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カレー、チンして食べたら治りました――スプリング・躁鬱・スーサイド! / 坂口恭平×末井昭×向谷地宣明

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死にたい人間に「死ぬな」とは言わないんです。

そのスタンスが、妻のフーちゃんと似ているように思いました。妻は僕にメッセージを放ちません。つまり、死にたいという人間に対して、死ぬなと言わない。死ぬなと言わないけれど、不思議なことに、あなたが死んだら悲しいような気がする、と言う。死ぬことを禁止してないにもかかわらず、あなたが死んだら悲しく思うというのは、僕にとっては不思議なんですけどね。

鬱の僕は、必死に死のうとして、躁の僕は必死に生きようとしています。狡猾なネズミみたいなんですよ。ちょっとだけ動物っぽいんです。そういう時に、「死ぬな」ってメッセージはなんにも効きません。

僕が鬱の時、彼女がベビーカーを押して家に帰ると、玄関の入口のところに、僕のグジャグジャになった内臓があるんじゃないのかという映像が出てくるらしいんです。いつか飛び降りるんじゃないかと思って。でも、僕のほうは、「それで楽になるというのであれば死んだほうがいいんじゃないか」って囁く悪魔に騙されそうになる。

向谷地 「死ぬな」というメッセージでは、自殺は止まらないと感じているんですね。

坂口 「死ぬな」と言われるよりも、話を聞いてもらったほうがよかったりします。

フーちゃんは「ほうじ茶タイム」というのを設けてくれるんです。僕の家の壁には穴がいっぱい開いています。石膏ボードで囲まれてる世界じゃ、躁状態、鬱状態の俺は、止められないわけですよ。「うわぁ~」って悪魔を押し出さなきゃいけないんです。「悪霊だぁ」って言うんですよ。

その、もうドストエフスキーみたいになってますから、「悪霊ども、退散せよ」て言って。アオは「えっ!? 悪魔くん来た!」みたいなことで、盛り上がってしまって。「エロイム エッサイム、うぉ~っ」てやって、壁を蹴る(笑)。

そうすると、一回霊気が抜けて、ちょっと落ち着くと。そしたらフーちゃんが手彫りの木のお盆を持ってですね、「はい、ほうじ茶タイム始まります」っていうんです。その時は2人で少しだけ落ち着いて会話ができる。

『自殺』はほうじ茶タイムに似ていました。書物というよりも、場というか。末井さんと対話しているような気持ちになる。対話はメッセージではないですから。雑談をすることで落ち着く感じがこの本にはありますね。

末井 自殺はいけないとか、命を大切にしようとか、言えないんですね。そういうことを言う気もないし、言っても絶対届かないと思いますから。

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「自殺」を笑って欲しい

向谷地 僕はこれを、精神科クリニックとかで読んでたんですよ。そうすると、タイトルと、この装丁からして、注目をひくというか。「向谷地さん、すごい本を読んでいますね」と言われました。

末井 病院のなかで読むとまずいらしいですよ。僕の奥さんのお兄さんの奥さんが、ガンのうたがいがあって検査入院してたんですけど、『自殺』をベッドの上に置いていたら、看護婦さんがそれを見つけて、それまで病院の外にも自由に行っていいですよって言ってたのに、出るときは声をかけてくださいねって言うようになったと。

向谷地 そうでしょうね(笑)。

末井 カバーして読まないとね。

向谷地 僕は、そのまま読んでいたし、読みながらゲラゲラ笑っていたので注目されてしまいました。内容は深刻なんですが、読んでいて笑ってしまうポイントがけっこうあったりします。しかも、僕にとって知り合いが結構出てくるんで、よけい面白くて。なんで、『自殺』ってタイトルなのに笑っているんだと、周りからしたらすごく奇妙に見えたらしいんですけど。

末井 笑って欲しいというのは、希望としてあったんですよね。それと、坂口さんがさっきおっしゃった、なんかこう、奥さんとお茶飲みながら会話してるようなって。

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