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阿佐田哲也さんのようになりたかった 黒川博行さん 直木賞受賞会見全文

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7月17日、第151回直木賞に黒川博行さんの『破門』(KADOKAWA)が選ばれました。受賞決定直後に行なわれた記者会見の模様を、書き起こしでお伝えします。

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黒川博行さんは1949年愛媛県生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒業。

司会者 直木賞の黒川さんの記者会見を始めます。まず、ひとことご感想を。

黒川 ありがとうございました。まさか受賞できるとは思っていなかったし、今回また落ちたら、最後はカラオケでも行こうかと思って。今、雀荘で麻雀してました。ここであんまり勝ったらよくないとも思ったんですけど(笑)。……まあ、今日は12時とか1時から、また麻雀すると思います。ありがとうございました。

司会者 それでは質疑応答に入ります。そちらの方。

――おめでとうございます。選考委員の伊集院静さんが、「(黒川さんは)きちんとした作家だ」とおっしゃっていました。連絡をうけたとき、どんな状況でしたか。

黒川 (麻雀は)版元のKADOKAWAの編集者と、2卓でやってました。連絡は僕の携帯にくることになってて、僕、携帯持ってないから、嫁から借りて。7時半前くらいでしたかね。携帯が鳴って、「ああきたな」と思って。で、受賞しまして。みんながそこで乾杯してくれまして、ありがたいなと。「きちんとした作家」っていうのは、ちょっと、自分ではわからんです。でも、書いているときに、読者のことはつねに意識してます。面白く読んでもらえたらうれしいなと、いつも意識して書いてるつもりです。だから、そこが作家らしいといわれれば、作家らしいのかもしれません。

――なぜ雀荘で待とうと思われたのですか。

黒川 待つのが嫌やからです。何回も落ちて落ちて、トラウマになって。「待ち会」というのは嫌なんです。編集者がたくさん集まって、待ってるんですけれど、7時を過ぎると妙にシーンとなるし。(会場、笑) 電話をうけた自分が、落ちた瞬間、どんな顔をしたらええかな、というのも常に感じていました。でも、麻雀してるんやったら、暗い顔もしないで普通に待てるかな、と。

――デビュー30年、6回目にしての受賞ですが、感慨はいかがですか。

黒川 えっと……ありがたいです。デビュー30年で、32、3冊しか書いてない。自分でも、よくここまで生き残ってこられたなという感慨はあります。候補にも何度もあげていただいて、自分は運が強いなと思います。今回、その運が功を奏しまして、このような大きな賞をいただきまして、ありがたいと思います。

――直木賞に選ばれることの効用について、どう思われていますか。以前、インタビューで、「直木賞をとったら、ギャラ(原稿料)があがる」とおっしゃっていたようですが。

黒川 たぶん、原稿料はそんなに上がらないと思うんですけど、本が売れます。とりあえず。売れるのはありがたいんですけど、物書きとしては、たくさんの人に読まれるというのが一番嬉しいことで。僕の本は単行本の段階で、5万(部)以上売れたことはないんです。今回もし、10万単位で売れたら、すごいありがたいことです。税金(の支払い)がたくさんくるので、車でも買おうかなと思っています。(会場、笑)

――愛媛新聞です。作中で、生まれ故郷でもある今治のことに触れられていますが、取材されて、作品の中でふくらんだ部分というのはありますか。

黒川 僕、外を出歩くのはあんまり好きではないんです。今治ならば自分の生まれ故郷やし、土地勘もあるし、あちこち動かんでもええ、ラクやなあと。今回マカオに行ったのも、自分が博打したかったからという、ええかげんな理由で……。とりあえず、いつもそんな感じでやってます。

――今回の受賞をうけて、今治に報告に行きたいとか、戻りたいというお気持ちはありますか。

黒川 両親は伊予弁をしゃべってましたんで、何をしゃべってるかはわかるんですけど、自分は大阪来たんが幼稚園くらいで、もう今治人ではなく、大阪人になってますからね。本拠もありませんし、いまさら帰られない。今治に対して何かできることがあれば、したいと思いますけど……たぶんないと思います(笑)。

司会者 では、次の質問の方。

――黒川さんの小説には、大阪弁の語りの面白さがあります。語りをどのように作っていくかで、こだわりはありますか。

黒川 ぼくの小説は、よく「セリフ回しが漫才のようだ」と言われることがあるんですけど、わりに不本意です。上方落語は大好きで、よく聞きます。で、大阪人というのは、ことさら面白い会話をしようと思っているわけではなく、日ごろしゃべっている言葉があれなんです。作品の中で、「ここで笑わそう」とか、「洒落たこと言おう」とかは、意識したことないです。ただし、セリフを考えるのは、地の文よりも時間がかかる。ああでもない、こうでもないとパソコンの前で悩みながらやってます。で、僕はパソコン打つのも、「親指シフト」いう昔のを使ってて、ブラインドタッチも、もちろんできません。ティラノザウルス状態でやってますから(左右の人さし指を立てて見せる)、ミスタッチも多いし、書くのも遅い。1時間(原稿用紙)1枚くらいしか書けません。軽やかにリズミカルに書けてると思われるのはいいんですけど、ものすごい時間かけて、セリフを考えてます。

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