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陸自UH-Xと韓国の汎用軽ヘリコプター

コリアン・エアロスペース・インダストリーズ(KAI)は、韓国産業通商資源省と国防省防衛事業庁から、軽民間ヘリコプター(LCH)と軽武装ヘリコプター(LAH)の開発メーカーに選定されたと、2014年7月23日に発表しました。

LCH/LAHは1万ポンド、約4.5トンクラスのヘリコプターで、総額1兆ウォン以上のプロジェクトになります。政府の援助と海外からの直接投資でまかなう予定です。KAIではアグスタ・ウエストランドやエアバス・ヘリコプターズ、ベル、シコルスキーと開発参加について交渉中です。

韓国KAI、4.5トンクラス双発の民間/武装ヘリを開発
http://flyteam.jp/news/article/38435
これは我が国のUH-Xプログラムに触発された可能性があります。

詳細は不明ですが、我が国よりのオリジナルのUH-Xよりも遥かに合理的な考えです。航空産業を振興し、世界に輸出を増やそうという韓国政府の思惑にブレがありません。民間市場である程度の売れないと、軍における調達コストも運用コストも下がりません。

前にも書きましたが実際に一度は官製談合でスクラップになった後のUH-Xでは、内局は民間で売れることを前提としたプロジェクトに好意的です。その場合民間型が4.5トン、陸自向けが4.8トンあたりを想定しており、以前のUH-Xの5トンに拘泥していません。

率直に申し上げて、かつてのUH-XはOH-1改良型ありきで要求仕様はその機体に沿って書かれたものです。部隊運用からの要求ではありません。ハーフパレット搭載が求められたのも競合が想定される既存機に不利になるように、だからでした。

例えばUH-Xは軽いBK117(EC145)あるいはその軍用型のEC645にして、機数を減らしてUH-60の調達数を増やす、などというポートフォリオなども考慮すべきでした。また軽汎用ヘリの任務自体を見直す必要もあったでしょう。BKあるいはその派生型を導入すればかなり安くあがったでしょう。米軍がなぜBK117/ラコタを採用したかよく考えるべきです。

OH-1改良型で世界・国内の民間市場に売るなど白日夢もいいところです。かつて三菱重工が開発したMHZ2000の二の舞いになるのは確実で税金をドブに捨てるようなものでした。

まず、川崎重工は世界にセールス・サービス網を殆ど持っていません。

何より調達・運用コストが高すぎます。

そもそも一基4億円とされるTS-2を二基搭載して、機体単価を12億円に収める、などという陸幕装備部の寝言を内局が抗しきれず、予算を通したのも間違いでした。

まともなユーザーは怪しげな国産エンジンを嫌います。民間では1機だけというユーザーも多く、稼働率には敏感です。ターボメカなどの世界中で売れているエンジンならばどこでもパーツが安価に入りますが、専用の国産エンジンではそれは望めません。

コストを考えるのであれば開発と平行して耐空証明を取る必要があります。耐空証明を後から取るならばコストは何倍もかかります。

ですからエアバスのA400Mは開発と平行してそれを行ってわけです。ところが川重のC-2はそれを行っておりません。つまり民間型を開発するのであればかなりのコストがかかり、それを回収するためにはより多くの機体を得る必要があります。川重にはその気も体力もありません。実はC-2の民間転用は現実的ではないと川重内部の人間も認めています。

でかつてのUH-Xでは自衛隊型を開発しておっとり刀で、民間型を開発することになっていました。当然ながら陸幕も川重もそれが不可能であることを知っていたでしょう。であれば、UH-Xの民間型など本気では無かった。財務省と内局をだますための方便だったということでないでしょうか。

仮に民間型を開発しても5トンの民間用のヘリではエアバス・ヘリコプターズが、X5を開発予定です。これと真正面から戦うこことになります。ブランド力、コスト、サービス網などの面で世界最大のメーカーにかなうはずもありません。

ODAなどでヘリをばらまければ、また多少輸出の目はあるでしょうが、現在それはWTOで禁じられているのでその手は使えません。

韓国が4.5トンにした理由のひとつはエアバスのX4との競合を避けるためではないでしょうか。韓国の国産ヘリ、スリオンはエアバスとのジョイント・ベンチャーですから、今度のプロジェクトもエアバスと組む可能性があります。

それにUH-Xに対するライバル心もあるかも知れません。当然そのくらいの情報を韓国は持っていると考えるべきです。

UH-Xも本命はエアバス・川重のジョイント・ベンチャーと見られていますから、韓国のプロジェクトがUH-Xに与える影響は少なくないでしょう。

それからもう一つの競合と目されているアグスタ・ウエストランドの4.5トンクラスのAW169ですが、単にライセンス生産ではコストが膨れるだけで国内メーカーに補助金的な仕事をバラ舞くだけになります。機体コンポーネントの一定パーセンテージを獲得しない限り、メリットはありません。

