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「働かせる側」は楽なものだが

例えば納期が20日で24日に問い合わせして、「22日には着荷する予定です」と回答する業者があったら、流石にクレームに発展しても不思議ではありませんよね。でもJRだと30分に着の予定の電車が来なくて、それで今の時間が50分なのに「次の電車は46分頃に到着の予定です」とか普通にアナウンスしてくるわけです。私なんかは電車が遅れたことより、こういう乗客を愚弄したところに不快感を覚えるのですが、あんまり気にする人はいないのでしょうか。JRのように「許される存在」になりたいなと思った今日この頃です。それはさておき……

アルバイトが学生生活を脅かす(NHK)

学生時代に経験する人が多いアルバイト。景気の回復で人手不足が深刻化する現場を重要な労働力として支えています。その学生アルバイトの姿が、今、大きく変わっています。学生たちから、過剰な負担を強いられていると悲痛な声が上がっているのです。取材を進めるなかで見えてきたのは、「やめたくてもやめられない」学生たちの姿でした。

(中略)

取材を進めるなかで見えてきたのは、アルバイトが正社員並みの「責任」を負わされている姿でした。

生活費のために小売店でアルバイトを続けてきた平田さんも、その1人です。平田さんによると、正社員は店長の1人だけです。しかも、1人で複数の店舗を担当するため、一つ一つの店に十分な目配りをする余裕はありません。店の営業は、店長に代わってパートやアルバイトのリーダーに任されていたといいます。レジや品だしを担当していた平田さんは、働きぶりが買われて、売り場のレイアウト作りまで任されるようになり、当初はやりがいを感じていました。

その後、アルバイトの募集やシフト作りなど、リーダーの業務はどんどん広がっていきました。ついには、店の責任者として、乱暴な客に対するクレーム処理などトラブルの矢面にも立つようになったのです。日ごとに責任が重くなり、平田さんはやめようかと考えたこともあったそうです。しかし、ほかの学生アルバイトにしわ寄せがいってしまうと考え、とどまったのです。

平田さんは、「自分がやらなければお店が回らなくなるし、そうなって困るのは結局、現場にいるほかのスタッフ。ほかのスタッフが困るのに見捨てることはできない。だから、やるしかなかった」と語ります。

 このNHKの記事、もう少し見出しはどうにかならなかったのかと思います。これでは、アルバイト従事者が善良な市民の生活を脅かす危険な犯罪者予備軍であるかのように見えてしまいますし、本当に学生生活を脅かしている存在が隠蔽されてしまうでしょう。学生生活を脅かしているのはアルバイトなのか、そうではなく引用元で例示されているような、人件費を圧縮しつつ従業員に無理を強いて利益を確保するという日本的経営――経済誌で批判されているような非実在の日本的経営ではなく、現実の日本で広範に見られるという意味での日本的経営――こそが名指しされてしかるべきと思われます。

日本の「残業代ゼロ論争」にモノ申す!(上) 残業ご法度なシンガポールで面食らった僕(DIAMOND online)

インド人の部下が、「娘が熱があるから病院に連れて行きたい、夕方4時頃に早退させてくれ」と頼んできた。しかし彼は、ある重要な機能の開発の要。しかも、その機能の開発期限がかなり迫っていた。

詳しく聞いたところ、娘さんはインフルエンザやデング熱といった大病ではなく、普通の風邪であることが判明した。だというのに、これから専業主婦の奥さん、同居しているお母さん、そして従兄弟も一緒に家族全員で今から病院に行くとの話だ。大人の付き添いがすでに数人、しかも大病でもない……。僕は「必要な仕事が終わってから帰ってくれ」と彼に頼んだ。

 一家の大黒柱がプロジェクトの危機に瀕して、仕事を優先する。多くの日本人ワーカーの価値観からすれば、それは当然のことだ。その晩は結局、何度も家族に連絡する彼に無理強いし、午後10時頃まで働かせたのだ。

その翌日、彼に前日のことを軽く謝った。すると、予想外の反応が返ってきた。

「今回は事情が事情だけに許す。しかし、今度このようなことがあれば俺は会社を辞めるし、お前を決して許さない」と激怒したのだ。

 一方、日本的経営の常識が通用しない世界ではどうでしょうか。日本人なら、たとえアルバイトであっても「自分がやらなければ会社が回らなくなるし、そうなって困るのは結局、現場にいるほかの従業員」と考え、言われずとも家族や己を省みずに黙って仕事を優先する、それを至って自然に受け入れているわけです。しかし、そんな都合の良い労働力は日本くらいにしかいません。ヨソの国の文化で育った人に日本人のような働き方を求めれば当然、ここで引用したような反応が返ってくるものです。

 私にしてみれば日本人「以外」から、その様な反応が出るのは当然のこととしか思えないのですけれど、しかるに引用元の著者にとっては「予想外」なのだとか。う~ん、この辺も実に日本的と言えるでしょうか。結局のところ、日本の「働かせる側」の人間はあまりにも甘やかされてきた、それゆえに日本以外の世界の常識が理解できていないと言えそうです。

 日本人なら非正規であってさえ、末端の人間一人一人がマネジメントの観点を持っているもの、自分の行動が組織にどう影響するかを常に考え、当たり前のこととして会社を優先して行動してくれます。そういう社会では、「働かせる側」は実に楽なものです。マネジメントが責務であるはずの人の仕事を、会社の最も下にいる人ですらもが個々に肩代わりしてくれるのですから。

 ところが、そうしたマネジメントを末端に丸投げできる日本的経営はグローバル社会では通用しません。自分に割り当てられた仕事に関しては責任を持つけれど、その他の職責まで対価もないのに背負い込むつもりは毛頭ない、マネジメントは管理職の仕事、組織が上手く回るかどうかを考えるのは末端の役割ではなく上の人間の仕事と、そう人々が考えているような社会においては、日本の甘やかされた経営者では当然ながら通用しないわけです。日本企業が他国への進出において苦戦するとしたら、それは「働かせる側」がぬるま湯に浸かりすぎたせいでしょうね。

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