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AVや風俗で働いて留学資金を貯めることの是非について ‐ 榊 裕葵

7月30日にBLOGOSさんと日本財団さんが共催したブロガーミーティングに参加して、麻美ゆまさんの話を伺い、AV女優やタレントとして大活躍の中、悪性腫瘍が見つかり、卵巣と子宮の全摘出手術という辛い経験を乗り越え、抗がん治療を続けながらもタレント活動を再開した彼女のことをもっと知りたいと思って、麻美さんの自叙伝、「Re Start」 〜どんな時も自分を信じて〜を読んでみた。

■留学は麻美ゆまさんの夢

本には彼女の生い立ちやAV女優としての生活、闘病記などが赤裸々に書かれていて、私は一気に通読してしまった。その中で印象に残った場面の一つは、麻美さんがAV女優になることを決断した理由を記した箇所で、そこには、家計を助けなければならない事情があったことに加え、自分の夢として海外留学を実現させたかったことが書かれていた。

また、その場面を読んでいて、私は以前ある風俗店の経営者の方から、「求人に応募してくる女性は様々な事情を持っているが、学生や若いOLの方の中には、留学資金を稼ぎたいなど、向学心の高い方も多い。」という話を聞いたことを思い出した。

そこで、今回の記事では、男性の私には語り尽くせることではないかもしれないが、留学資金のために女性がAVや風俗で働くことの是非について、私なりの社会人経験や社会保険労務士としての見識を踏まえ、論じてみたい。

■留学の目的をしっかり考える

まず、お金の有無とか、AVや風俗で働くとかの前に考えてほしいのは、漠然とした留学に対する憧れではなく、「なぜ自分は留学したいのか」ということである。

語学として英語が学びたいというならば、必ずしも留学をする必要はないかもしれない。駅前留学では物足りなければ、現在はITが発達しているので、スカイプ等で外国にいる教師と直接つながって、臨場感を持ちながら勉強をすることもできる。

外国人旅行者も多いので、そういう方をサポートする仕事やボランティアに従事することで、国内にいても生の英語に触れるチャンスも決して少なくはないはずだ。

また、英語を使う仕事がしたいとか、海外での生活を体験したいということならば、留学をするよりも、海外展開をしている企業に就職するほうが近道かもしれない。

私自身、留学経験はなかったが、サラリーマン時代に働いていた会社では入社1年目から海外出張へ行き、時には海外から海外へ飛び回るようなこともあった。

私のことを知っている人ならば、私がいた会社が大企業だったからと言うかもしれないが、今は中小企業でも多くの会社が海外に進出している。その会社で働きが認められれば、社長秘書などの役割で海外に出張するチャンスが得られるのではないだろうか。むしろ、中小企業のほうが、語学が得意な人は少ないので、多少なりとも英語ができれば、自分に「白羽の矢」が立つ確率は大企業よりもずっと高いであろう。

また、「語学留学」というものが、企業の採用面接では、世の中で言われているほど評価されていないのではないかということも私は感じている。

英語が話せるだけでは、職業人としてはどうにもならない。私も留学経験はないが、大学の英会話サークルに所属をしていたので、就職時、多少は英語ができるつもりでいた。しかし、英語のテレビ会議について行けず、英文契約書の読解にも難儀し、悔しい思いをした。ビジネス英語力は、実務で揉まれる中で徐々に鍛えられていったものだ。

会社は、「英語を話せる人」ではなく、「英語で仕事ができる人」を求めている。職歴がない人が、語学留学で英語の勉強だけして帰ってくるのであれば、就職活動をしても内定が決まらず、費用倒れになるリスクも考えなければならない。

つまり、英語を使って仕事をしたいのならば、留学ありきではなくて、まずは大学をしっかり卒業したり、TOEICなどのペーパーテストで良い点を取ったりして履歴書にハクをつけ、海外展開している会社に就職してしまうということも、「英語で仕事をする」を実現するための有力なルートであることを知っておいて頂きたいということである。

もし、大企業や官公庁などに入れたならば、社費や公費で留学ができるチャンスもあるかもしれない。

■留学のための資金調達手段

以上のような観点を踏まえても、「やはり私は今、海外留学をしたいのだ」という考えが揺るがないのならば、留学資金の調達手段がAVや風俗以外にはないかを考えてほしい。

例えば奨学金である。TOEICの成績や大学での成績などによって審査が行われるので、必ずしも容易なものではないが、条件に当てはまるものがないか、日本学生支援機構(JASSO)のホームページなどを確認してみると良いであろう。

学生であれば、自分の大学が、留学の支援や交換留学プログラムなどを行っていないかも確認をすべきである。

■留学のためにAVや風俗で働くことの是非

奨学金の受給要件に該当せず、親からの資金援助も得られないということならば、AVや風俗という手段が、選択肢の一つとして視野に入ってくるのではないだろうか。

この点、インターネットの掲示版などでも「留学資金を貯めるため、風俗で働こうと思うがどう思いますか?」という質問を見かけるが、このような質問に対しては、「風俗以外の仕事でお金を貯めたほうが良い」というアドバイスが多い。

