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- 2014年07月25日 18:00
ネット広告に侵される「プライバシー」
ベネッセによる個人情報の流出事件が社会問題となっているが、今回の事件を機にDM(ダイレクトメール)に社会的なメスが入ったことは、郵便受けがいつも不要なDMに支配されている一消費者としては、大変ありがたいことである。
私の場合、恐らくは、新聞屋や、EC業者や、クレジット会社などが裏で情報を横流ししているのであろうが、見ず知らずの組織に、氏名や性別、人種、年齢、住所、職業まで知られていると思うと気分が悪いし、ゴミ箱直行なので紙の無駄でもある。
企業による個人情報の取り扱いに関しては、本質的にはDMだけでなく、今後はいろいろな方面へ問題が波及していくだろう。消費者は会員カードをつくったり、アンケートに答える度に個人情報を取られるのに対して、企業側への厳格な罰則規定がないため、安全性がまったく担保されていない。まずはこの辺りの法整備が進みそうだ。
一方で、インターネット上で勝手に吸い取られている個人情報までは、今回は踏み込むことはできないだろう。最近流行の「ビックデータ」は「個人を特定できないように加工してあるのでOK」という企業側の論調が支配的になってきているが、何処で何を見て、何を買って、その後どうしたか、などの詳細なデータは十分に個人情報と言えるものであるし、それらを繋ぎ合わせれば、実際には個人を特定することも可能となる。
ECサイトで検索して眺めていた商品が、別のサイトを見ている時にも広告として出てきたことがある人は多いだろう。これはリターゲティング広告と呼ばれるものであり、Cookieを使用してその消費者を追尾し続けてくるという煩わしいだけの広告であるが、そもそもCookieが個人情報かどうか、また、商用目的で利用してよいかどうかなどは、規制当局の俎上にも載っていないのが現状である。
ネット広告の最先端であるRTB(Real-Time Bidding)広告などは、消費者の知らないところで、更に踏み込んだ個人情報を扱っている。RTB広告とは、ウェブサイトを見ている人の属性情報を分析した上で、買い手(広告主)と売り手(メディア)との間で瞬間的に広告の売買を行う、株式市場のような仕組みのことを言う。この場合、取引と値決めの材料となるのは、消費者の個人情報である。
実際のRTB市場での買いつけは、広告主の代理人であるDSP業者というプロが行っており、彼らがサイトを見ている消費者の属性を分析した上で、広告主の広告効果が高まりそうな枠をリアルタイムで買っている。今後問題となるのは、DSP業者は分析の精度を上げるために、広告主が別ルートで入手した個人情報も使用しているという事実であり、現時点では誰も定義ができていないグレーな領域となっている。
Facebookが消費者に無断で心理分析テストを行っていたことが発覚し、謝罪したことは記憶に新しい。ネット広告業界は、テレビと違ってコンテンツの面積が狭いというデメリットを克服しようと、事業者側があの手この手で競争をしているが、その熾烈さ故に、消費者の個人情報とプライバシーの問題が置き去りになってしまっている感は否めない。
日本の3年先を行く米国では、すでにこのことが論点として浮上しており、「Tapad社」や「DrawBridge社」のように、Cookie以外から個人情報を効率的に取得しようとする会社もあるが、消費者の意見としては、手段が何であれ、行動を補足され、潜在意識を先回りして提案される広告自体に嫌悪感を抱いているため、根本的な解決策とはなっていないと言える。
このように、ネット社会となって、テレビが主要なマス広告であった時代には起こり得なかった問題が数多く浮上してきている。法制度がまったく追いついていない今、消費者側できることは、個人情報の提供を最低限に留めることや、不快に感じる広告に「No」を突き付けることであろう。DMではできなかった消費者の意思表示が、ネット広告の場合には「アドミュート機能」などで、ある程度はできる。
