記事

「日中関係史1972−2012」出版 その2―日中関係 笹川良一からの系譜―

3/3

それでも交流は続けるべきだ


 中国がこうした状況に置かれていても、交流は続けなければいけません。良くても悪くても続けていくしかないのです。
 今まで私たちは2300名の中国人医師を受け入れてきましたが、天安門事件の時、3名ほど逃げたものの、それ以外はみな中国に戻っており、「プログラムが終わって中国に戻ってくるのは、笹川のプログラムだけです」と高い評価を当時、中国政府よりもらったものです。
 天安門事件の時、「どうぞ、逃げたい人は僕に相談してください」と言ったのですが、2人がカナダ、1人がアメリカに、相談なしに逃げて行った。しかし、それ以外は皆、帰国して中国の医学界で活躍し、人民に奉仕され、尊敬を受けておられます。
 当時欧米に行った人たちはまったく帰ってこないと、中国側から不満があったのですが、この高度経済成長が続く中にあって、中国人留学生のほとんどが中国に帰るようになりました。時代は変わりました。
 彼らは西洋の先進的な政治制度、経済の仕組み、社会のあり方、すべてを学んできて、みんな知っています。私たち以上に、よく勉強されています。その気持ちを率直に表現できないもどかしさがあるだけで、自分たちの国が世界の中でどのような位置にあるのか、彼らは身に染みて理解しています。口に出さないだけで、中国がどちらの方向に進むべきかについて、よくわかっていると思います。私たちは中国の日本語教育で使われる教科書を作っていますが、日中関係が厳しい状況に置かれた2012年においても、日本語を学ぶ人の数は100万人を超えるまでになりました。こうした政治を超えた人々の地道な努力が大切なのです。
 先般も、内陸部で日本に関する論文で優秀賞を獲得した人を日本に招待する作業を進めていました。受賞した人たちは「夢みたいな話だ」と大喜びしてくれたのですが、ご両親は「日本は危険な国だから日本には行ってはいけない」と、彼らの来日を許してくれない。そこで私はご両親に手紙を書き、「日本は安全ですから、是非ともお子さんを日本によこしてください」とお願いしました。
 このように、多くの中国人は日本のことを知らないし、60年間、毎日毎日、反日教育を受けてきましたから、彼らの考えを変えることは並大抵のことではありません。(遼寧省の)瀋陽あたりの、知日派の多いところでも、「周囲から日本に行ったら危ないと言われてきたけど、来てみたら大丈夫だった」といったケースが多くあります。

原点は国民レベルでの交流


 先日、富士山が世界遺産登録されることになりました。そのニュースが流れた時、私は富士山にいたのですが、そこには多くの中国人観光客がいました。大いに結構なことです。政治体制など関係なく、最後は民と民の関係なのですから、観光をもっと自由化してもらい、1人でも多くの中国人に本当の日本の姿をもっと見てもらうことが必要だと思います。
 交流の裾野は、目に見えないところで拡がっています。日中関係を政治や安全保障の視点ばかりから見るから問題なので、私は、国民レベルでの交流が原点だと思います。日中は、今まで先人がいろいろな知恵を出して、交流を続けてきました。トラブルは常にあります。これをいかに乗り越えるかが、知恵の出しどころです。トラブルのない隣国関係なんてないのですから。
 政治家や指導者の皆さんには、自分の政治的立場からの主張だけでなく両国の人々が相互理解を進展させ、大局的見地からの平和的な二国間関係を構築してもらいたいものです。

あわせて読みたい

「日中関係」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。