しかし私は、自分が強い意志を持って決め、自分の夢をどうしても実現させたいということならば、他人の意見で否定されるべきではないと思っている。

人生には限りがある。時給800円で月に160時間働いたとしても、12万8千円である。留学に必要な資金が300万円だとしたら、額面全額を貯金しても2年近くかかる計算になる。実際は社会保険料や税金を引かれるので手取りはもっと減るし、生活費も必要であるから、切り詰めて月5万円貯蓄しても丸5年かかってしまうのが現実だ。

10代20代という人生において貴重な時期に、資金を貯めるだけで5年間も費やしてしまうのはあまりにも長すぎると感じるのは無理もないだろうし、人によっては色々なチャンスを逃してしまうことにもなりかねないであろう。

期間を決めてAVや風俗の仕事に従事し、月30万円貯蓄できれば、1年以内に目標資金を貯めることができる。

風俗で貯めたお金で学位を得たからといって、その学位が色あせるわけではないし、人生のその瞬間に本当にやりたいことがあって、それを諦めずに、自分の力で実現させたのだから、素晴らしいことだと私は思う。

■AVや風俗の仕事で学べることや得られること

それに、AVや風俗もサービス業のひとつであることは間違いないので、撮影の経験や色々な人との出会いを、職業経験として前向きに捉えれば、今後の人生につながることがあるのではないかと思う。

AVや風俗の仕事は、文字通り、生身で人と人が触れ合う仕事なので、見方によっては、相手の気持ちを察したり配慮をしたりという、どんなビジネスにも必要な感性が最も磨かれる仕事なのではないだろうか。

麻美さんの著書の中でも、初めて撮影に臨んだとき、現場に流れる緊張感や、スタッフの高いプロフェッショナル意識に驚いたといことが書かれていた。麻美さん自身も、こうしたらカメラ映りが良くなるとか、こうしたら見る人に元気を与えられるだろうとか、撮影を通じてスタッフや視聴者への気配りを身につけていったとのことだ。そういう前向きな姿勢があったからこそ、AVの世界でトップに上りつめたのであろう。

このように、真剣に頑張っていれば、AVであれば出演できる作品が増え、風俗であれば指名が増えて、結果として留学という目標にも早く近づくことができるだろう。

また、風俗店の場合には、希望すれば店が用意するマンションに入居できるのもメリットである。生活費の中で家賃は最も大きな支出なので、その分を全て貯蓄に回すことができるのは大きい。

■法律や社会保険の知識は必要

ただ、AVや風俗で働くに当たっては、「理不尽な出演契約をさせられる」「罰金を取られる」「退店を認めてくれない」などのトラブルが発生する場合があることに気をつけたい。

麻美さんも、最終的には自分の意思でAV女優になることを決めたが、最初は当時所属していた事務所から、「AV出演が契約内容になっていて、出演するまでは辞められない」などと脅されたこともあったそうだ。

このようなトラブルに備え、AVや風俗の仕事をするときには、是非とも法律の知識を持っておいて頂きたい。

AV女優や風俗店で働く女性は原則として個人事業主となり労働基準法による保護は受けられないが、本人の意思に反して身柄を拘束したり、望まない仕事をさせたりすることや、過度の罰金制度は民法90条の「公序良俗」に違反する。

また、無理やり結ばされたAVの出演契約や風俗店の入店契約は、民法96条の「強迫」に該当するものとして取消すことができる。このとき、女性側が損害賠償を受けることもない。「入店契約を破棄するなら50万円払え」と言われた場合も、法的な根拠は無く応ずる必要はないので、自力で解決が難しい場合は弁護士などの専門家に相談をしてほしい。

また、個人事業主なので社会保険には加入できないから、病気や怪我をしたときに備え、国民健康保険にきちんと加入し、保険料の滞納は絶対に避けるべきである。

■まとめ

ここまで色々と述べてきたが、留学をしたいという真剣な気持ちがあるならば、AVや風俗の仕事で留学資金を貯めことに対して、その決断に至るまでの間で色々とアドバイスすることはあれど、彼女の人生における決断を否定するべきでは無いと私は考える。

私は独身なので、自分の娘がそうだった場合にどういう気持ちになるかは正直分からないのだが、少なくとも自分の友人から相談をされ、彼女が、彼女自身の価値観に基づいて真剣に考え抜いた末の決断ならば、応援をしたいと思っている。そして、その世界で働くからこそ学べることを前向きに吸収することと、自分が安心して働けるように法律上の権利について知っておくべきことをアドバイスするであろう。

《参考記事》
■闘病と雇用維持・職場復帰について。 「女性と闘病~大野更紗×麻美ゆま対談」を聞いた、ある社労士の備忘録。 榊 裕葵
http://sharescafe.net/40116573-20140731.html
■京都の市バスで足の不自由な女性を介助しようとして罵倒された運転士が気の毒だった件。 榊 裕葵
http://sharescafe.net/39775536-20140710.html
■社員のためのフェラーリ!?株主総会で知った島精機流「強い会社」の作り方 榊 裕葵
http://sharescafe.net/39610027-20140629.html
■実は、我が国の労基法は世界水準に達していないのでは!?という警鐘。榊 裕葵
http://sharescafe.net/37110706-20140217.html
■ 中小企業の経営者が知っておきたい有給休暇対応 4つのテクニック: エンプロイメントファイナンスのすゝめ
http://blog.livedoor.jp/aoi_hrc/archives/37538086.html

特定社会保険労務士・CFP 榊 裕葵

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