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「キノコ雲=核爆発ではない」というおはなし



キノコ雲を見て、「あ、原爆だ」と連想する人は多いと思います。核爆発でキノコ雲ができるのは周知のとおりですから、その連想自体に問題はありません。

しかし、キノコ雲ならば核爆発である、と言ってしまうと間違いです。なぜなら、キノコ雲は核爆発がなくても発生するからです。もしも、キノコ雲のあるところ必ず核爆発あり、と勘違いしていたら、シリアやウクライナやガザで立ちのぼるキノコ雲を見て日常的に核兵器が使われているというとんでもない認識にいたるかもしれませんし、デマを信じ込んだり拡散してしまう危険性さえあります。

私の身の回りにも誤解している人が何人かいました。誤解というよりも、キノコ雲→核爆発というイメージはやっぱりありますよね。戦争や武器なんかに関心のない人にとって、キノコ雲→核爆発というイメージを持ち、そこで止まっているのは自然なことです。「キノコ雲=核爆発ではない」ことを理科的に理解できる人は多いはずですが、そこまで考えないのが当たり前なのかもしれないな、ということをきっかけに入門編的なものを書いてみることにしました*1


キノコ雲発生のメカニズム


「キノコ雲=核爆発ではない」ことを理解するには、キノコ雲ができるメカニズムを知るのが一番です。ここでは、爆発*2によってできるキノコ雲を説明します。

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  • 爆発(爆薬に点火 ⇒ 爆薬が起爆、爆轟(ばくごう))。
  • 高温・高密度のガスが発生。この時、衝撃波も発生します。

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  • 空気が熱せられて上昇気流が発生し、火球が上昇します(熱気球と同じ原理)。
  • 気圧が下がった地上付近には空気が流入します。

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  • 火球の上昇とともに上向きの空気流が生まれ*3、上部の雲に吸い込まれます。
  • 雲の中では、熱いガスがドーナッツ状に環流しています。
  • 雲の中心付近は上昇気流、表面は下降気流という状態です。

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  • ガスの塊はある程度の高度に達すると上昇をやめます。
  • 高度が高い場所では気圧が低いので、雲がふくらみます。
  • 環流する気流のせいもあり、次第にキノコ状の雲を形成し始めます。
  • キノコの柄の部分は、吸い上げられた水蒸気を含む空気が冷やされて雲になったものです。

こうした過程を経てキノコ雲は出来上がります。
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(キノコ雲。自作アニメーション)

なお、核爆発でできる雲は組成などに特徴があることから「原子雲」と呼ばれたりしますが、キノコ雲が発生する基本的なメカニズムは同じです。

核爆発以外のキノコ雲


キノコ雲の発生過程を見れば、核爆発がキノコの形状を作るための必要条件ではないことが分かります。言い換えると、キノコ雲は核爆発に特有の物理現象ではないということです。事実、核爆発に限らず、ガス爆発、水蒸気爆発、粉塵爆発など、爆発の種類はなんであれキノコ雲はできます。条件がそろっていれば爆発や燃焼さえ必要ありません。

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"Blowing Smoke". Licensed under CC BY 2.0 via Wikimedia Commons.
(水蒸気でできたキノコ雲@サンフランシスコにある科学博物館「エクスプロラトリアム」)

小規模なガソリン爆発や火山の噴火、特撮(CGを使わない)の爆破シーンといった戦争や核兵器とは無縁の場所においてもキノコ雲を見ることができます。


(ガソリン爆破)


(桜島の噴火)


(西部警察の爆破シーン。8分15秒or14分40秒のキノコ雲が顕著。というか爆破多過ぎ。)

◇ ◇ ◇

私たち日本人はキノコ雲と核兵器をセットで学ぶ機会が多いですから、キノコ雲の映像が核の恐怖をともなって刷り込まれているのも無理からぬことではあります。しかし、核兵器の恐ろしさを知り、その非人道性を伝えていこうとするのなら、なおさら「キノコ雲=核爆発」というような不正確な理解でから騒ぎすることは慎まねばなりません。なにより、どこにでも起こり得る核爆発によらないキノコ雲を見て、誰かを不安に陥れたりデマの発信源になったりすることは厳に避けたいものです(自戒を込めて)。


*1 「キノコ雲ならば核爆発ではない」ことを理解されている方にとってはイマサラにも程がある記事です(^_^;)
*2 二次爆薬や三次爆薬の爆轟を念頭にしています。
*3 レイリー・テイラー不安定性という現象です。

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