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新聞奨学生 新聞が書かない新聞の闇

リンク先を見る パンフレットに書かれていたことと違う。奴隷と同じじゃないか。暴力を振るわれる… 新聞配達をする代わりに学費や住居が提供され給料も支払われるのが新聞奨学生だが、その実態には広く知られていないことが数多くあった。

 7月6日に都内でシンポジウム「負けるな! 新聞奨学生 -発行本社の責任逃れを許さない-」が開催され参加をしてきた。主催は、日本新聞労働組合連合(新聞労連)、東京地連、新聞通信合同ユニオン。労働相談を行っていたところ、新聞奨学生からの相談が多くあり、今回のシンポジウムを企画したという。

 シンポジウムは、労働相談で実際にあったことや新聞奨学生の現役、この3月に終わり就職している方がパネラーとなり現状についての報告があった。
 この話をまとめてみると、新聞奨学生を募集するさいのパンフレットと実際の仕事が違っていた。新聞配達や集金等と書かれており、「等」には販売促進のポスティングや販売店のキャンペーンをやらなければならない。その時間を負わせると一日5時間の配達時間の倍になることもある。新聞代金の集金ができない場合には、自腹を切らなくてはならない。次第にお金がなくなり学生ローンで返済しても足りなくなり、他のバイトをせざるをえず、学校に行けなくなり何のための奨学生か分からなくなった事例もあるのだという。
また、間違えて配達をするとペナルティとなり、給料が減らされ給料が半分しかもらえないこともあった。病気でも休めないこともあるという。
 このような事例について奨学金を出している新聞社の奨学会に相談すると販売店主に知らされイジメの対象になってしまった。事前の説明と違うので辞めたいと申し出ると、規約上、一括返済を求められる。学費がないから奨学生になったのだから返せる当てがなく泣く泣く続けていることも多い。今回明らかになっているのは氷山の一角ではないかとの主催者のコメントもあったほどだった。

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■問題点は、お金で縛られること


どのように対策をすればいいか。この日のパネルディスカッションでも指摘されていたが、学費を借り入れて、何かの問題から辞める合に全額を一度に返さなくてはならないことが問題の根底だろう。
労働基準法の第17条(前借金相殺の禁止)には、「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない」とあり、法律に抵触するとの指摘もある。このことについては国会で問題視されたことがあったが、その際の政府答弁では、法律は使用者が前貸金と賃金を相殺することを禁じているが、新聞奨学生の使用者である販売店の払う賃金と、使用者ではない新聞社等の貸し付ける奨学金は、相殺されないのだから違反ではない」とされているのだそうだ。

奨学金は、新聞奨学会から借りるのであって、販売店から借りているのではないので法律の対象にならないとの考え方だろう。言い訳としてはうまく考えられている。だが、事前の情報や提示された条件と違うのなら、辞める選択肢はあるべきだ。辞めたとしても借りた奨学金は分割で返せばいいのではないだろうか。

新聞社や販売店からすれば、配達員が足りないから考え出した制度であり、辞められたら意味がなくなると考えているのだろうか。目的は分かるが、労働者を守る観点がどこまであるのか、この日の話を聞いていると疑問に思えてきた。

これまでに、労働組合が間に入って話し合いをしても、奨学会からは応じられないとされ対応ができていない。販売店との話し合いになると、奨学会との話だとして逃げられてしまうのだそうだ。新聞社も同じような状況だという。制度を盾に逃げれば勝ちとなっているように思えてしまう。

■働いてみないと分からない実情


 シンポジウムでは現役の奨学生とこの春に卒業し就職したばかりという元奨学生が登壇し、実情について話をしていた。総じて言えるのは、先のような問題ばかりの販売店が多いのではないが、大なり小なり課題を抱えているということだ。販売店で働いてみないと分からない。当たり外れが大きすぎるとの発言が最も象徴している。

  私は、母子家庭であったことから高校生の時に朝刊のみで新聞配達、高校を卒業してからは浪人、専門学校とこの新聞奨学生で学費を得ていたことがある。30年以上も前のことだが、当時から、いい人もいれば怪しい人もいるのが新聞販売店であり、配達しながらの学業はかなり大変だと実感していた。それが現在はどうなっているのかが気になっての参加だったが、実情は変わっていないようだ。

 給与明細を出さなかったたり、販売店内で暴力を振るわれた事例を聞くと販売店の経営者の資質がそもそもの問題につながる例が多いのではないだろうか。私が働いていた販売店の店主は気のいい人で販売員に無理をさせることはなかったが、そのためか、新聞社から実際の販売数よりも多い部数を押し付けられ代金を取られてしまう「押し紙」に悩まされ、最後は経営を辞めてしまっていた。

■解決策は


 シンポジウムではいろいろな解決策が提案されていたが、その中に新聞社が責任を持つべきだ。販売員の起こす事件が多く新聞社の直営にしたほうがいいなどの意見があった。不正を正すのが新聞社のミッションのひとつであるのなら、自らの新聞の配達で不正が行われているのなら、自ら解決すべきだろう。

 シンポジウムが終わって主催者の組合の人たちと話す機会があった。新聞の闇の部分を公にするようなことをすることは、新聞社の社員だとしても総務や労務畑の仕事をしているのか思い普段の仕事を聞くと、記者がほとんどという返答だった。
 このような問題があり分かっているのになぜ記事にしないのかとさらに聞くと、書いても新聞に掲載されないのだという。いったい、新聞はどうなっているのだ。

 話をした記者たちは、今回のシンポジウムを契機に情報を出していくことをやっていきたいと話していた。このことには期待をしたい。
 また、問題を抱えているのは多くの新聞社で同様としていたが、河北新報の配達をしている河北仙販だけは違うとの話も伺った。シンポジウムに参加されていた人の話だが、昔はひどい人が多かったが、販売店主の資質の問題が大きいと考え、販売員の組合を作り奨学生だけではなく労働者としての底上げを行い、今では学業のために奨学生には集金をさせないようにしているのだそうだ。組合の重要性をあらためて思った。

シンポジウムの主催者は、問題を抱えているのは事実だが、新聞奨学生をなくせとは思わない。自己資金なしで就学ができ、上京して部屋も食事も得られる制度は他にないからだという。確かにそのとおりだろう。時間的制約は多いとしても、学業は十分可能だ。これは経験者としていえることでもある。
ただし、一歩違うとどうなるかは分からない。奨学生を救う制度がないのが問題の根底にあるのだ。新聞社が販売の問題をタブー視していること。新聞社の労働組合も十分対応できていなかったことも問題を解決できていない原因でもある。
 この日を機会に改善しなくてはならない。

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