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集団的自衛権行使容認を海外メディア・専門家はどう見たか - 平井和也

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オーレリア・ジョージ・マルガン教授の論考

ここでさらに、日本政治学を専門としているニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)のオーレリア・ジョージ・マルガン教授が前掲の雑誌『The Diplomat』に発表した論考(6月3日)で論じている内容を以下にご紹介したい。

マルガン教授は論考の冒頭で、次のように論じている。

日本は今、米国との集団防衛に参加できるようにすべきか否かという問題について政治的な議論を行っている。これは、国際社会がこれまで自衛隊の軍事的な役割と軍事力に対して適用してきたダブルスタンダードを解除する時がきたのかもしれないという問題を提起している。

このダブルスタンダードは日本の戦争の歴史に起因するものであり、それは日本には常に軍国主義的なナショナリズムが復活する危険性があるという懸念に基づいている。そのため、日本の軍事活動は他の近隣諸国よりもはるかに厳しい目で評価されている。これは、日本の軍事力が増強された場合、それはアジアの安定要因にはならず、必ずアジアの脅威となり、特に中国などが挑発行為を繰り広げている中でも、日本は新たな軍事的な関与を控えるべきだという間違った考え方に立脚したものだ。

日本の軍国主義の歴史と、集団防衛が必要だと考えている安倍首相との関係について、マルガン教授は次のように論じている。

軍国主義の亡霊を警戒する日本人は、安倍首相のような歴史修正主義の国家指導者に対して疑念を抱き続けている。彼らは安倍首相が「戦後レジームからの脱却」のために日本国憲法を壊したいと考えているとして、批判を展開している。日本国憲法は占領軍によって押し付けられた戦後秩序の象徴であり、日本人が誇りを取り戻すためには憲法の改正が必要だと安倍首相は考えている、と彼らは見ている。

また、安倍首相が集団防衛の正当性を主張していることについて、マルガン教授は次のように論じている。

安倍首相は集団防衛の正当性を訴えるにあたって、「現行の憲法下では、日本は海外での戦闘に参加することができないため、国民の生命を守ることができない」と述べている。言い換えれば、専守防衛だけではもはや日本を守るためには不十分だということだ。この論理は表面的には説得力があるように思えるが、まだ厳密な検証を経ていない。「海外での」戦闘に参加するということが、必ずしも日本の国防力の強化につながるというわけではない。実際、日本が本来なら避けられたはずの紛争に巻き込まれ、日本の安全保障が危険にさらされることにもなるかもしれない。

論考の最後で、日米関係に言及し、マルガン教授は次のように論じている。

米国との同盟関係を強化するための意思表示としても、日本にとって集団防衛への参加は重要だ。実際、日本にとって、集団防衛の政治的重要性の方が日米同盟における安全保障上の重要性を上回っているかもしれないのだ。日本の集団防衛への参加は、特に尖閣諸島の防衛に対する米国の関与を強めることを意図したものだ。

ウラジミール・テレコフ主任研究員の論考

本稿の最後として、ロシア戦略研究所アジア中東研究センターのウラジミール・テレコフ主任研究員が時事問題についての分析を専門とするオンライン雑誌「New Eastern Outlook」に発表した論考(7月9日)について以下にご紹介したい。

テレコフ研究員は1947年の日本国憲法施行から1954年の自衛隊の創設に至るまでの戦後日本の安全保障の歩みについて説明した上で、「吉田ドクトリン」に言及している。そして、自衛隊の活動に対する制限が大きく問われる分岐点になった出来事として、湾岸戦争(1990年から1991年)を挙げている。

この時、日本は米軍を中心とした多国籍軍に対して財政支援しか行わず、米国の怒りを招いたとテレコフ研究員は論じている。この経験がきっかけとなり、日本国内では、憲法九条を完全に破棄すべきなのか、それとも戦争放棄の規定を破棄するような解釈をすべきなのかという議論が活発に展開されるようになった。

しかし、憲法九条による自衛隊の活動に対する制限の問題について最も重要な点は中国の台頭だ。日本はこの中国の台頭を、国益と安全保障に対する脅威だと見做している。そのため、日本では軍事力の増強を図り、自衛隊の活動に対する制限を解除すべきかどうかという問題が再び浮上している。