実はアグスタ・ウエストランドと三菱重工が話し合いを持っているようです。三菱重工はシコルスキーのS-76の提案を検討しておりましたが、サイズが要求に合わない。UH-60の生産もいつまで続くかわからない。それにUH-60の調達予算がオスプレイに喰われるなどといった、危機感もあるのでしょう。

アグスタ・ウエストランドは当初、富士重工と話を進めていたようですが、同社のメインはあくまでベルの412ベースの機体でAW169は保険に過ぎません。

アグスタ・ウエストランドと三菱重工の利害は一致しております。

今月の航空ファンでもUU-Xがらみの記事が掲載されていますが、些か陸幕援護、国内メーカー援護の思惑の色が強いように思えます。

特に完成品あるいは、国内の組み立て生産では稼働率が確保できない、などというところがそれです。

すでに何度もご案内しておりますが、国内で稼働している民間や地方自治体などのEC135の稼働率が9割を超えているのに、海自が練習機として採用しているEC135の稼働率は3割程度に過ぎません。これは輸入機であることが問題ではなく、海自の整備体制に問題があることは明白です。ですから防衛省も海幕に対して改善を命じています。

同じようにMCH-101にしても部品デポが英国にあり、迅速な部品の供給がなされていないことなどが、同機の稼働率の低さの一因になっております。カナダなどの他の101ユーザーに較べても海自の稼働率は低いとのことであり、これまた海自の能力に問題があるということになるでしょう。

これらの事実を無視して、輸入だから稼働率が低いと決め付けるのは事実を曲げる行為です。仮にラ国にすれば1、2割の稼働率の向上が見込めるとして、それに2倍3倍のコストを掛けてラ国をすることがリーズナブルなソリューションでしょうか。

単に国内企業に仕事をばらまきたいというのであれば、地方のいらない箱物公共事業と同じです。それは結果として農業同様に国内航空産業の競争力を奪い、また余分な予算を使うことによって自衛隊を弱体化させることになります。愛艇に言えば税金の無駄使いで、国の借金を増やすわけで、これが国益になるはずがありません。

これまた何度も申しておりますが、国内市場しかも防衛省だけで3社のヘリメーカー、2社のエンジンメーカーが喰っていること自体が異常です。BKを除けば民間だけではなく警察、消防、地方自治体、ドクターヘリなども外国製ばかりで国内メーカーのシェアはゼロです。

戦後何十年も防衛費で面倒を見てもらってきても未だに自立していない。国内メーカーは防衛省に寄生しているニートのようなものです。

40ヅラ、50ヅラさげて親のすねをかじって家で引きこもっている。働いたら負けと思っているのでしょう。こういうニート企業を、税金を使って養う意義は全くありません

市場に打って出る勇気も、実力もないのであれば商売を畳むべきです。

それが嫌ならばまずは国内のヘリ産業の事業統合を行うべきです。

やる気の無いやつは出て行け、ということです。

それから防衛省ではAH-1SやOH-6などの後継UH-Xの機体を利用した軽武装ヘリを検討しています。であればそれらの計画も含めた計画を納税者に示すべきです。機種統合によって量産効果も期待でき、訓練や調達・運用コストの低減が期待できる反面、UH-Xの機体は武装ヘリとしてはともかく、観測ヘリとしては過大でしょう。

防衛省は納税者にもっと全体を俯瞰した情報を提示すべきです。それをしないのは「地方人」軽視の旧軍と同じ発想です。

繰り返しますが盲目的な国産礼賛は、やる気のない国内企業に対する補助金となり、メーカーを甘やかし、税金を浪費するだけです。

企業も目先の利益よりも、追うべき長期的利益、守るべき本当の国益があるのではないでしょうか。

新しい防衛航空宇宙専門サイトを始めました。
「東京防衛航空宇宙時評・Tokyo Defence & Aerospace Review」
http://www.tokyo-dar.com/

NEXT MEDIA "Japan In-Depth"[ジャパン・インデプス]に以下の記事を寄稿しております。
NEW<海上自衛隊のシーレーン防衛はフィクション>日本には戦時に守る対象となる自国の商船隊が存在しない
http://japan-indepth.jp/?p=6994

<バーバリーと三陽商会>ファッション業界「ライセンスビジネス」の怪
http://japan-indepth.jp/?p=6198
<防衛産業も営利企業>政府は防衛産業の持続可能な利益確保の必要性を国民に説明すべき。
http://japan-indepth.jp/?p=5052

<武器禁輸緩和>安倍政権は「防衛装備生産基盤の危機回避」という本意を国民に説明せよ
http://japan-indepth.jp/?p=5014

<200億円の海自P-1哨戒機>性能も怪しい高コスト機の開発ではなく現有機の近代化を
http://japan-indepth.jp/?p=4818

朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました
NEW国連加盟は憲法違反である
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014061900005.html?iref=webronza

国益のために国内ヘリ産業を潰すべきだ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014051200007.html?iref=webronza

ロシアとウクライナが簡単に刀を抜けない理由
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014041500002.html

知られざる日本発のクールジャパン的ヒット商品「エア・ソフト・ガン」はなぜ市場を失いつつあるのか?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014032400011.html

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