- 2014年07月15日 07:00
カレー、チンして食べたら治りました――スプリング・躁鬱・スーサイド! / 坂口恭平×末井昭×向谷地宣明
6/7末井 同じこと繰り返してますよね。
坂口 鬱の時に、緑をみても、グレーに見えるんです。躁になると全然鮮やかに変わってしまいます。緑の絶妙なグラデーションまでもが一気にわかるようになります。妻についつい説明したくなっちゃって。「緑のこれ、ブルー入ってるよね?」とか。
そんなことを繰り返していくうちに、坂口家の家訓がだんだん作り上げられてきました。「鬱状態の時は、脳の誤作動が起きるので、そこで言ってることは、嘘である。躁もまた同じ」と。
向谷地 素晴らしい家訓ですね。
坂口 鬱だけではなく、躁状態も誤作動なんです。躁状態の時に奇跡が起きて、素晴らしい作品が生まれて何万部と本が生まれてしまうと、坂口家はうるおいますよね。「鬱との違いはどう説明つけるんですか? お父さん?」と聞かれてしまったら、そこはまた言語化しなければいけませんが、土台にあるのは鬱も躁も誤作動だということです。
YouTubeで、「鬱病治療の今」といった映像をみまして、アメリカの最先端の医療では患者の頭蓋骨に穴をあけて、ストローみたいなものを刺されるんですね。「はい、電力通しますよ」と言った瞬間に、普段はモノクロの世界だと言っている患者が「緑がっ」て急に鮮やかに世界が見え出すようなんです。だから、躁も鬱も脳の誤作動で脳みその動きなんです。
向谷地 アメリカの鬱治療はすごいんですよ。電極を脳に刺して、手術してバッテリーを埋め込むんですよ。扁桃体に電気を流し続けて、鬱を治す方法がある。
潜水服
坂口 僕は、鬱状態の時にもすごく意味があると思うんです。躁状態の時に鬱状態の時のことを書くと、全部海の中の話なんですよ。日常のこと書いてるんですけど、嫁とか子ども、全員潜水服着てるんです。
向谷地 海中のイメージがあるんですね。
坂口 鬱状態の時は全部、水の中の話なんです。それで、鬱がよくなった時を書き出したら、いきなり、排水ボタンを押したように水が部屋の中からなくなって、嫁も子供も潜水服をとって、「じゃ、散歩行こうか」ってなる。
向谷地 誤作動だと自覚しているんですか。
坂口 できないですよ、そのときは。
向谷地 そのときはできないんですね。「誤作動起きてるね」って周りが言ってくれたらどうなんですか。
坂口 僕の中の支配人みたいなのがいるんですが、そいつがすごい堅物なんです。「都合のいい考え方をするな」と言ってきます。「こっちのほうが生きやすいと思ったら、都合のいい考え方をしても良いのではないですか」と、一応脳内の会議では言うんだけど。
そうすると、その場にいるみんながヒソヒソ悪口を言っている。「君は躁状態の時、こんな文章を書いてますよ~」とか言って、見せられたりして。「今、読めます? これ、どう、読めます?」って言われたりもして。
「いや、これは恥ずかしくて読めません」って断るんですが、「音読しなさい」「この本、六刷だって。売れとるらしいねぇ。み~んな読んでるらしいよ~」って言ってくるんです。そうなると「死にたい、死にたい」ってなってしまうんですよね。だから僕、『躁鬱日記』で、鬱状態の自分に向けて手紙を書いたんですよ。
向谷地 躁の状態の坂口さんが、鬱の状態の坂口さんに向けて書いたんですね。
坂口 そうです。最近は、手紙だけではなくビデオ撮影までしています。鬱の僕を多角的に救っていくしかないんですよ。記憶が10分ずつ失われていく人が描かれている『メメント』っていう映画があるんですが、それと一緒です。



