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人事コンサルタント・城繁幸氏「政策カフェ」で語る 「賃金解雇の法制化は、8割の人にとって解雇規制の強化になる」

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「政策カフェ」に人事コンサルトの城繁幸氏が登場

毎月1回、NPO法人 万年野党で開催している「政策カフェ」。有識者とともに、政策に関心を持つ経営者やビジネスマン、OLなどが、社会課題について、政党や立場を超えて、料理とドリンクを片手に政策談義を行おうという集まりだ。

7月は23日に丸の内にて、人事コンサルタントの城繁幸氏、岸博幸 慶応大学教授、俳優の辰巳琢郎氏、原英史 政策工房社長をゲストに行われ、会場はイスが足りなくなる程の満席になり、今回から始められたニコニコ生放送による生中継には、1万9千人近い来場者が訪れるなど大盛況となった。

今回は、その中からゲストスピーチを行った城繁幸氏のラウンドを紹介していく事にしよう。

終身雇用で救われるのは、高学歴で若い男性だけ

城氏は、「よく安倍政権の成長戦略の中で、岩盤規制という話が出てくる。岩盤の様にキツい規制があって、なかなか破れない。これは医療なんかもそうだが、医薬品のネット販売なんかは小さなもので、本当の岩盤は雇用だと思っている。今日はその事について話したい。」と話し始めた。

「私がこの中で絶対的な支配者であるとします。ある法律をつくって、国民に命じます。『終身雇用を守りなさい、政府が年金が払える、今は65歳になりましたが、60歳まで雇いなさい』と。そうする事で、失業給付を払う額を減らす事ができ、再就職の為のお金も減らす事ができる。さらに言えば、子どもの進学費用の援助なども抑えられる。だから『企業は絶対終身雇用を守りなさい』という法律を出す。

しかし、それでみなさんが守られるかと言えば、そんなに甘くない。一部の大企業と公務員はそれができる。体力のあるグローバル企業、大手自動車や昔の大手電力、インフラ系もできる。

そういう所にどういう人が入れるかといえば、皆さんの中で一流と言われる大学を卒業している人。私のこれまでの採用の経験からすればMARCH以上。年を取っているとダメなので、3年以上ダブっていない方。ずっと雇い続けなければならないわけだから、途中で休職する方、とくにキャリアの前半で休む方はなるべく雇いたくない。

なぜなら、若い間は安い賃金で働いてもらって、ある程度年を重ねて40歳くらいになると生産性を上回る賃金を与えてペイするというのが終身雇用の仕組みなので、40歳未満で休職する方は雇いたくない。なので、『申し訳ないですが女性は他の会社に行ってください』という事になります」

公平な競争がなされない中では完全な「自己責任」にはすべきではない

国民の皆さんの中で、一流の大学を出て、若い男性の方は、無事終身雇用というセーフティーネットに入る事はできるが、それ以外の人は、残念ながら、「他で何とかしてください」という事になると、城氏は指摘する。

しかし、「自分で何とかしてください」と言われても困る。むしろそういう人の方が優秀でないかもしれない。女性も優秀でもあっても、生活費稼がなければならない中で、どうするかという事になる。その際の城氏のたとえ話が分かりやすい。

「そうして困ったところで、市場経済に反対する日本のリベラルの方に相談に行くと、『資本家が悪い、大企業が悪い、とりあえずオスプレイにでも反対でもしましょう』と言われる。私は政治的な話をするつもりはないが、オスプレイに反対して、どうやって生活を面倒見てくれるかと言えば、労働雇用問題に関係ない。

もっと言うなら、あなたたちリベラルであるなら大きな政府をめざすはずでしょ。みんな民間企業に全てを丸投げして面倒見ろというのは、究極の小さな政府。郵政民営化の際に、『ユニバーサルサービスを守れ』と反対したの誰ですか、と思います」

城氏は逆に、保守の政治家の門戸を叩いた例も紹介する。

「今は、だいぶ変わって来ましたが、10年くらい前までは、『それは自己責任、努力しなかった自分が悪い、自分で何とかしましょう』と言われた。そういうロジック、考え方もあると思うが、それは完全に公平な競争がされた結果として言える余地があると思う。

終身雇用の様な仕組みもなくて、純粋に今雇いたい人を雇って、解雇したい時に解雇できるとなっていたら、それで『努力不足』と言ってもいいと思うが、残念ながらそうなっていない。『勤続年数を長く保ちなさい』と企業が言われたら、体力の劣る人や、途中で休職する人が排除されるのは当たり前の事。そういう規制ができている中で、完全な自己責任だというのは間違い」と話す。

若者のせいにせず、大人が音頭を取って雇用改革を行うべき

これまでの話をまとめると、今のこの国の現状を整理すると、優秀な一流の大学を出ている年齢の若い男性は、民間企業のセーフティーネットの中に入れるので、おそらく苦労を感じていない。一方でそうでない人は、「何で日本は生き辛いのだろう」と思う事になっているという事になる。

城氏は、「10年から20年くらい前から言われている事だが、日本では最も優秀な学生が、大企業、インフラ系、公務員に就職するが、アメリカやロンドンなどでは一番優秀な人がベンチャーに行ったり、非常にリスクの高い金融に行ったりする。日本は、既存の大企業やインフラ系に就職する。だから経済が成長しないと言われる。しかし、『だからこうした日本人の若者の性根を叩き直せ』などと言われるが、そうではない。」と指摘する。

