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国連人権規約委員会が秘密保護法についても議論 来週に報告書を公表予定

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第4 ヘイトスピーチ


1 審査でのやりとり

 ヘイトスピーチについて、イスラエルのシャニイ委員が取り上げた。このようなデモが350件も報告され、広範に起きていることが確認された。そ して名誉毀損の場合以外は取り締まれないのか、他の刑事的規制はないのか質問された。このように、ヘイトスピーチについて具体的な防止策がとられていないことが大きく取り上げられた。
これに対して、政府代表団は、極めて深刻なヘイトスピーチが起きているにもかかわらず、政府の答弁は名誉毀損や脅迫にあたる場合に民事責任と刑事責任を問いうる、啓発活動に取り組んでいるという答弁に終始した。
 このやりとりを通じて、日本に包括的な差別禁止法制がないことの問題点も明確になった。

2 求められる限定された刑事法的規制

 日本から出席していたNGOはJapan NGO Network 2014 ICCPRとして、ヘイトスピーチに関して、人種差別撤廃委員会の一般的見解35 para15,16にもとづいて、一定の行為の犯罪化を求める勧告を求めた。
 この点について、二日目のフォローアップ質問において、シャニイ委員は表現の自由の保障は重要であるとしつつ、規約20条がバイオレンスの防止のため、人種差別の煽動をするヘイトスピーチ抑制しなければならないことを定めていることを指摘し、民事法的な措置だけに委ねることは問題であり、民事提訴ができない場合もあり、国が抑制することが望ましいと述べた。
 人種差別撤廃委員会の前記の見解は、法律により処罰されうる流布や扇動の条件として、委員会は以下の文脈的要素が考慮されるべきであると考える。として、スピーチの内容と形態、経済的、社会的および政治的風潮(委員会は、ジェノサイドに関する指標において、人種主義的ヘイトスピーチの意味および潜在的効果を評価する際に地域性が関連することを強調した)、発言者の立場または地位、スピーチの範囲、スピーチの目的を考慮すべきだとしている。
 また、締約国は、扇動罪の重要な要素として上記の考慮事項に加えて、発言者の意図、そして発言者により望まれまたは意図された行為がそのスピーチにより生じる差し迫った危険または蓋然性を考慮に入れるべきであるとされている。
 日本の状況は、放置すれば、人種差別的暴力への歯止めが利かなくなる一歩手前まで来ている。委員会がどのような具体的な勧告を行うか、ここでも大いに注目される。

第5 慰安婦問題をめぐる委員会内外のできごと


1 異常な事態

 今回のセッションには、慰安婦は強制連行されておらず、売春婦だったと主張している日米の団体の人たち約10人が来て、NGOのブリーフィングに入れるかどうかでもめたり、セッションで慰安婦が性奴隷ではないとした政府代表発言に一斉に拍手したり、慰安婦問題について発言したマジョディナ委員をセッションの終了後に取り囲んでつるし上げたりという事件が起きた。

2 委員会でのやりとり

 委員会では、マジョディナ委員が慰安婦問題を取り上げた。河野談話の検証についても質問がなされた。
 これに対する政府の回答は、これまでの経緯をふまえ、日本政府としては強制連行の事実は確認できないが、当時植民地統治下にあり、「甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して」なされたと述べた。そして、今後も河野談話を継承すると述べたが、アジア女性基金を超える慰藉措置は示されず、慰安婦を「性奴隷」と呼ぶことは相応しくないとも述べた。
これに対して、マジョディナ委員は最後のフォローアップ発言の中で、性奴隷制という発言は1926年の奴隷廃止条約の定義に基づくと発言したのに対し、政府代表はさらに、「奴隷制度の定義について、条約上の検討をした上で、この制度は性奴隷制の問題ではない。その定義に当てはまるものとは理解していない。性奴隷制度は不適切な表現である」と強く反論した。
 この時に、慰安婦の存在を否定するグループの人たちが一斉に拍手をしたのである。 これに対して、ロドリー議長はこのような行為(慰安婦を性奴隷ではないとする発言に拍手する)ことは、許されない行為であると言明した。

