からの返信を時系列に公開します。

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★第1回目書簡
2013年6月13日


法王様

日本からご挨拶申し上げます。WHOハンセン病制圧特別大使および日本政府ハンセン病人権啓発大使としてこのお手紙を記しています。

まず初めに、毎年1月の世界ハンセン病の日に合わせてバチカンが発表されている、ハンセン病回復者に対する理解と協力に感謝申し上げます。ハンセン病とこの病気にかかった人々が直面している課題について人々の認識を高めるため、法王様が今年に発出されたメッセージや、法王庁立保健従事者評議会からの毎年のメッセージにも深い敬意の念を表します。

さらに、法王庁立保健従事者評議会の会長におかれましては、私が毎年行っているハンセン病回復者およびその家族に対するスティグマと差別をなくすためのグローバル・アピールに、2009年、他の宗教指導者と共にご賛同いただきましたこと、深く感謝しております。

法王様がよくご存じのように、ハンセン病は人類によく知られている最も古い病気の一つです。数世紀にわたって、身体的、心理的、精神的な苦痛を患者や回復者そしてその家族にもたらしてきました。今はこの病気が完全に治るようになったという事実にもかかわらず、世界には、この病気に対する迷信や誤解によって偏見と差別を受けているハンセン病回復者と家族が存在します。

近年になって、ハンセン病に関連する差別の問題において、素晴らしい取り組みがなされています。グローバル・アピールに加え、2010年12月には、国連総会が、ハンセン病患者、回復者とその家族に対する差別撤廃の原則とガイドラインを承認する決議を採択しました。現在、この原則とガイドラインが完全に実行されるよう努力がなされている段階ですが、それは容易なことではありません。

お伝えしたいのはこの点についてです。最近、法王様が法王庁聖職者アカデミーでお話しされたスピーチの中で、「出世主義」をハンセン病と結びつけてお話されたことを知りました。これは、この病気について深く染みついた固定観念を強めてしまうだけであり、最も嘆かわしい比喩であります。

この病気に対するスティグマを強めたり、ハンセン病回復者に苦痛を与えたりすることが法王様の意図ではないことは、疑う余地はありません。しかし、今回の場合、結果的にそうなってしまったと言わざるを得ません。法王様のお言葉は広く多くの方に伝わり、影響力がありますゆえ、言葉の選択において細心の注意を払っていただくよう、強くお願い申し上げます。特に、南米諸国にはカトリック信者が多く、ハンセン病回復者も多数存在するため、法王様のお言葉は非常に大きな影響を与えます。

また、これを機会に、ハンセン病回復者の尊厳と人権の回復のためにこれまで行ってきた活動内容を法王様にご報告申し上げるために、法王様のご都合のよろしい折に拝謁を賜りたく存じます。

最後に、世界ハンセン病の日にバチカンが下さっている重要なご支援に再度お礼申し上げます。世界からハンセン病とそれによる問題をなくしていくために、法王様と共に取り組むことができましたら幸甚に存じます。
敬具

笹川 陽平
日本財団会長
世界保健機関ハンセン病制圧特別大使
日本国政府ハンセン病人権啓発大使


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★バチカン法王庁からの返書
2013年6月27日 バチカンより


笹川様

教皇フランシスコ法王より、2013年6月13日付のハンセン病に関連した差別の重要な問題についていただいたお手紙に、お返事を書くよう言付かりました。

教皇は、貴方のご懸念を分かち合ってほしいというお気持ちに感謝されております。教皇は貴方にお目にかかることはできませんが、カトリック教会は全てのハンセン病患者・回復者へ全力で心を寄せており、彼らに対する差別をなくすために働き続ける所存です。

ご多幸をお祈り致します。
敬具

アンジェロ・ベッチウ
バチカン国務省総務局 長官代理


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★第2回目書簡
2013年10月10日


法王様

東京からご挨拶申し上げます。

何百万人ものハンセン病患者、回復者、その家族に対するカトリック関係者方々のあたたかいご支援に感謝を申し上げます。

バチカン保健従事者評議会からは、毎年、世界ハンセン病の日にハンセン病患者を支持するメッセージをお出しいただいております。また、WHO(世界保健機関)ハンセン病制圧大使として世界各地の病院療養所、コロニーを回っておりますと、患者や回復者、その家族を支援する活動をしておられるカトリック教会や信者の方々にお会いいたします。皆様のメッセージや活動は、ハンセン病患者・回復者にとって、大きな励ましになっており、あらためてこの機会に深く感謝申し上げます。

