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「仮面ライダー」だけじゃやってけない!?――これからの生活困窮者支援 - 大西連×中村あずさ×藤田孝典

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居場所をつくる

大西 中村さんは池袋での炊き出しを続けられていますよね。

中村 炊き出しは月に2回やっていますが、命をつなぐというよりは、居場所づくりの機能が一番大きいですね。ご飯を食べるわけではないけど過去に路上生活をしていた方も、仲間やスタッフに会いに来てくれます。

藤田 うちでは「いこいの会」というものをやっています。孤立してしまう人の居場所をどう作っていくのかは課題ですよね。生活保護に結びつけてゴールではなく、むしろここからがスタートなんです。

アパートに入ったあと「健康で文化的な」生活が出来ているわけではありません。おっちゃんたちを見ていると、ずっとテレビを見ていたり、夜になると寂しくなって、不安になる方もいたり。そんな人が多いですよね。

やっぱり、生活保護を受けているというだけで、社会参加を抑制されてしまいがちです。後ろめたさもあってなのか、人との関わりに躊躇してしまう。当然ですけど、喫茶店に行けばお金がかかるし、映画館に行けばお金がかかる。社会参加ってお金がかかるんです。だからお金がかからず、差別も受けないで集まれる居場所が必要なんです。

中村 東京プロジェクトでも、平日は料理教室だったり、ミーティングをいったり毎日集まれる場があります。週一回、地域のパン屋さんを借りて、パン作りをやっているんです。このパンを夜回りの時に配ります。おじさんたちも、自分の仲間のためにつくり、役にたっているという実感があって、ピアサポートのような側面もありますね。いっぱいつくって、余ったものを自分で食べても美味しいし(笑)。

大西 地域のパン屋さんの協力によって、新しいつながりもできるし、まちづくり、コミュニティデザインにもなりますよね。

中村 貴重な出会いです。パン作りも地元の主婦の方が手つだってくださって、だんだん盛り上がってきました。さらに並行して「子ども食堂」もオープンしました。孤立しているような地域の貧困家庭の子ども達を呼んでいます。一人でもごはんを食べにこれる場所をつくりたいなって。おじさん達がパン作りをしている傍らご飯をつくって、みんなでいっしょにご飯を食べています。いろんな支援がぐちゃぐちゃに混ざっています(笑)。

藤田 昔の長屋のような場所ですね。今はそんな場所は少ないですよね。

中村 そうなんです。「子ども食堂」という名目でやったら、近所のおじいちゃんおばあちゃんが「子どもがいないと駄目なんですか」と来て、今度は「じじばば子ども食堂」になっちゃった(笑)。

大西 ホームレス状態の方の支援をしているようで、実際は地域のまちづくりとして、いろいろな人の居場所作りになっているんですね。

中村 私たちも、元路上生活者を自分達だけで支えるのは難しいとおもっていました。地域の人達や仲間通しでつながる場があれば、近所ですれ違う時に「元気ですか?」と声かけができるようになります。

大西 80年代ごろから路上生活者が可視化されて、90年代から炊き出しや夜回りが盛んになりました。2000年代になって、ホームレス自立支援法による事業や生活保護を使って、支援を受けられるようにサポートをしようという活動が広がっています。でもそれだけじゃ難しい。

最近はそういった「生存」のレベルから、いかに地域のなかで生活していくか、またその生活をどう支えていくのかという視点が重要になってきています。既存のコミュニティーをどうつなげたり、新しくつくったり、どうデザインしていくのかが、2010年代の大きなテーマになってくるのかなって。

藤田 埼玉の郊外でも、コミュニティーの力を失っています。周りで支え合ったりすることもなくて。コミュニティーの再生や、既存の見守りや声かけを高めないと、また相談に来られるかたが増えるんじゃないかとおもいます。

ホームレス状態になる手前で、誰かが相談を受けていれば、路上生活を避けられることって多いとおもうんです。家賃滞納であったり、ガス代や電気代が払えなくなったりといった、明らかな生活困窮を地域が見過ごしてしまっているんです。その時に気づいて少し声をかけるだけで、貧困が未然に防げる部分もあるとおもうんですよね。

仮面ライダーだらけ!?