3 まとめ

 今回のセッションでは、慰安婦とヘイトスピーチ、秘密保護法が大きく取り上げられたが、このような慰安婦否定派の人たちが審査に来たことにより、日本の民主主義と人権状況の悪化が委員の皆さんにも肌身で感じられたのではないかと思う。それが勧告にどのように反映されるかも興味深い注目点である。

第6 福島原発事故後の知る権利も議題に


1 委員の質問

スイスのケリン委員は、委員の一巡目の最後の質問で福島原発後の状況に懸念があるとし、特別報告者(アナンダ・グローバー氏)も提起しているとして、国際基準(年間1ミリシーベルト)の20倍の線量地域に帰還政策がとられていること、福島における災害関連死亡(1704人)の中に健康被害の者が含まれているのか、帰還した者に月次の補償がなされるのか、避難している人々にどの程度の情報が提供されているのか。情報へのアクセスに問題はないのかなどの質問がなされた。

2 政府の回答

これに対して、政府代表団は、福島の放射線影響については、わかりやすくリスクコミュニケーションをしている。科学的知見をまとめた基礎的な情報のパンフレットを作成し、 責任を持って長期的リスクについて、正しい情報を住民と労働者に提供していると説明した。

第7 審査を総括したロドリー議長総括発言


1 感動的だった総括発言

審査の最後にロドリー議長が次のように発言した。これは、委員会全体の偽りのない日本政府に対する気持ちを表していると考えられる。

(総括発言を述べたロドリー議長)

********************************
二つの問題が指摘された。
代表団が察知されているように、繰り返しのプロセスがあるということである。
政府り説明には、繰り返しが多い。このようなプロセスは資源の有効活用といえない。
人権の尊重がリソース次第という状況は日本のような先進国ではあってはならないことである。
代用監獄の制度を取り上げる。代用監獄は暫定的なものとして、1908年に当時「資源がない」という理由で、捜査の対象となる被疑者を警察に拘禁してきた。これに加えて、今回政府は「家族や弁護士に利便だ」という説明を付け加えられた。便宜だというが、全く反する意見を持っている団体もある。このような説明は無意味に聞こえる。こういう制度が維持されている理由は、起訴側が自白を求めたいと考えているためであるとしか考えられない。このような状況は明らかに規約に矛盾している。
可視化については、改善が進むでしょう。でも、もっと多くの人と金を投入するべきである。取調に弁護士の立会は認められていない。
日本政府は、委員会がこれまでよりも強い形で勧告を出しても驚かれることはないでしょう。日本政府は明らかに国際コミュニティに抵抗しているようにみえます。
もうひとつの繰り返しは慰安婦の問題です。意見の対立があるようである。私には理解ができない。頭が悪いのだろうか。「強制連行されたのではない。」といいつつ、「意図に反した」という認識が示されている。これは、理解しにくい。
性奴隷である疑念があるなら、意図に反して行われたのなら、河野談話でも謝罪がなされたとしても、日本政府はなぜこの問題を国際的な審査によって明確化しないのか。政府のこのような言葉を受け容れるしかないのか。
 政府には48時間以内に反論できる機会がある。
 このセッションでなされた拍手は適切なものではない。とりわけ人権侵害の被害者を辱めるような拍手は適切でない。
日本はこの委員会にとって重要な国である。自由を認めているである。この場に市民社会はたくさん参加している。でも、人権にマイナスな影響を与えるような深刻な問題がないわけではない。次のラウンドでは、こういうことが続かないようにしたい。
 ぜひ、日本政府から、追加情報を頂きたい。最終見解を出し、フォローアップをしていきたい。
   *********************************

2 総括所見の実現は私たちの責務

総括所見について、期待が持てる審査であった。
いろいろな事件があり、また、リストオブイシューになかった問題で取り上げられた問題があった一方で、日の丸君が代問題のように、リストオブイシューに入っていながら、誰も質問しないでイシューから落ちてしまった問題もある。このように、明暗はあったが、最後のナイジェル議長の発言を聞く限り、委員会はかなり踏み込んだ勧告をしてくるにちがいない。この勧告を受け止め、日本国内にひろげ、政府と真剣に対話し、日本を包む人権と民主主義の危機を克服したいと思う。

<ここまで転載>

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