私は、本年6月13日に法王様の「出世主義はハンセン病だ」というご発言に対してお手紙を出させていただきましたところ、法王様の代理としてAngelo Becciu様から、法王様に私の手紙をご覧いただき、カトリック教会がハンセン病患者・回復者を心から大切に思っており、彼らに対する差別をなくすためにあらゆる努力を惜しまないという力強いご回答を頂戴いたしました。法王様をはじめ皆さま方が、ハンセン病患者、回復者、その家族に対するあたたかいお気持ちをお持ちであることを強く感じた次第です。

そうした中、法王様が10月1日に「ご機嫌取りは教皇制度のハンセン病」と仰せになられたことを伝えるイタリア紙のインタビューを目にいたしました。

法王様のご発言は、世界のメディアでも大きく扱われます。今回のご発言も、「法王がバチカンの『ハンセン病』を非難した」と大きく取り上げられておりました。

報道によれば、現在法王様は様々な改革に取り組まれておられるそうで、取り組むべき課題を述べられるにあたり、ハンセン病という言葉をお使いになられたのだと推察いたします。

ただ、ハンセン病の患者、回復者、その家族が置かれている状況を見ております私といたしましては、悪いものや、好ましくないものへの比喩表現としてハンセン病という言葉が使われることは大変残念な事だと思っております。このことは、病気とそれに苦しむ人々への古い固定概念を助長させるものであります。

ハンセン病は古代から、治らない病気、業病として恐れられ、患者はもちろんのこと、その家族までが苦しめられてまいりました。

現在、ハンセン病は薬で治る病気となりました。しかし、長年にわたって人々の心に染みついてきたハンセン病への認識は変わらず、今も患者や回復者、そして家族に対する差別が残っております。

そのような状況を改善し、ハンセン病回復者が尊厳のある人生を送れるようにするためには、差別をなくすためのあらゆる機会をとらえていかなければなりません。

国連では、2010年12月の総会でハンセン病差別撤廃の決議を採択され、決議に付帯する文書「原則とガイドライン」では、各国に今なお残っている差別法の撤廃や、ハンセン病に対する認識の変革の必要性が唱えられております。差別用語や侮辱的な使用を排除すべきであることも指摘されております。

ここに法王様がハンセン病を悪いものを示す形容辞としてお使いにならないよう、謹んでお願い申し上げます。

病気の回復者が社会復帰し尊厳のある人生を送れることは、我々が目指す共通のゴールであると信じております。

世界中の国の指導者、数多くの信者の方々に大きな影響力をお持ちの法王様におかれましては、私どもの取り組みにご理解をいただきますとともに、お力添えを賜りたく、心よりお願い申し上げる次第でございます。
敬具

笹川 陽平
日本財団会長
世界保健機関ハンセン病制圧特別大使
日本国政府ハンセン病人権啓発大使


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★バチカン法王庁からの返書
2014年3月10日 バチカンより


笹川様

2013年10月10日付の、貴方から頂戴した、インタビューにおいてフランシスコ法王が使われた「ハンセン病」の言葉に関するお手紙を拝受しました。ここ数か月法王宛のお手紙を大変多く受け取っておりましたので、お返事が遅れてしまい大変申し訳ございません。

法王は、再びお手紙をくださった貴方のお心遣いと、貴方のハンセン病回復者へのコミットメントに感謝されています。

ご多幸をお祈り致します。
敬具

アンジェロ・ベッチウ
バチカン国務省総務局 長官代理


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★第3回目書簡
2014年7月15日


法王様

法王様が「小児性愛はカトリック教会に伝染しているハンセン病だ」とおっしゃったという報道を知り、非常に驚き、落胆いたしました。私はこれまでに2度法王様にお手紙を差し上げ、2度とも、法王様がハンセン病を比喩として使われたことに関して心強いお返事をバチカンからいただきました。私はこの度また、法王様にお手紙を差し上げなくてはなりません。これまでに差し上げた手紙のコピーと、バチカンから頂いたお返事をご参考までに添付いたします。

ハンセン病は世界で最もスティグマを与える病気であり、病気で苦しむ人はいくつかの国々で深刻な偏見に苦しんでいます。カトリック教会の有力者が子供への性的虐待をハンセン病に例えることは、彼らが最も望まないことです。

どうか法王様におかれましては、そのお言葉が非常に影響力があることを御心に御留めめいただき、ハンセン病患者・回復者に痛みと苦しみを与える言及をお控えいただきまして、彼らが誤解された病気のスティグマをなくすために行っている努力を無下にしないよう、お願い申し上げます。
敬具

笹川 陽平
日本財団会長
世界保健機関ハンセン病制圧特別大使
日本国政府ハンセン病人権啓発大使


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なお、原文は英語ですが、日本語に翻訳して掲載しました。
3回目の書簡についての返書は、まだ届いておりません。

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