大西 藤田さんは、埼玉で家屋を借りてグループホームを開設していますが、一体どうやって家を借りたんですか。我々はやりたくてもお金がなくて難しい。

藤田 一番初めは支援活動している際に出会った資産家の人に支援してもらいました。

大西・中村 えー!すごい!

藤田 たまたまそういった人達に巡り合えたので、モデル的には進めることができました。

大西 良い出会いだね。

藤田 それは本気度だとおもうんです。本気でこの問題を解消していきたいとおもったら、周りには、助けてくれる人が集まってくれるとおもいます。

中村 私たちもお陰さまで沢山の方に支えられています。パン屋さんにもお世話になっています。

藤田 協力者って必要ですよね。この問題って身内で固まりがちになるんですけど。

大西 自分達でやれることって少ないから、仲間を捜していくことも重要ですよね。炊き出しなどは、はじめて来る方でもハードルが低く、参加者も比較的多いのですが、次のステップのよりコミットした相談業務などの活動になってくると、だんだん先細りになっていきがちです。

藤田 でも興味がある人はけっこういますよね。

大西 そうなんですよ。勉強会などにも多くの人が関わってくれるのですが、継続的に関わってくれる方っていなくて。特に学生さんだと、就活がはじまるとどうしても難しくなっちゃったりとか。そもそも、支援の現場がなかなか仕事にならないじゃないですか。将来の事を考えたら続けられないという人も多かったりもする。

ボランタリーが変に美化されているんだけど、やりがいだけで続けられないこともありますよね。社会化してきちんとお金を集められたり、事業として運営できるしくみをつくっていくことは課題だとおもいます。

藤田 ぼくは、スーパーマンがスーパーマンじゃなくなることだとおもっていて。大西さんも、中村さんもある意味ではスーパーマンなんですよ。どんなことをしても食っていける。じゃあ、スーパーマンだけが突っ走っていいのかというとそういうわけではない。事業化しながら誰でもできるようなシステムにしなきゃいけない。

大西 まあ、食っていけるかは危ういですが(笑)。ただ、本当にスーパーマンがいっぱい出てきても意味がないんですよ。それって無理な話だし。

ぼくはスーパーマンでなくて「仮面ライダー」という言い方をしています。「改造されちゃった人達」ってよくいうんだけど。

中村 なるほど~(笑)。私は自分には、スーパーマンっていう自覚はないんですけどね……(笑)。

大西 仮面ライダーはいっぱい生まれるわけじゃないし、それだけじゃ支えられない。ショッカーがいっぱい来たら絶対無理だから。だから、なかなか社会は変えられない。

藤田 ずっと戦い続けられるわけでもないしね。

大西 どこかで倒れてしまいます。今までは個人の頑張りだけでどうにかやってきた部分があるとおもうんです。

藤田 責任をもって事業化して、仮面ライダーでなくても関われるようにならなくちゃいけないですよね。とはいえ、一時的には補助金を申請して、事業化をするまでは回していくしかない。それと、相談者に知的障害や精神障害があるとわかったら、合意を得て、障害者手帳を取るなど、既存の制度に乗せていくことがある程度必要だとおもっています。

これからの生活困窮者支援とは

大西 ぼくが生活困窮者支援に関わったのは派遣村以後なんです。だから、まだまだ新参者です。お二人は、派遣村以後、私たちをとりまく情勢、現場の空気感は変わったとおもいますか。

中村 変わったとおもいます。生活保護につなげて支援していこうという流れができてきましたよね。

藤田 先輩達がとりあえず生活保護という入口を開いた。次の世代のぼく達は、生活保護利用は当然として、これをどう社会資源に結びつけたり、支援体制をよりよく構築できるかが問われているとおもいます。そして、うまく次の世代に回せるかだよね。

