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原発コストの出し方って、とっても変です。 ――私の原子力日記その2(1/2)――

 10月26日は、私にとって3回目の原子力委員会でした。

まず、これまで2回の議論を踏まえて提出された『今後の安全確保について』と『新大綱策定会議(第6回、第7回)における委員からの質問に対する回答』に基づいて、事務局(内閣府原子力政策担当室)の説明がありました。

 議事次第と配付資料は、以下のURLに掲載されています。

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sakutei8/index.htm

まず阿南委員が議論の口火を切りました。

IAEAやNRCによる福島原発事故の教訓を参考にしているが、なぜそれができなかったのか、きちんとした総括がないと発言しました。

議論のやりとりの中で、鈴木篤之委員(原子力研究開発機構理事長)から、原子力安全委員会での経験を踏まえ、安全規制は決定して実施するのに時間がかかり、電力会社が技術の進歩に応じて自主的に安全投資をするのが困難な事情を説明しました。

私は、『新大綱策定会議(第6回、第7回)における委員からの質問に対する回答』中の「地震応答解析結果について」に関する疑問と合わせて、次のような発言をしました。

(1)福島第1原発のように耐用年数30年を超えて原発を稼働し続ければ、減価償却が終わっているので電力会社はもうかるが、どのような改良投資が行われたのでしょうか。配管を含めて、地震に耐えられたのか、あるいは中性子や水素による金属疲労はきちんと考慮しているのかなどが、きちんと検証されているのでしょうか。実際、2号機は水素爆発ではなかったことが明らかになっています。もはや、すべてを「想定外」の津波のせいにするのは無理があります。

(2)そもそも、「地震応答解析」を、事故を引き起こした事業者に聞いていること自体に違和感があります。実態はともあれ、NRC(米原子力規制委員会)は事故を引き起こした事業者に乗り込んでいく形になっています。ところが、日本はそうなっていません。

問題なのは、安全規制を決めるのに時間がかかることにあるのではありません。事故原因にヒューマンファクターがあるとすれば、現場ではなく安全投資を怠ってきた事業者にあります。そして、規制当局の独立性自体が疑われていることこそが問題なのではないでしょうか。

その後、山名委員からも、規制や監督の不十分点ばかりが指摘されているが、規制や法によってガンジガラメになっているので、事業者が十分な安全投資ができない面があるとの発言がありました。

私は、福島第1原発で、それが事故原因になったのか、具体的に説明してほしいと質問しました。山名委員は事故調査委員会の結果を待つとお答えになったので、知野委員から具体的な事例で説明してほしいとの突っ込みがありました。

つぎに、議題は核燃料サイクルコスト、事故リスクコストに移りました。

そもそも、前に述べたように、資源エネルギー庁がシミュレーションによって出す5〜6円/kWhという数字自体が「架空」のものです。私は、拙著『「脱原発」成長論』第3章で、大島堅一氏による有価証券報告書を使って実績値を出す地道な分析を高く評価しています。しかし、私たちが原発に対する実際の負担額から、発電コストを割り出す第3の方法があります。その方法を要約して、以下の「メモ」として配布いたしました。

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2011.10.26原子力委員会メモ

                              金子 勝

原発の発電コスト計算に関して

1.そもそも資源エネルギー庁が算出している原発の発電コスト5〜6円という数字に関して、モデルプラントを使用した「架空」の数字であって実際のコストではありません。

2.原発の設置許可・受け渡し報告・運転発電許可の申請書が電力会社から経済産業省に対して提出されているはずです。申請書は炉ごとに出されており、これらの各申請報告書の中に電力会社が計算したものではありますが、各炉の理論上の発電単価が記述されているはずです。以下の原子力発電施設に関して、少なくとも以下の各申請書の原本謄写と概要を提出していただきたい。

 1)BWR式を採用している福島第一第二の10基と柏崎刈羽の5基。

 2)PWR式を採用している関電の美浜と高浜と大飯の11基。

 3)ABWR式を採用している柏崎刈羽の2基。

3.各発電所の操業開始から現在までの稼働実績(比較的小さな事故による休止の場合も含めて、稼働・点検の各合計期間)と総発電量に関する概要についても添付していただきたい。あわせて、付随施設である揚水発電所の(建設時)予定稼働率と実際の稼動実績・発電量の概要も添付していただきたい。

