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法科大学院「意義」発信の効果と現実

社会的な理解度を高めるための、情報発信という手段の必要性や効用を否定する人は少ないと思いますが、それが制度活用や支持に常に有効なものになるわけではありません。いうまでもなく、その活用や支持を伸ばすうえで、社会的な制度理解が、それこそどこまでネックになっている話かによるからです。制度そのものに改めるべき問題が内包し、むしろそのことの方への理解度が高ければ、それを度外視した、制度を維持したい側による制度説明の効果に期待できるわけはありません。

 そもそも情報発信の効果を考えれば、発信したい側が発信したい内容を流すだけでは意味がないことはいうまでもありません。受け手がどういう情報を期待しているか、それに応える形が必要です。制度の当初はともかく、それが運用されて時間が経過したあとでも、それが社会に受け入れられない理由と対策として、しばしば「周知」ということがテーマになりますが、ここは現状での社会の反応をしっかりつかんだうえでなければ、それこそ一方通行の「念仏」と化してしまいます。

 裁判員制度にしても、法科大学院制度にしても、法曹人口の増員政策にしても、あるいは弁護士という仕事の魅力にしても、この「改革」では、どうもそんな感じになるものを目や耳にしてきたように思えます。制度・政策の意義は、耳にタコができるほど聞いてきた感がありますが、現在、それらについていわれる問題の本質は、果たして社会の理解不足、制度・政策の意義の周知不足を、最大の要因とするものなのか、という疑問を呈したくなるのです。

 7月14日開催の第11回法曹養成制度改革顧問会議の提出資料のなかに、「法科大学院教育の意義を発信するための広報活動(案)」というものがあります。現在のところ、議事録が公開されていない同会議で、この案をめぐりどのようなやりとりがあったかは定かではありませんが、中身からすれば、タイトル通り、政府が法科大学院教育の意義発信を、志望者獲得と社会的な理解のための、一つの方策として考え出していることをうかがわせます。

 こうしたとらえ方自体は、別に新しいことでもなく、既に中教審特別委員会でも、「法科大学院教育の成果の積極的な発信」を改善方策の一番目に挙げています(「法科大学院教育の更なる充実に向けた改善方策について」)。

 前記「広報活動(案)」は、その趣旨として、「法曹養成制度の中核としての法科大学院の意義・重要性を周知」が「多様な人材、特に有為な若者が法科大学院を経て法曹を目指すことにつながる」ことを挙げており、明らかに制度擁護派が「抜け道」と位置付けている「予備試験」対策を意識しているようにとれます。基本的に、法科大学院回避は、その意義やメリットが良く伝わっていないために生じている、ととらえること(あるいはそれが一因とすること)を基本に置いているようにとれます。

 さらに、同案では志望者学部生対象にしたパンフレット作成の企画案が掲げられていますが、その内容として、以下の二つが紹介されています。

 「[法科大学院出身の若手法曹・法曹有資格者から]法科大学院に進学した動機や、そこでの学修、それが実務にどのように役立っているかなどを発信→法曹を目指す人にとっての近未来のイメージを明らかに」
 「[法科大学院教員・実務家から]理論と実務の架橋がどのようになされているか、学修の意義、法科大学院出身の法曹に期待することなどを発信→法曹を目指す人に期待されていることを明らかに」

 後者については、おそらくこれまでも繰り返し言われてきた、「念仏」の類になることは予想されます。前者については、またぞろ扱い方次第というよりも、それ込みで想定されているととれます。要は、都合のいいインタビュー回答だけを抽出する手法が当然とられるわけですから、「成功バイアス」的な効果が問題になる可能性も十分あります。一部の体験者の「効果」実感や実績を、誘引手段に用いることが、果たして現在、法科大学院教育が置かれている現状への有効方策の一つなのかどうかの問題です。

 経験者の魅力ある言葉と、制度側が掲げる意義と期待の発信――。そんな言い分は百も承知という志望者が、いまさらのこうした方策に冷めた目線を送らないのか、そして、もし十分承知していなかった志望者が、仮にこれを真に受けて突っ込んでいったとして、今の制度は本当にその期待にこたえられるのか。そんな気持ちにさせられます。

 この場合、もちろん前記「効果」を考えれば、情報発信する側が、本当に利用者による制度評価に向き合い、本当に必要な情報を提供しているのか、つまりは、本質的に法科大学院回避、法曹界敬遠の原因を理解しているのか、という疑問を、この案を構想している側に投げかけることもできます。ただ、あくまで推測と断りますが、それはもはやあまり意味がないかもしれません。なぜなら、それはすべて分かっている、百も承知で、これを繰り出そうとしているのが、今の法科大学院制度の現実であるように思えるからです。

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