大西 「生存」が担保されるようになって、次は「生活」をどうするかというフェーズに入ってきています。それは逆にいうとシンプルな議論から、一人ひとりの状況にあった支援をいかにつくっていくか、つなげていくかという話です。複雑な局面でさまざまな戦いをしないといけなくなりました。

藤田 先輩達って手あたり次第ケンカしてきたじゃないですか。そうして権利を勝ち取ってきたんですよね。

大西 まさに仮面ライダーと怪人の争いのような、普通の人が議論に参加するのが難しいようなバトルという面もありました。

藤田 それはそれで必要なことでしたが、次は福祉事務所と手を結びながら新しい社会支援をつくっていく番なんだよね。

中村 そうですね。福祉事務所の人もそれを待っているように感じます。

大西 敵ではなくて、彼らも困っている。支えたい気持ちがあっても、福祉事務所の構造の問題でやれないというのが大きいから、一緒にやれる部分は協力してやっていきたいですよね。既存の制度を使えるものは使いつつ、使えないものは自分達の創意工夫で新しいことをやっていき、きちんと政策提言に続けていく。

その一方で、いかに委託だのみにならずにやるのか、ということもぼく達に問われています。上の世代の人達は、権利を勝ち取って制度をつくり、委託を受けて事業所を開設し支援をおこないました。しかし、それらは委託ありきの事業になりがちでした。行政にコミットして、枠組みに近づいてしまうことは、さまざまなリスクを負います。もともとは枠組みから漏れた人のために支援をおこなっていても、いつの間にか本来の目標とはかけ離れたことをやってしまうという危険性がありますよね。

これからは、行政と関わり、対話を続けながらも、本来必要な支援や事業の在り方、本人に対してなにが必要なのかということを、少し冷静に丁寧に考えていかないと、次の世代には渡せないのかなって。けっこう頑張りどころだよね。

中村 うちも委託はとっていないかな。

藤田 去年まで、県の自殺対策相談事業の委託を受けていたんですけど、やっぱり対象を選別するんだよね。相談する回数を決められてしまったり。行政とコミットすることは、対象を決めることとイコールです。利用しながら、対象外の方も支援していくような運営モデルが問われています。利用しつつ取り込まれないという気持ちをもっていたいですね。

大西 また、外に向かっては、社会のコンセンサスを得るために、発信していかなければいけないですよね。お二人は特に力をいれている活動はありますか。

藤田 学生へ働きかけています。社会福祉から漏れている人がいること伝えると、それに答えてくれる学生って多いんですよ。ホームレス支援は社会福祉のメインストリームにのっているわけではないのですが、現状を伝えるだけでも、関心をもってくれる学生はいます。気づきを与えるだけで全然ちがうんですよね。

中村 私たちは、精神保健の分野でホームレス問題について考えてほしいと力を入れています。行政の中で、障害者福祉とホームレスは別々のものとされていて、障害者福祉の担当者はホームレス問題に無関心でした。でも、現場レベルでは関係性の深さが実感として伝わってくるし、理解されやすいです。だから、精神保健分野とホームレスの関係性についてもっと知ってほしいと、講演をやったり寄稿したりしています。最近では少しずつ手ごたえを感じていますね。

藤田 それぞれが責任放棄して、たらいまわしになってしまうということはありますよね。いろんな問題が絡んでいるからしょうがないんでしょうけど、それぞれの問題として捉えて欲しいですよね。

大西 行政の人に限らず、一般の人達も、どうしても他人事だとおもいがちです。自己責任的におもっている人もいるし、当の本人も自分の責任だとおもっている。おもわされているといってもいいのかもしれません。でも、必ずしも本人だけの問題ではないんですよね。

藤田 たぶんしつこくしつこく同じことを繰り返していくしかないんだろうね。大切な事ってしつこくいうのが大事だから。何度も何度も取り上げていかないといけない。

その点では、自民党のある議員さんがけっこう優秀なんですよ。「生活保護の人達は怠け者だ」としつこくしつこくいっている(笑)。今のところ、彼らの方が完全にしつこさが上ですよね。それに対抗するには「自己責任とはいえないんだ」とこっちもしつこくしつこくいうしかない。