現状のままネット広告の進化に歯止めがかからなければ、結局は「押売り」や「ストーキング行為」と同類になってしまう。広告業界の健全な発展のためにも、事業者側は消費者の意思を反映する手段を「こっそり」とではなく、誰でも分かるようなかたちで提供することが求められる。
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私の場合、恐らくは、新聞屋や、EC業者や、クレジット会社などが裏で情報を横流ししているのであろうが、見ず知らずの組織に、氏名や性別、人種、年齢、住所、職業まで知られていると思うと気分が悪いし、ゴミ箱直行なので紙の無駄でもある。
企業による個人情報の取り扱いに関しては、本質的にはDMだけでなく、今後はいろいろな方面へ問題が波及していくだろう。消費者は会員カードをつくったり、アンケートに答える度に個人情報を取られるのに対して、企業側への厳格な罰則規定がないため、安全性がまったく担保されていない。まずはこの辺りの法整備が進みそうだ。
一方で、インターネット上で勝手に吸い取られている個人情報までは、今回は踏み込むことはできないだろう。最近流行の「ビックデータ」は「個人を特定できないように加工してあるのでOK」という企業側の論調が支配的になってきているが、何処で何を見て、何を買って、その後どうしたか、などの詳細なデータは十分に個人情報と言えるものであるし、それらを繋ぎ合わせれば、実際には個人を特定することも可能となる。
ECサイトで検索して眺めていた商品が、別のサイトを見ている時にも広告として出てきたことがある人は多いだろう。これはリターゲティング広告と呼ばれるものであり、Cookieを使用してその消費者を追尾し続けてくるという煩わしいだけの広告であるが、そもそもCookieが個人情報かどうか、また、商用目的で利用してよいかどうかなどは、規制当局の俎上にも載っていないのが現状である。
ネット広告の最先端であるRTB(Real-Time Bidding)広告などは、消費者の知らないところで、更に踏み込んだ個人情報を扱っている。RTB広告とは、ウェブサイトを見ている人の属性情報を分析した上で、買い手(広告主)と売り手(メディア)との間で瞬間的に広告の売買を行う、株式市場のような仕組みのことを言う。この場合、取引と値決めの材料となるのは、消費者の個人情報である。
実際のRTB市場での買いつけは、広告主の代理人であるDSP業者というプロが行っており、彼らがサイトを見ている消費者の属性を分析した上で、広告主の広告効果が高まりそうな枠をリアルタイムで買っている。今後問題となるのは、DSP業者は分析の精度を上げるために、広告主が別ルートで入手した個人情報も使用しているという事実であり、現時点では誰も定義ができていないグレーな領域となっている。
Facebookが消費者に無断で心理分析テストを行っていたことが発覚し、謝罪したことは記憶に新しい。ネット広告業界は、テレビと違ってコンテンツの面積が狭いというデメリットを克服しようと、事業者側があの手この手で競争をしているが、その熾烈さ故に、消費者の個人情報とプライバシーの問題が置き去りになってしまっている感は否めない。
日本の3年先を行く米国では、すでにこのことが論点として浮上しており、「Tapad社」や「DrawBridge社」のように、Cookie以外から個人情報を効率的に取得しようとする会社もあるが、消費者の意見としては、手段が何であれ、行動を補足され、潜在意識を先回りして提案される広告自体に嫌悪感を抱いているため、根本的な解決策とはなっていないと言える。
このように、ネット社会となって、テレビが主要なマス広告であった時代には起こり得なかった問題が数多く浮上してきている。法制度がまったく追いついていない今、消費者側できることは、個人情報の提供を最低限に留めることや、不快に感じる広告に「No」を突き付けることであろう。DMではできなかった消費者の意思表示が、ネット広告の場合には「アドミュート機能」などで、ある程度はできる。
現状のままネット広告の進化に歯止めがかからなければ、結局は「押売り」や「ストーキング行為」と同類になってしまう。広告業界の健全な発展のためにも、事業者側は消費者の意思を反映する手段を「こっそり」とではなく、誰でも分かるようなかたちで提供することが求められる。



