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検査命令の活用|脱法ドラッグ対策への模索・2

脱法ドラッグ販売に対して、待ったなし!の対策が求められるなかで、今度は「指定薬物である疑いがある物品の検査」の規定を活用し、危険な薬物の流通を停止する方針を決めたと、厚生労働省が発表しました。
<ニュースから>****
指定薬物の検査命令活用=脱法ドラッグ対策で-厚労省
厚生労働省は18日、脱法ドラッグを販売する店舗に対し、薬事法に基づき、指定薬物の疑いがある物品について検査を受けるよう命じる方針を決めた。結果が出るまで販売を禁止することも可能で、指定前の規制が可能になる。これまでに適用例はないという。

薬事法によると、厚労省と都道府県は、指定薬物の疑いがある物品を発見した場合、販売している店舗に指定薬物かどうかの検査を受けるよう命じることができる。

検査結果が出るまで同じ物品の販売を禁じることも可能で、違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課される。
時事ドットコム【時事通信】2014/07/18-13:02
*****
できることは何でもやる・・・おおいに結構、大賛成です。
でも、「指定薬物である疑いがある物品の検査」は、指定薬物の制度が導入された当時から組み込まれていた仕組みですが、今日まで、使われずに来ました。

仕組みがあっても実行されずにきたのは、決して担当部門が怠慢だったからではなく、使うことができない理由があったはずです。その理由を明らかにし、問題を解決し、実行可能な状態に組み替える目算があるのでしょうか。
かけ声だけなら、何も変わりません。

●指定薬物である疑いがある物品の検査とは
現行の指定薬物の制度が導入されたときには、脱法ドラッグを素早く封じ込めるための手段についても、対策が講じられていました。そのひとつが、指定薬物である疑いがある物品に対する検査です。

薬事法76条の6は、指定薬物である疑いがある物品を発見した場合には、その製品を製造、輸入、販売等した者に対して、厚生労働大臣または都道府県知事が、検査を受けることを命ずることができると定めています。
また同条第2項では、検査を受け、その結果についての通知を受けるまでの間は、当該物品及びこれと同一の物品を製造し、輸入し、販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で陳列してはならない旨を併せて命ずることができる、ともしています。

指定薬物制度をスタートさせるにあたって、この規定は、違反の疑いのある製品の流通を迅速に停止させるための措置として用意されたものだと思いますが、薬事法の解説書でも、この規定を設けた意図がはっきり説明されていません。また、命令書の内容などについては薬事法施行規則で詳細に定められていますが、いったい何が「指定薬物である疑いがある物品」に当たるかについては、言及されていません。

そこで、この規定がどんな場合に使われるのか、私なりに考えてみました。
現在、買上げ調査によって、違反品(指定薬物を含有する製品)が発見された場合は、その販売業者に対して、違反製品の販売停止、回収などの措置がとられます。しかし、全国に流通している同一製品がただちに違反品であるかどうかは、検査してみないとわかりません。そこで設けられたのがこの規定で、すでに違反製品であることが明らかになった製品と同一仕様のものや関連性が高いと思われるものを「指定薬物である疑いがある物品」として、取り扱う業者に対して検査命令を発し、その製品の流通を停止させようというものだろうと思います。これは、あくまで私の推定ですが、おそらく法制定時の意図は、こんなものだったのではないでしょうか。

この仕組みを使えば、指定薬物含有製品が発見された場合に、全国の販売店から一斉にその製品を引き上げ、流通を停止させることができます。

ところが、これが使われないままになってしまいました。
その背景には、全国規模での買上げ調査が実際にはごく限定的に行われ、各都道府県で買い上げた流通品は国の研究機関で集中的に分析されるため、違反製品が発見されるまでに時間がかかり、違反製品が確認されるころには、問題の製品はすでに販売を終了しているという現実があります。

問題がどこにあるかは明らかです。
まず、買上げ品の分析ができる機関が限られ、国の研究機関に、流通品の監視から新規物質の検出・同定まであらゆる業務が集中している現状をまず変えなければ、一歩も踏み出せません。違反の有無(指定薬物、麻薬等の含有の有無)を確認するための分析・鑑定機関を各地に整備するなど、解決の糸口はあると思います。機材や人員、データベース等の整備のために予算を計上しさえすればできることだと思います。

次に、導入の方法です。

現在、独自の買上げ調査を頻繁に行い、違反製品に対する監視・指導を積極的に行っている都道府県では、違反製品の発見に引き続き、販売店に立ち入り検査を行い、「指定薬物である疑いがある物品」に対して検査命令を発することも可能でしょう。まず、こうした重点地区で実施し、その経験値を集積したうえで実施マニュアルを作成し、全国で実施・・・といった手順を踏んでこそ、実行可能な体制といえるのではないでしょうか。

ところで、この報道に接して、私には多少の懸念もあります。

これまでこの規定が使われずにきたため、「指定薬物である疑いがある物品」とは何かが明らかにされないままになっているのです。

これを狭義に解釈すれば、
■指定薬物が検出された製品と同一品目と思われる製品(同じ品名、同じ規格)
ということになるでしょう。

しかし解釈の幅を広げるとすれば、あらゆる脱法ドラッグ製品にまで及ぶこともあり得ます。
実際に運用するのであれば「指定薬物である疑いがある物品」の範囲を明確に定義し、あらかじめ明示していくことが必要です。

何が「指定薬物である疑いがある物品」に当たるかは客観的に決められるべきですから、裁判官の事後的判断を基準にすることになるのでしょう。厚労大臣等(実際は、担当職員)が「指定薬物である疑いがある」と考えたときはそれにあたるというのは妥当でないことはもちろんです。

これまで実行されないままだった規定を、いざ実行するとなれば、かなりの準備が必要です。これをかけ声だけで終わらせず、標準的な対策として定着するよう、息の長い取り組みに期待しています。

*****
7月20日追記

厚労省が都道府県への通知文書の中で、検査命令の活用に触れたことがありますが、そこでは、
「『合法○○』等と称して販売されているものであって、当該製品の名称又は概観等が指定薬物を含有する製品に類似するものについては、指定薬物である疑いがあると考えられることから、薬事法第76条の第1項に規定する検査命令の活用や買上げ調査の対象にするなど、違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)の監視指導に努めていただくようお願いいたします。」
となっています。

【関連記事】
無承認医薬品の無許可販売|脱法ドラッグ対策への模索・1

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