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「虎の穴」としてのすき家

ここ最近、大手飲食チェーンの社長や幹部が、相次いでその極端な経営哲学を開陳し、物議を醸している。

先日はワタミの社長が「俺たちゃ家族!労組はいらねぇ!」と宣言していたが、すき家の第三者委による報告書も各所ですでに話題になり、捨てるところがない食材の様相を呈している。

【「自分はやってきた」という意識】

ある経営幹部と当委員会の Q&A は次のようなものである。

Q「恒常的に長時間労働が生じていたと思うが?」

A「自分も、月 500 時間働いてきた。今にしてこうなったかというと、そうではないと思う。結果ひどいことになって店舗クローズしたが、過去にもこういうことがあり、その都度、立て直しをしてきた」

Q「あなたが 500 時間頑張れた理由は何か?」

A「自分は GM になりたいという目標があった。また、クルーも同じくらい働いていた」

Q「部下の仕事に対する姿勢や考え方はどうか?自分と比べても」

A「レベルが低いと思う。AM はもっと店を好きになってほしい。今きっと嫌いなのだと思う」

Q「GM になるにはどんな資質が必要か?」

A「逃げない心」

第三者委員会調査報告書の37.p

これに先立って報告書は、経営幹部の思考・行動パターンの問題の1つとして「経営幹部は、強い使命感と超人的な長時間労働で、すき家を日本一にしたという成功体験を共有しており、部下にもそれを求めた」と指摘している(35.p)。

ここを読んだときに「あ、虎の穴だ」って思った。

虎の穴というのは、言わずと知れた漫画「タイガーマスク」に登場する悪役レスラー養成機関で、選りすぐりの悪たちが集められ、切磋琢磨していくわけだ。いわゆる生存競争のふるいにかけられ、うずたかく積み上げられた屍の頂上でごく少数の強者が生き残る、というシステム。まさにそれではないか、と。

このすき家の幹部自身が嘘偽りなく「超人的な長時間労働」をこなせたとしても、当たり前ながら全員が全員同じことができるわけではない。同じように「GM になりたいという目標があった」としても、心身共に疲れ果て、ぶっ倒れてレースから棄権した人もいるだろう。また、ピラミッド型をした会社組織の構造上、この幹部と同程度に働いてもそれ相応の地位を確保できなかった人がいることは確実なのだ。

別に、なんとしても組織の上に立つんだという極端な世界観を生きる人がいてもいい。というか、そういう人が誰もいないという組織はやっていけない。けれどそれは、「給料はそこそこでいいから、ゆとりのある生活がしたい」という人だっていて、そうした人の生き方も尊重する限りにおいては。

全員が強制参加のトーナメント戦で、死屍累々の上に少数の勝者だけが登り立つ――この企業の病巣は、そうした貧しい想像力にあるのでないかという気がするのである。

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