「日本の大企業、官庁というのは、ノーリスク・ミドルリターン。そうでないベンチャーや中小企業、零細企業というのは、ほぼノーリターンという現状からすれば、合理的な選択をした結果、こういう選択になっている。日本人の国民性や若者の思考の問題ではなく、社会全体を変える必要がある。その為には若者も変わるべきなのかもしれないが、大人が音頭を取って変えていくべきだと思います」

雇用規制緩和と言われるが、実際には8割の人に取っては雇用強化になる

有識者と参加者が政策談義を行うという「政策カフェ」の中では、参加者と城氏の意見交換が行われたので、その中からもいくつか紹介しておこう。

参加者からの「自由競争の中で多少のミスマッチを経ながらも均衡が生まれていく事を選ぶべきか」との質問に対して、城氏はこう答えた。

「理想論を言うのであれば、何らかの均衡状態に速やかにいくべき。例えば、もう一回公共事業をとはならないし、しない方がいい。さらに言えば、日本はジェネラリストを育成している。事務的な事をやった人が、営業もやっていたり、技術的な事までやっていたりしている。

これは終身雇用なので、社内で潰しが効く人材を育成しようとしてきた結果だが、そういう方というのは、ぴったりフィットするケースも少ないが、全然合わないというケースも少ない。例えば、30年以上務めていた人が、業界も違う仕事も違うというところに行かなければいけなくなって、『大変だ』と言うがついていっている。職務給ベースで行われた場合、こういう事にはならない。その意味では、日本の方が流動化のショックは少ないと思います」

また、解雇規制の緩和についてはこう話した。

「実際のランディング際の話だが、解雇規制の緩和をした場合、従業員を解雇できるようにしても、おそらく大半の企業では何も変わらないと思う。カルロス・ゴーンみたいな人は別だが、日本の経営陣というのは新人の時から99%がその会社で飯を食ってきた人間なので、日本刀を渡されても怖がってふるわない。よほど倒産近くまでいかない限りは、リストラ乱発という事にはならないと思う。

むしろ、今まで普通に首を切られていたような中小企業において、半年分の基本給を払えという法律ができたとしたら、それ自体が強力なセーフティーネットになる。むしろ解雇を抑制する。よく解雇規制緩和などと言われているが、終身雇用が文字通り守られている企業など2割しかいない。むしろ残りの8割の労働者にとっては規制強化。正確には、解雇の規制強化、金銭規制の強化と言うべきです」

日本特有の「残業に制限がない実態」を世界共通だと思っている人さえいる

「ハイリスク・ハイリターンにするのであれば、理想やビジョンを提示した上で、それにあった政策を出すべきではないか」との質問に対して、城氏はこう答えた。

「確かにビジョンという意味では足りない気がする。例えば、金銭解雇しますよという事のビジョンが語られるのを聞いた事がない。成長産業へのスムーズな労働力の移動だという程度で、自分にどう関わるのか分からなく、市民から言うとビジョンでない。

凄く分かるのは、組織の中で働いている方。そういう方が家族にいると、会社の辞令一枚で家のローンがあるのに転勤、結婚したら総合職なのに肩を叩かれた女性などこうした経験をしている人が沢山いる。終身雇用を守るからにはどこか欠員が出た所に移動させていかなければならないからだ。

この国では、そういう事に対して、司法判断も労働組合も寛容だ。もっと言うならば、この国には事実上残業時間に上限がない。というのは残業料で雇用調整をするので、暇な時にはドンドン帰らせて、忙しくなったら青天井で残業させる事で調整する仕組みになっているからだ。それは組合も認めて残業時間はいくらでもとなり、その結果、労災では300人以上認められており、実際には数倍の方が亡くなっている。

日本人のほとんどが、この事を『しょうがない』、『日本に生まれたからには宿命だ』と思っている。もっと言えば、『世界のどこもがそうなんじゃないか』と思ってさえいる。『そんな事ないですよ』と提示した上で、『もっと違った社会ありますよ』と言えば、もっとマジョリティの支持が受けられるのではないかと思う。政治の側にそういうロジックがない。おそらくブレーンみたいな人がいて『労働力のスムーズな移行』など、言われた事をそのまま言っているような印象はあります」

この日は、他のゲスト等も交え、満員の会場は、様々な場所で政策談義がおき、熱気に包まれていた。もう1人のゲストスピーカーである岸博幸氏の話は、また別の機会に報告したい。

来月は、8月29日に「政策カフェ(葉月)」をロバート・フェルドマン(モルガン・スタンレーMUFG証券㈱・チーフエコノミスト)、小黒一正(法政大学准教授)、磯山友幸(経済ジャーナリスト)、原英史(株式会社政策工房社長)ほかをゲストに迎えて行う。こうした政策談義に、是非さらに幅広い層のみなさんに参加してもらえればと思う。

特定非営利活動法人「万年野党」
Facebook: /yatoojp
Twitter:  @yatoojp
事務局長 高橋亮平
Facebook: /ryohey7654
Twitter:  @ryohey7654

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