ところが、現行の日本国憲法の改正手続きは非常に複雑だ。それには議会の過半数の承認と国民投票による過半数の賛成が必要となる。現在の状況では、憲法九条の破棄よりも、憲法解釈の変更に対する承認を得る方が政府レベルでは技術的には容易であり、それが現実のものとなった場合には、複雑な憲法改正手続きを経なくても自衛隊の活用範囲を大幅に広げることができるようになる。

安倍首相は集団的自衛権行使容認に関する閣議決定について、次のように述べている。

「今回の閣議決定は、アジア太平洋地域における平和に対する脅威の増大を前にして自衛隊の潜在的な能力を強化しながら、地域の平和と安定を保障するためにより積極的な役割を果たしていくという日本の目標に合致しています。平和とは誰かが与えてくれるものではなく、自分たちで確保するしかないのです」

このような安倍首相の発言に対して、中国は十分予想されていた通りに警戒心を見せている。中国は集団的自衛権行使容認に関する安倍政権の閣議決定について、日本の国防政策が「軍国主義」に向かって動き出す「重要な局面」だと考えている。

しかし、最も驚くべきことは、今回の安倍政権の閣議決定に対して米国政府が警戒反応を見せていることかもしれない。というのも、時代を遡ると、2000年に発表された第1次アーミテージ・ナイレポートには、「日本が集団的自衛権に関する制限を取り除けば、日米間の防衛分野における協力関係の効果が大幅に増大するだろう」と書かれていたからだ。

ところが、オバマ政権の二期目に入って、米国、中国、日本の三国関係に対する米国政府の考え方が大きく変わっている。米国は、ささいなことがきっかけで重大な紛争に巻き込まれる可能性を考え、警戒心を強めているのだ。この警戒心は、事態が東シナ海に浮かぶ五つの無人島の領有権を巡る日本と中国の大きな領土問題へと発展する可能性があるという議論に表れている。

【参照記事】

The Diplomat: Ten Myths About Japan’s Collective Self-Defense Change

http://thediplomat.com/2014/07/ten-myths-about-japans-collective-self-defense-change/

The Washington Post: Japan flexes its muscles, shifts its defense policy with Pentagon support

http://www.washingtonpost.com/news/checkpoint/wp/2014/07/01/japan-flexes-its-muscles-shifts-its-defense-policy-with-pentagon-support/

The Global Times: Japan’s move escalates regional tension, signals fascism emergence: foreign experts

http://www.globaltimes.cn/content/868501.shtml

Deutsche Welle: Japan’s security policy shift: ‘A blow to ties with East Asia’

http://www.dw.de/japans-security-policy-shift-a-blow-to-ties-with-east-asia/a-17748656

The Diplomat: Drop the Double Standard on Japanese Defense

http://thediplomat.com/2014/06/drop-the-double-standard-on-japanese-defense/

New Eastern Outlook: Japan and the right to collective self-defence

http://journal-neo.org/2014/07/09/rus-yaponiya-i-pravo-na-kollektivnuyu-samooboronu/

サムネイル「Magazines」Sean Winters

http://www.flickr.com/photos/theseanster93/472964990

画像を見る 平井和也(ひらい・かずや)
人文科学・社会科学系の翻訳者

1973年生まれ。人文科学・社会科学系の学術文書の翻訳を専門とする翻訳者(日⇔英)、KH翻訳事務所代表、海外ニュースライター。日本翻訳者協会会員。青山学院大学文学部英米文学科卒。2002年から2006年までサイマル・アカデミー翻訳者養成産業翻訳日英コースで行政を専攻。主な翻訳実績は、2006年W杯ドイツ大会翻訳プロジェクト、法務省の翻訳プロジェクト(英国政府機関のスーダンの人権状況に関する報告書)、防衛省の翻訳プロジェクト(テロ対策や米国の核実験に関する報告書)、人文科学・社会科学系の学術論文の日英翻訳多数、シンクタンクの論考の日英翻訳など。関心領域:国際政治、歴史、ジャーナリズム、異文化、マーケティング。ツイッター:https://twitter.com/kaz1379、メール:curiositykh@world.odn.ne.jp

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