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生きることを通じてしかできない発見 ―― 「困ってるひと」のタンスの引き出し ‐ 『シャバはつらいよ』著者・大野更紗氏インタビュー

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突然、原因不明の難病を発病し日本社会をサバイブするはめになった体験を綴り、単行本・文庫あわせて20万部のベストセラーとなった『困ってるひと』(ポプラ社)。あれから3年。絶賛生存中の作家・大野更紗さんが、再び、語り始めた。7月15日に刊行された『シャバはつらいよ』(ポプラ社)。シャバにでた大野さんはいま、なにを思うのか。お話を伺った。(聞き手・構成/金子昂)

ひとりぼっちで生きること

―― 『困ってるひと』の出版から3年、今回、その続きとなる『シャバはつらいよ』を出版された大野さんですが、この間どのように生活は変わっていきましたか?

いま3年って聞いて、「ああ、もう3年も経ったのか」というのが正直なところですね。

一番大きい変化は生活の場が変わったことです。『困ってるひと』の最後の場面で退院をして、外来管理に切り替わってすぐは、物理的に外に出られずにずっと家の中だけで生活している時期も長くありました。そこからだんだん、少しずつ少しずつ、いろいろなプロセスを経て、外に出られるようになったり、いろいろな活動をしたり、大学院に戻ったりして。

この3年間で本当に多くのことが変わりましたが、やっぱり震災が一番大きかったです。震災がいろいろなことをドラスティックに変えたように思います。

―― どんな風に変化したのでしょうか? やはり困難な方向にですか?

そういう面もあります。たとえば家族の面で行ったら、困難な方向に変わるわけですよね。「みんながたいへんだ」という状況の中で、ひとり東京にいる。震災までは、なんだかんだと社会経済的に頼っていた福島の父母や親戚に、どうやっても頼れなくなってしまったわけですから。

治らない病気を、難病を抱えながら、東京で、この社会でひとりぼっちで生きるというのはどういうことなのか、震災をきっかけに迫りくる現実として考えなくちゃいけなくなったという変化はありました。

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先生と私の物語

―― 『困ってるひと』でお書きになられている困ってることと、『シャバはつらいよ』でお書きになっている困ってることに、違いはありましたか?

うーん、本質的には変わらないと思うんですよね。

退院したばかりのときは医療依存度が高い状態なので、週に何度も病院にいくようなときもあったんですけども、それもだんだん頻度は低くなっていきます。入院しているときは、医師と患者としての先生と自分の関係が、絶対的な中心にあるわけですよね。先生は私のことを何もかも知っている。それがシャバに出たら、先生と自分との間に、距離も出てくるし、いろいろな要素がたくさん挟まっていくわけです。私についての情報で、先生が知らないことがどんどん増えていくんです。

ただ、病院にいても、シャバにいても、社会にある社会資源ってあんまり変わらないですよね。制度そのものは変わっていない。それでも、先生と私の関係性が変わることで、私の困ることや、私と社会制度との付き合い方はものすごく変わっていく。『困ってるひと』も『シャバはつらいよ』も、関係性も距離感も中心的な課題も変わってきているけれど、先生と私の物語という意味では、共通している話なのかもしれません。

―― 先生と患者さんの関係って具体的にどういうものなんでしょうか?

医師と患者の関係って、すごーく古めかしいテーマですよね。医師がどうしても権威的な立場になってしまう、とか。こういう話は、過ぎ去った過去の古臭い遺物だと、普段恒常的に医療に関わらない人は思うのではないでしょうか。でも、実は『困ってるひと』を書いていたときも、そして2014年の現在においても、当事者の患者さんたちにとっては非常に緊張感のあるテーマでもあります。

難治性疾患の人が関与するのは、主には高度で専門的な医療です。特殊な医療機関で、ユニークで専門性の高いドクターたちと関わらなくちゃいけません。これまで患者さんたちはそうした医療とどうやって付き合ってきたのか、患者さんのQOLのために医学以外のことはなにができるのか。こうした話題が正面切って議論されるようになったのは、案外とここ最近の話なんです。それこそ患者会などの場で、障害者手帳の話や福祉制度の話を気軽にできるようになったのは、この数年くらいの変化なのではないでしょうか。

『困ってるひと』も『シャバはつらいよ』も、あくまで個人的な経験を綴ったものです。その中には、患者さんたちがいままで言えなかったことについて、たまたまかすっている話もあるかもしれないです。

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