発信力って大事だよね。中村さんにもどんどん発信してもらわないと。アイドル化して売り出してもいいくらい。AKBに入るとかね(笑)。

中村 ホームレス支援アイドル?ゲゲっ(笑)。

大西 強面の人じゃなくてもやれるというイメージは大事かもしれないけどね。

藤田 恐くてもいいんだ、活動なんだ、という感じてやっちゃうと、周りはどんどん離れていってしまいがちですからね。

中村 たしかに。本当は魅力的なフィールドなのでとにかく楽しんでもらいたいですよね。

大西 楽しければ、人もモノもカネも集まるとはおもいます。これからお二人がやりたいことってありますか。

中村 ハウジングファーストを日本でも広めていきたいです。フランスでは先行モデルとして、行政が4つの都市でやっています。支援モデルの実績をどう伝えていくのかがこれからの課題になるとおもいます。

藤田 私は後輩育成ですね。仮面ライダーが相談を受けてきたけど、それを誰でもできるようにする。相談って、ある種職人芸的なところがあるじゃないですか。

大西 だんだん複雑化・高度化していますよね。

藤田 自分ができるからって、ちょっと若い人に教えたらできるわけではないですよね。研修システムをNPOでつくっていきたいですよね。

大西 最近考えているのは、相談だけじゃなくて、お互いのノウハウをシェアするしくみをつくれたらいいなと。これからは、制度の枠組みについての激しいバトルのような空中戦から、仲間や賛同者を地道に増やしていく地上戦も必要になってくるとおもいます。なんだか、「活動家」って感じではなくなっていくのかなと。

藤田 たしかに、「活動家」っていわれるのにはすごい抵抗ある。ソーシャルワーカーでいいとおもいます。

中村 私も、「ちがいます」って答えちゃいますね(笑)。

藤田 社会を変えることに主眼をおくよりも、必要な支援をしていくことを大事にしたいですし、その結果社会を変える方向に動けばいいとおもいますね。個別支援というミクロ実践から社会変革というマクロ実践への連動を意識して、相談者と向き合いたいです。

大西 ぼくはなにが必要か当事者の方と一緒に考えて、悩みながらやっていきたいですね。僕たちにできることは小さなことかもしれないし、社会を変えるなんて大それたことは恥ずかしくていえない。でも、こうやって同じような問題意識をもっている仲間がつながって、本当に小さなところからでも、できることを積み上げていければとおもいます。

社会は少しずつ変わっているし、これからも変わっていく。僕は希望をもっています。

中村 本当にそうですね。これからも活動を続けていきたいとおもいます。

2013年7月1日配信「α-Synodos vol.127」より転載)

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大西連(おおにし・れん)

NPO法人自立生活サポートセンター・もやい

1987年東京生まれ。NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。新宿での炊き出し・夜回りなどのホームレス支援活動から始まり、主に生活困窮された方への相談支援に携わる。東京プロジェクト(世界の医療団)など、各地の活動にもに参加。また、生活保護や社会保障削減などの問題について、現場からの声を発信したり、政策提言している。

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中村あずさ(なかむら・あずさ)

社会福祉士

世界の医療団 東京プロジェクトコーディネーター。2000年より、路上生活者支援に携わる。社会福祉士。

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藤田孝典(ふじた・たかのり)

特定非営利活動法人ほっとプラス代表理事

特定非営利活動法人ほっとプラス代表理事。1982年茨城県生まれ。社会福祉士。ルーテル学院大学大学院 人間社会学研究科社会福祉専攻 博士前期課程修了。2004年から、さいたま市内で野宿生活を余儀なくされる方々を定期的に訪問するボランティア活動を展開。2009年3月からは、反貧困ネットワーク埼玉代表。2011年5月から特定非営利活動法人ほっとプラスを設立。生活困窮者の地域生活支援に取り組む。2012年から生活保護法改正案や生活困窮者自立支援法の新設を議論する厚生労働省社会保障審議会「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」の委員を務める。

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