4.できれば、長距離送電用の高圧線・変電所設置の各費用、さらには送電ロスの実績値の資料も公開していただきたい。これらは今回の災害や事故のような非常時の電力融通用としてではなく、平時に大都市から離れて設置された原子力発電所から電力消費地である都市部までの送電を目的として設置されたものであると考えます。よって、これらもあわせて計算することで正確な原子力発電コストが算出されるのではないでしょうか。

5.廃炉費用を含む事故処理コストを計算するに当たって。

一般に、安全投資を含む設備投資を多く支出すれば、稼働率が高まる傾向にあるはずです。短期で発電コストを出すには、(安全投資コスト)―(稼働率向上によるコスト減)が問題になりますが、福島第一原発事故が発生したために、こうした点を考慮するだけでは不十分になりました。

 1)納税者に負担を課さないために、現行の損害賠償保険のあり方を見直し、事故賠償保険のあり方を見直すべきです。電力会社に無限責任の賠償保険への加入を義務づけるとした場合、どの程度の保険料になるのか。いくつかの民間保険(損害保険)会社に試算してもらったうえで、意見聴取をするべきです。

 2)事故率(事故発生係数)を算定する際に、過去に起きた事故や不具合をどのように事故率の計算過程に参入するのか、この点を明示していただきたい。また暫定的でも、地震および津波に対する安全基準を高めた場合に、どれだけの追加投資額が必要であるかも考慮しなければ意味あるコスト計算にはなりません。その点も明らかにしていただきたい。

 3)原子力発電所は耐用年数を超えて使用すれば、電力会社の利益率は非常に向上しますが、危険性も増します。福島第一原発事故はその危険性が顕在した可能性があります。各原子力発電所(あるいは原子炉)は、建設当時に耐用年数を何年と予定していたのか。耐用年数を延長するためにどのような改良工事が行われたのか。耐用年数を延長して使用している原子力発電所について、その判断は妥当な科学的根拠があってのことなのか。

 4)今回の事故を踏まえて、溶けた燃料を取り出す過程も含めて、原子力施設の除染と解体(あるいは石棺にするまでにかかる期間と費用を算出する必要があります。現状で詳細が分からないとすれば、燃料のメルトダウンの状況によって場合分けした概算でも出さなければ、事故リスクコスト計算にはならないと思います。

6.当然、賠償費用、除染費用も事故リスクコストに含まれるが、以下の点に留意すべきである。

 1)国の賠償紛争審議会の委員には利益相反の疑いのあるメンバー(エネ法研)が含まれており、また賠償費用の算定についても今後の紛争が生じる恐れがあり、過小になりやすい。今後の賠償費用の増加について見通しを明らかにしてほしい。

 2)除染費用についても、除染や汚染廃棄物について基準が何度もぶれて変更されています。どういう基準をとり、どういう方式をとるかで、コストは大きく違ってきます。また現行の原子力技術開発機構による除染事業には、評価機関と実施機関の両方を兼ね、かつ再委託という事業仕分けで批判された方式がとられており、多くの問題点が含まれ

ています。複数の専門家ないし民間企業から意見聴取を行う必要があります。

7.今回、使用済み核燃料のコストを含めて原発の発電コストを出すと聞きます。以下の点について資料を提出していただきたい。

 1)米仏を含む多くの先進国ですでに止めている核燃料サイクル政策について、失敗してきた常陽、もんじゅにかかった費用(建設費、開発費、人件費)とこれから電力を生み出さないまま「運転」している費用を発電コストに含めるべきだと考えます。

 2)現在、原子力発電所のプールに収用されている使用済み核燃料に関して、経過年数毎に本数を明らかにしてほしい。六カ所村の「中間施設」の失敗を考慮したうえで、仮に、それらを収用する「中間施設」を建設した場合、いくらのコストがかかるか明らかにしていただきたい。

 3)またMOX燃料が使用済みになった時に必要な冷却年数と維持コストを明らかにしていただきたい。

8.さらに原子力発電所の立地対策費用として、立地自治体に支払われた電源三法交付金の金額も発電コストに含めるべきだと考えます。

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